期待値重視は状況次第


この記事の所要時間: 230秒 〜 330秒程度(1535文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 


投資先の選択は期待値で?


突然ですが、皆さんだったら次のどちらに投資しますか。
投資額は同じで、「両方に投資」はできません。
 

 A.70%の確率で1億円儲かる事業

 B.30%の確率で10億円儲かる事業

 

photo credit : Julia Manzerova via photo pin cc

 
教科書的に考えるなら、確率と儲かる金額を掛け合わせて算出できる期待値を比較します。結果はAが70%×1億円=0.7億円、Bが30%×10億円=3.0億円なので、期待値の高いBに投資するのが正解です。先日来取り上げている『まぐれ』(ナシーム・ニコラス・タレブ/ダイヤモンド社)も、確率より期待値を重視するよう勧めます。人は成功することを求めるがあまり確率優先で考えてAを選んでしまい、「正しい判断ができていない」という指摘です。これを正せばもっと儲かるし、ライバルのこの歪みを突けば相手を出し抜けることになります。
 


繰り返しがない場合は・・・


さて、『まぐれ』の著者であるナシーム・ニコラス・タレブは数理系トレーダーです。上記のような判断を短期間に何回も何回も行ないます。この場合、期待値が高いものを優先したことが結果としてあらわれるでしょう。実際のビジネスにおいても、繰り返し判断を行なうような事柄については期待値で考えることが生きてきます。
 
しかし、多くの経営の現場では話が違います。大型の投資案件など、年に数回、数年に1回などという企業がほとんどです。この場合、AとBのどちらを取るかといえば、金額は少なくても利益が出る可能性が高い案件を選ぶという現実論が出てきます。何回も繰り返さないと結果が複数回の積算値にならないので、確率の影響があまりわからないのです。教科書通りにはいきません。
 
そのときの企業が置かれている状態によっても判断は違ってきます。本業で毎年毎年確実に大きな利益が上がっているのなら、Bを選ぶ余裕もあるでしょう。一方、1億円の儲けが出ないと会社が潰れてしまうような状態なら、迷わずAを選ぶことになります。
 
期待値で考えることは大切ですが、いつ何時もこれを当てはめればいいというものではないのです。
 


稀な現象に要注意!


極めて低い確率で大きな損失を出す事業はどうでしょうか。今度はどちらを選ぶかではありません。こういう事業に投資するかどうかです。
 

 ●99.9%の確率で1億円儲かる

 ●0.01%の確率で1000億円失う

 
この事業の期待値は、99.9%×1億円=0.999億円、0.01%×1000億円=10億円ですから、マイナス9.001億円です。期待値から考えて投資するべきではありません。
 
損失の確率が更に低い場合、期待値がプラスになることがあります。しかし万が一にでも1000億円の損失がある事業に投資することはあまり正しいとは言えないでしょう。一つ間違えれば会社が潰れてしまいます。期待値がプラスでも、投資しないほうがいい案件もあるのです。
 
ポイントは、極めて低い確率で起きる現象を「見ないフリ」しないことです。極めて低い=ゼロという省略をしてはいけません。いくら低い確率でも、その現象が起きることがわかっているなら、考慮には入れる必要があるのです。
 
ほとんど起こらない現象まで考えていては身動きが取れなくなってしまいます。時には無視をするという判断もあるでしょう。それでも、「見ないフリ」をするのではなく、あくまで「考慮した上で無視」することが大切です。

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