「コメ、主食の座危うし」はホント?


この記事の所要時間: 310秒 〜 410秒程度(1818文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
オンライン版の読売新聞に「コメ、主食の座危うし…購入額でパンに抜かれる」という、不可解な記事がありました。パンの購入額がコメの購入額を上回ったことを根拠に、まるで主食が入れ替わったような書きようです。「危うし」とか「揺らいでいる」とか曖昧な表現を使ってはいますが、記事はパンとコメの地位逆転を煽っていると言えるでしょう。
 
「主食」の定義ははっきりしませんが、購入額で比較するのは間違いです。購入額を基準にするなら、コメとパンの摂取量に変化がなくても、小麦相場が上がり米相場が下がっただけで主食が入れ替わってしまいます。そんなバカな話はありません。つまり、購入額の逆転は主食の変化をあらわさないのです。
 
ある現象を説明するためにデータを使うのは良いことですが、そのデータが説明したい現象と噛み合っていなければ何にもならないのです。
 

 


購入数量から食事回数に変換可能


購入額の逆転は総務省の家計調査を元データとしています。確認してみると、記事にある2011年度だけでなく、最新の2012年4月〜6月(二人以上世帯)のデータでもパンの購入額(7,319円)はコメの購入額(6,582円)を上回っています。
 
さて、このデータを元に本当に主食が入れ替わっているか考えてみましょう。
どうしてそんなことができるかと言えば、元のデータには購入数量もあるからです。購入数量さえわかれば、それぞれが「何回分の食事に相当するか」を仮算出することができます。購入金額より食事回数の方が「主食」の判定基準としては適しているでしょう。
 


コメは192食分、パンは79食分


コメの購入数量は17.77kgです。生のコメ1合は約150g、炊き上がったコメ1合は約340gなので(参考:ヤハタこめ屋ホームページ)、17.77kgのコメは118合、炊き上がりにして40,280gのご飯となります。茶碗1杯分のご飯の量は各種ホームページによると130g〜150g程度なので140gで計算してみると、これは茶碗288杯分のご飯となります。一食1.5杯として(この基準は佐々木の独断)192食相当です。
 
パンの購入金額、購入数量には内訳があり、食パン2,221円(5,104g)、他のパン5,098円(5,494g)です。各種ページを参考に換算レートを、食パン一斤400g、1食あたり1/4枚、他のパン(菓子パンを想定)1個100g、1食あたり2個とすると、食パン51食分、他のパン28食分となり、併せて79食分に相当します。
 

 ●コメ6,582円 : 192食分
 ●パン7,319円 : 79食分

このように食事回数で考えると、コメはパンの2倍以上になります。パン(特に菓子パン)の方がコメより1食あたりの価格が高いので、こういう結果になるのです。
 


データの意味をとことん考える


ここまでの計算はあくまで参考値です。換算レートの根拠は薄弱ですし、他のパンをすべて菓子パンと想定したところにも無理があります(たとえばフランスパンならもっと安価で食事向き)。ただそれでも、こうやって計算をすると、購入金額を元に比較したのとはまったく違った印象の結果にたどり着きます。佐々木としては、こちらの方がまだ主食の比較に適しているという解釈です。
 
目の前にデータがあると、その意味を深く考えずに比較してしまうことがあります。その比較にどんな意味があるかを考えることは、比較することよりも面倒なので、後回しになってしまうこともしばしばです。比較から得られた結論は、その意味付け抜きに流通します。
 
データを活用するときには、データの表面的な数値ばかりに気を取られることなく、そのデータが意味するところをとことん考えることが求められます。「言うは易く行なうは難し」の作業ですが、ここを怠ると間違った方向に進むことになるのです。
 
雑な例ですが、上記の換算を見てデータの意味の解釈が重要なことをわかっていただければと考えます。

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