「1日10時間以上スマートフォン利用」ってどういうこと?


この記事の所要時間: 450秒 〜 550秒程度(2664文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
「女子中高生の5人に1人が1日10時間以上スマートフォンを利用する」というアンケート結果が発表されました。株式会社サイバーエージェントによるプレスリリースです。
 
女子中高生一般ではなく、Candyという特定のスマホアプリ利用者の傾向とはいえ、この結果はにわかには信じられません。「いくら女子中高生に時間の余裕があるとはいえ、1日10時間以上は割けないだろう!」と思うのです。女子中高生も普通に生活しているのですから、食事や睡眠などの日常生活に一定の時間が掛かります。勉強もするでしょうし、友だちと会ったり、テレビを見たりといったいろいろな遊びもするでしょう。本当に10時間以上もスマートフォンを利用する時間があるのでしょうか。 
 
この感覚は、「データを疑う」技術を身に付けよう!で指摘した「直感に反する」に通じます。一見正しそうに見えるデータでも、「何となくおかしい」と感じたら受け入れる前に疑ってみる必要があるのです。データを疑わずに「スマホを10時間以上利用する女子中高生がいる」と信じて、新しい商売を考えたら大やけどをし兼ねません。
 
どうしてこんな不思議なデータが出てくるのか。
実は経験から大体想像がついています。ポイントは、利用時間を質問することの難しさにあります。
 

photo credit : iPhone vs Android / nrkbeta photo credit : iPhone vs Android / nrkbeta

 


質問する側も「よくわかっていない」!?


何かを利用している時間の質問は単純なようでとても難しいものです。「ある1日の利用時間」なら質問する側も回答する側も簡単なのですが、「最近の平均利用時間」となると一気によくわからなくなります。
 
仮に「最近の平均利用時間」がそのまま質問された場合、回答者はどういう状態に陥るでしょう。

 ①最近は「1か月」なのか、「3か月」なのか、「1年」なのか?
 ②平日と土日の差をどうするのか?
 ③日毎に違いすぎて平均が出せない
 ④そもそもどのくらいの時間利用しているか覚えていない

などの、疑問や困惑が出て当然です。
 
これがわかっている質問者は、質問文の中で①や②の条件付けを行ないますが、③と④はどうにもなりません。利用時間を詳しく正しく知りたいなら、日記式調査をして「ある1日の利用時間」を複数日分収集するしかないのです。しかし、これは費用も回答者負担も大きいため実現はなかなか困難です。
 
そこでどうするかというと、「最近の平均利用時間」をそのまま質問してしまいます(①と②を具体化するかは調査目的次第)。無責任と思われるかも知れませんが、それしか方法がないのです。回答者によって何を答えるのかが違っても、同じ質問を多くの人にすれば、それなりにもっともらしい数値が出てきて、「属性間の違いはわかる」、「時系列の比較は可能」と開き直るのです。
 
このように考えていくと、利用時間の大小関係に意味はあっても、結果として示される時間の長さ自体は極めていい加減な数値であることがわかります。あくまで、自己申告の感覚的な時間の長さなので、その時間自体をどうこう言っても仕方ありません。
 


スマートフォンの利用時間て何だろう?


また、時間には、回答者自体が把握しやすいものと把握しにくいものがあります。勉強時間や新聞を読む時間なら作業にある程度集中してるので、それなりに正確に把握できます。しかし、テレビの視聴時間となると急に曖昧になります。「見ているような見ていないような」時間があるからです。一般に、「ながら作業」をするときの副作業になりやすい行動の時間把握は容易ではありません。
 
例えば、以前インターネットの利用時間を調査したことがありますが、これは「何をもって利用とするか」がはっきりしません。
 
仕事で調べものをしながら文書をつくっている人がいたとしましょう。1時間に数回、インターネットで検索をします。賞味時間は10分程度です。この作業を8時間行なったとして、この人のインターネット利用時間は8時間でしょうか?80分でしょうか?実際にインターネットを使っているのは80分ですが、インターネットを利用しながら文書をつくっていると考えれば8時間とも言えます。実行動として文書作成ソフトで文章をタイプしている時間でさえ、その作業がインターネット利用に支えられているのならインターネット利用時間とも捉えられるのです。
 
ブログ原稿を作成するとしましょう。ブログサイトの入力画面に直接文書を打ち込んでいる場合、インターネットを利用しているという感覚が強いと思われます。入力画面は使い勝手が悪いので、ローカルのテキストエディタやEvernoteで文書入力をしている場合、インターネットを利用しているという感覚は弱いはずです。しかし、Evernoteは一定間隔でインターネット上と同期してますから、ある意味インターネットを使っているとも言えます。インターネットの利用時間は定義が曖昧なため、回答者の感覚にゆだねて質問する部分が更に大きくなるのです。
 
スマートフォンの利用についても似たようなことが考えられます。インターネットと違って具体的な機械ですから、スマートフォン自体に実際に触れている時間という厳密な定義もできますが、そうすると上記の「③日毎のブレ」と「④覚えていない」の問題が出てくるのでそういう質問はしないでしょう。何となく利用時間を質問した場合、友だちと話をしながら時折ウェブページを見せ合うとか、相手の反応を考えながらメールの文面をつくっている時間などがをすべてスマートフォン利用時間となってしまう可能性があります。極めて広義の「スマートフォン利用時間」を考えていると思った方が正しいでしょう。これが「10時間以上」という信じ難い長さを生じさせる原因です。
 


データの意味を考えよう


さて、相変わらずの結論で恐縮ですが、「データはそれが何を意味しているのかとことん考えることが重要」となります。データはラベルで判断するのではなく、それをどのように求めたかを考え、どの程度信頼できる数値かを見極めた上で利用するべきです。
 
一朝一夕には行きませんが、疑問を持ったらとにかく具体的に考える癖をつけることで、少しずつ成果が出てくると考えています。

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