アスレチックスの奇跡とデータ活用の可能性


この記事の所要時間: 240秒 〜 340秒程度(1578文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
オークランド・アスレチックスが、米大リーグ ア・リーグ西地区で優勝しました。
あまりの高額年俸から「金銭ゲームになってしまった」とも揶揄される大リーグにあって、今季の総年俸が30球団最下位のアスレチックスが地区優勝したことは、一見「奇跡」と言ってもいいような事件でしょう。
 
ところが、実はこの優勝は起こるべくして起こったとも言えます。
なぜなら、アスレチックスは野球というスポーツにおけるデータ活用の効果を見せ付けることで、ここ数十年の大リーグに大きな影響を与えているからです。今回の優勝をデータ活用が生み出した成果と考えるなら、最低年俸での優勝も何ら不思議な出来事ではありません。
 
では、アスレチックスはどのようなデータ活用を行なって強くなったのでしょうか。
今回は、アスレチックスの「奇跡」について書かれた『マネー・ボール』(マイケル・ルイス/ランダムハウス講談社)を元に、少し説明してみることにしましょう。
 

photo credit : shoothead via photopin cc

 


勝利に貢献する指標は何か?


 他球団と違った指標を使う

アスレチックスが行なったことを一言でまとめるなら、この一点に尽きるでしょう。
 
打率が高い選手と低い選手では、打率が高い選手の方を欲しいのは当然です。肩が強い選手と肩が弱い選手、守備が上手な選手と下手な選手を較べれば、それぞれ前者を取りたくなるのは間違いありません。しかし、そういう「いい選手」がどれだけチームの勝利に貢献するかはこれまであまり明らかにされてきませんでした。
 
ここに切り込んだのが、この物語の中心人物であるアスレチックスのゼネラルマネジャー ビリー・ビーンです。ビーンは、

 ・打点や盗塁よりも、出塁率
 ・防御率よりも、奪三振や被本塁打

の方が勝敗に大きな影響を与えることを、データ分析の専門家の協力で見付け出しました。そして、これらの指標に基づき選手を獲得することで、チームを強くしたのです。
 
他球団と評価基準が違うことにはもうひとつの効果があります。それは、選手獲得の際に競争が少なく、安い契約金や年俸で選手を獲得できることです。これにより、ビーンは「年俸の割に勝ちやすいチーム」=投資効率の良いチームをつくれたのです。
 
残念ながら『マネー・ボール』に書かれているデータ活用の説明は断片的でわからないところも多いのですが、目的(勝利)に貢献する指標を直感や経験ではなく、データに基づいた科学的なアプローチで選んだことが最重要なのは間違いありません。
 


できるのは勝利の確率を上げること


さて、『マネー・ボール』にはいろいろな話が数多く書かれていますが、もっとも印象に残ったのは次の箇所です。

科学的な野球がやはり有利ではあるが、つきの要素のほうがさらに大きい。科学だのみの野球なんてやっぱり無意味、と世間から非難を浴びるはめになってしまう。

 
そうなのです。
いくら科学的なアプローチを取ったとしても、最後の勝敗は運次第です。データ活用でできるのは、勝利の確率を上げることに過ぎません。ここを勘違いすると、「データ活用がうまくいけば成功して当然」となりますが、実際にはそうとは限らないのです。無責任と思われるかも知れませんが、データに真摯に向き合うならこうとしか言いようがないのです。
 
データ活用を行なうなら、このことをわかった上で科学的なアプローチをする覚悟が必要です。

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