合理的でない消費者を考えることが差別化に!


この記事の所要時間: 240秒 〜 340秒程度(1608文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
ビジネスについて議論をしていると、究極のところで「人間とはどういう生き物か」という人間観、「消費者はどんな行動をするのか」という消費者像の問題に突き当たることがあります。人それぞれが持っている人間の行動についての常識が齟齬をきたして、議論が紛糾するのです。
 
消費者が、どのくらい合理的、理論的、規範的に行動するか。
この価値観の違いにより、ビジネスの方法が大きく変わってくるのは間違いありません。彼ら彼女らが常に自身の利益を最大化するよう合理的に行動するならば、企業は他社よりも品質が優れていて充分に価格が安い商品の開発に専念すればいいことになります。それだけでヒット商品になること間違いなしだからです。
 
もちろん、そんなことはあり得ず、それは誰でもわかっているはずです。
しかし、ビジネスの場で議論をしていると、いつの間にか現実よりも合理的な消費者を想定することが多くなるのも事実です。合理的でない消費者を考えようとすると、

 ・議論がなかなか噛み合わない
 ・意思決定や社内の合意形成が難しくなる
 ・失敗したときに言い訳がし難く、苦しい立場に追い込まれる

などの事態が予想されるため、企業内では避けられる傾向にあるのでしょう。
 
これは、見方を変えれば大きなチャンスがあるということです。
社内でリアルな消費者像を想定して議論することができれば、その人なりその会社なりは競合他社より優位に立てるのです。合理的でない消費者をしっかり想定できることが、ある種の差別化になり得ます。
 
さて、合理的でない消費者を考えることはなかなか容易ではありません。
しかし、これを研究している学問があります。それが行動経済学です。
 

photo credit : B Tal via photopin cc

 


行動経済学は人間の癖を明らかにする


行動経済学は、経済学が仮定する合理的な人間像を疑います。
「経済学が考える合理的な人間なんていない」というのは誰でも思うことでしょう。しかし、行動経済学はそこに留まりません。人間の非合理性を認めた上で、とは言え人間の行動はバラバラではなく、そこに何らかの「癖」があると考えるのです。そして、その「癖」をいろいろな実験を通して計量し、「人間はこういう行動をする傾向にある」ということを明らかにしていくのです。
 
意外な結果は少なく、自分を省みて「あるある」ということばかりですが、それだけ真実に迫っているということなのでしょう。「あるある」を印象に留めず、実験結果として示すことに価値があります。
 


ビジネスマンには行動経済学が欠かせない


自分はよく、経験や勘に頼らず「事実」に基づいて意思決定をするように勧めます。事実に基づくことが意思決定の精度を高め、それがひいては経営の安定や業績の向上につながると考えるからです。
 
人間像についても同様に「事実」に基づくことが大切です。
そしてこの場合、経験や勘だけでなく経済学が仮定する「合理的な人間」という理想像(?)も合わせて否定しなくてはなりません。そのぶん、先入観を取り除いてリアルな人間像に向きあうことができれば、より大きな効果が期待できると考えられます。
 
そして、このリアルな人間像に近付くために役立つのが行動経済学です。その意味で行動経済学はビジネスマンに欠かせない素養となりつつあると言えるでしょう。
 
まあ、こんな理屈をいつまで言っていても仕方ないので、次回からはいくつかの実験例を紹介し、ビジネスのヒントにつなげたいと思います。

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