メカニズム解明法で「売れる仕組み」を考えたい


この記事の所要時間: 320秒 〜 420秒程度(1953文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
一橋大学大学院商学研究科教授 沼上幹さんの『経営戦略の思考法』(日本経済新聞出版社)は、ビジネスを楽しみたい人に必読の一冊です。よく聞く言葉でありながら中々その本質が捉え難い経営戦略について、学問的な背景を押さえつつ実務家向けに書かれた本なので、これを読むといろいろな会社の戦略への理解が深まるからです。
 
この本では、学説史の整理による各種戦略論の相対化、経営戦略を考えるために必要な思考法の考察、戦略論を実際の経営に役立てるための方法論等が展開されます。どこも充分読み応えがあるのですが、佐々木が一番興味を持ったのは思考法の部分です。
 


3つの思考法


同書で紹介される思考法は3つです。

 ●カテゴリー適用法
   ある現象をより大きなカテゴリーの一員に位置づけることで説明できる
   と考える思考法

 ●要因列挙法
   ある現象の原因となる要因を多数列挙して網羅的に検討する思考法

 ●メカニズム解明法
   様々な要因や人の行為と相互作用に注目し、時間展開の中でこれらが
   複雑に絡み合う様子を解明する思考法

 
「インテル社が儲かる理由」の例があり、各思考法によるアウトプットは以下のように例示されています。

 ●カテゴリー適用法
   「デバイス事業だから」

 ●要因列挙法
   「メモリーでなくプロセッサーだから」+「デファクト・スタンダード
    だから」+「ブランドイメージが浸透しているから」

 ●メカニズム解明法
   「高いシェア」→「ソフトなど補完財の充実」→「高いシェア」、
   「ブランドイメージアップ」→「高いメーカー交渉力」→「intel inside
    キャンペンの成功」→「ブランドイメージアップ」など

 
沼上先生はそれぞれの思考法に長所短所があるとしつつも、メカニズム解明法を「最も妥当な思考法」とします。
 

 


カテゴリー適用法は罪深い


さて、カテゴリー適用法は実はまったく「理屈になってない」のですが、ビジネスの場でもよく聞く論法です。
 
はやりの言葉を使って「◯◯だから成功する」「◯◯だから失敗する」という類です。今ならば「SNS関連だから成功する」「中国市場を狙っているので成功間違いなし」「地球にやさしくない商品なので苦戦必死」などでしょうか。カテゴリーに当てはめることで、よく考えず短絡的に結論を導いてしまうパターンです。「で、何で成功するの?」が欠落しています。
 
この思考法を避けようとしていても、楽なのでついつい使ってしまうことがあります。話している相手も早合点で納得してしまったりすると、根拠に乏しい主張が通ってしまう危険が生じます。これは極めて罪深い思考法だと言えるでしょう。
 


要因列挙法では考えが足りない


要因列挙法は、とにかくよく使います。
 
以前、『理由は3つに限る』という記事も書きましたが、それなりにもっともらしい理由を3つ並べれば説得力が生まれるからです。ただ、他人を口説き落とすにはいいですが(?)、自分のビジネスを考える場合にはこの思考法では考えが足りないでしょう。要因間の関係についての考察が少ないからです。ビジネスで成功したいのなら要因列挙法で満足していてはイケない、そう思います。
 


メカニズム解明法で「売れる仕組み」を考えたい


沼上先生オススメのメカニズム解明法は、上の2つの思考法の欠点を補う素晴らしい思考法です。確かに、時間的な順序関係や要因間の因果関係を考えなくては、成功のメカニズムがわかりません。我が愛しのマーケティングは、「売れる仕組み」を考えるわけですからこの思考法が最適です。
 
マニュアル本でも読んでメカニズム解明法ができるのなら苦労はないのですが、そんな訳はありません。これら3つの思考法を意識して使いわけるようにすることが第一歩だと考えています。その上で、少しでも多くの事柄をメカニズム解明法で考えられるようになれればと思っています。
 
自分が習得できるかどうかは別にして、こういう思考のセンスを身につけることがビジネスの場でもっとも役立つのは間違いないでしょう。これをお読みのみなさんも、一度試してみたらいかがでしょうか。

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