「二つの販売世界一」で考えるもう一つのデータ活用


この記事の所要時間: 250秒 〜 350秒程度(1656文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
何日か前のブルームバーグに米フォードとトヨタ、互いに自社製品が販売世界一と主張というニュースがありました。
 
一見おかしな話のようですが、何ということはありません。フォード・モーターは「フォーカス」が派生車種を含まない単独車種で世界一だと、トヨタ自動車は「カローラ」が派生車種を含めて世界一だと主張しているのです。定義が違えば、世界一が複数あって当然です。
 
もちろん、いくら世界一を主張したところで過去の販売実績が増えるわけはないので、直接的な利益はありません。それでも世界一を声高に主張するのは、「自動車メーカー各社は、販売面で達成した優位な実績をマーケティング手段として活用」するからです。販売台数が世界一の車種なら、それを「安心感」や「大衆性」に結び付けてアピールできるわけです。
 
データ活用は、意思決定の精度向上に貢献するだけでなく、広報・宣伝活動にも役立ちます。では、データを広報や宣伝に活用するとき、どのようなコツがあるでしょうか。
 

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99個で負けても1個勝てば・・・

以前、市場調査会社に勤めていた頃、メディアの媒体資料の元になるアンケート調査に関わっていたことがあります。「我がメディアに広告を出せばこんなに素晴らしい」というやつです。
 
媒体資料をつくるときに必要な視点は、フラットなデータ分析からは程遠い「良いところ探し」です。100個の質問をして99個の質問でライバルに負けていても、残り1個で勝てばそこを売りにすることができるからです。
 
幸い佐々木が担当していたのはそこまで弱いメディアでなかったので、そんなに無理をする必要はありませんでした。しかし、それでも多少のアレコレはあるもので、そんなときは良く言ったものです。「○○紙や××誌でも媒体資料をつくれるんだから、データなんてどうにでもなる」と・・・。
 


「良いところ探し」は質と部分に注目を

「良いところ探し」の方法は数多くありますが、もっとも簡単かつ効果的なのは次の2つのやり方です。
 
 量でダメなら質を見る 
量で明らかに適わなかったら、論点をすり替えるしかありません。「購読者の平均年収が高いので広告効果が期待できる」とか、「購入者に先端的な人が多いので、将来性が大きい」などです。冒頭の自動車販売台数の例も、この一種と考えられるでしょう。
 
 全体で適わなかったら部分に注目する 
全体で負けていたら勝っている部分を探すことになります。「全国では負けているけど東京では強い」、「消費者一般では3位でも、20代男性に限ればトップ」などの類です。属性を細かく分けていけば、どこかで勝っている部分があるものです。
 
まあ、このようにやっていけば「良いところ」は見付かります。ポイントはその「良いところ」について価値を共有させるメッセージを付けることです。「なぜ東京で強いことが重要なのか」、「20代男性でトップにどんな価値があるのか」をうまく説明するのです。このメッセージ次第で、その効果は大きく変わります。
 


データ活用は目的次第

日ごろ、「事実を元にした判断が大切」「何ごともデータを参考にして決定しよう」などとしていながら、このようなことを書くと信頼を失いそうですが、これもまたもう一つのデータ活用法です。データを改竄したり、あまりに強引な解釈をしたり、データの出所を不明確にしたりしない限り、何らやましいところのない使い方です。後は、そのメッセージを消費者がどう判断するかで、成否が分かれます。
 
あまりいい加減なメッセージを発すると消費者の不信を買います。あくまでフラットなデータ活用を心得た上で、それを広報・宣伝のデータ活用に応用することが失敗しないための最大のコツといえるでしょう。

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