これがクライマックスシリーズの確率論だ!


この記事の所要時間: 430秒 〜 530秒程度(2533文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
北海道日本ハムファイターズがプロ野球パ・リーグの優勝を決めました。これでセ・パ両リーグの優勝チームが出揃い、野球ファンの興味はクライマックスシリーズ、日本シリーズに移っていくことでしょう。
 
それにしてもクライマックスシリーズというのは不思議な制度です。
レギュラーシーズン144試合を行なってようやく決めた1位チームの代わりに、たった(最大)6試合の短期決戦の勝者を日本シリーズに進出させようというのですから正気の沙汰ではありません。
 
この制度がおかしな理由は、確率で説明できます。
144試合と6試合では「偶然」が及ぼす影響の大きさがまったく違うため、6試合では真の実力は計れないのです。1試合1試合に勝つ確率が6割のチームと4割のチームが戦ったとして、144試合なら後者が前者を上回る可能性はほぼありません。しかし、6試合なら「偶然」のいたずらで後者が勝つことも、まま起きるのです。
 
日本シリーズで本当に「日本一強い球団」を決めようとしているのなら、偶然の影響はなるべく排除した方が良いのは当然です。レギュラーシーズンで2位や3位のチームが日本一になってしまったのでは、その球団が本当に最強チームなのか疑問に思う人も多いでしょう。たくさんの人が納得できない日本一の決め方をしていることは、長期的なプロ野球人気低迷の一因のようにも思えます。
 
さて、ここで制度の欠陥を指摘したところでクライマックスシリーズは実施されます。
そこで、2位や3位のチームが1位チームを逆転して日本シリーズに進出する可能性はどの程度あるのか。これを考えてみることにしましょう。
 

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2位・3位のチームの逆転優勝確率は3割強


まず、クライマックスシリーズの仕組みを簡単にまとめると以下の通りです。

 ・レギュラーシーズンの最終成績が3位以上のチームによって実施。
 ・ファーストステージは、2位球団と3位球団が3試合制で対戦。
 ・ファイナルステージは、レギュラーシーズン1位チームとファーストステージ
  の勝者が対戦。6試合制で先に4勝したチームが優勝。
 ・レギュラーシーズン1位のチームには1勝のアドバンテージ有り。

 
今回の興味は1位チームが逆転されるかどうかですから、確率を求めるのはファイナルステージのみとします。レギュラーシーズン1位チームにとって、1勝のアドバンテージがどの程度の有利になるかがポイントです。
 
あわせて、この確率を計算するためには、両チームが直接対決した場合の1試合1試合の勝敗確率がポイントになります。もちろん、これが最終の逆転優勝確率を左右するので慎重に仮定する必要がありますが、こればかりは何とも言えません。レギュラーシーズンの勝率の差、直近10〜20試合程度の勝率の差、直接対決の対戦成績などの利用が考えられるものの、どれもこれから行なわれる対戦の勝率をずばり予測するには至らないからです。そこで、ここは「勝負は時の運」と開き直り、レギュラーシーズン1位チーム5割、ファーストステージ勝利チーム5割で考えてみます(試算の都合で引き分けは無しとします)。
 

 
さて、これを前回前々回も使ったモンテカルロ法で計算すると、レギュラーシーズン1位チームの優勝確率は64.58%〜66.04%となります(1万シリーズのシミュレーションを10回試行)。言い換えれば、2位・3位のチームが逆転優勝する可能性が3割強あるということです。
 


逆転優勝確率3割強は「いい線」をついてる?


「そもそもクライマックスシリーズの制度自体がおかいい」という議論を脇に置くと、クライマックスシリーズは逆転優勝の可能性がなければやる意味がありません。とは言え、逆転の可能性が大き過ぎればレギュラーシーズンの価値がなくなります。やるからには「適度」な逆転優勝確率が必要です。そして、クライマックスシリーズをこの位置付けで考えた場合、感覚的な評価として逆転確率3割強というのは「いい線」をついているように思います。
 
ちなみに、元々の実力、アドバンテージがあることの精神的有利、ホームグラウンドでゲームが開催される地の利を考えると、1試合1試合の勝敗確率は1位チームに有利と考える論もあるでしょう。そこで勝敗確率を変えて再度試算してみると、1位チームの優勝確率は6対4だと81.39%〜82.52%、7対3だと92.84%〜93.28%に跳ね上がります。
 
両チームの勝敗確率は考え次第ですが、実際の逆転確率は、5対5で算出した3割強よりもかなり低くなる可能性があるようです。
 


設計段階でモンテカルロ法を!


この例を見てもわかる通り、何らかの制度を設計するときに、事前にシミュレーションを行なうことは役立ちます。日本野球機構がどのようなシミュレーションを行なったかはわかりませんが、逆転の確率がもっと高かったり低かったりしたら、今とはクライマックスシリーズの盛り上がりが違っていたでしょう。単なる思い込みで制度を設計して予想外の事態となったら、目も当てられません。可能な限り事前シミュレーションを行なった方がいいのです。
 
とは言え、制度を設計した結果、どのような影響が出るかを求めるのは容易ではありません。現実の事象の場合、一般的な確率計算はできないと考えた方がいいでしょう。
 
そんなときに、モンテカルロ法の力ずくのシミュレーションが生きてきます。もちろん完璧なものではありませんし、比較的簡単とはいえ一般の人には手強いでしょうが、「わからない」で済ますくらいならやって見る価値はあります。
ぜひ、制度設計の場面でもぜひモンテカルロ法を有効活用してもらいたいものです。

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