今日からはじめるA/Bテスト


この記事の所要時間: 340秒 〜 440秒程度(2073文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
今週はここまで行動経済学を紹介してきました。
行動経済学の素晴らしいところは、人間の行動を「こうするはず」や「こうするべき」と規範的に考えるのではなく、実験によって実際に「こうした」を把握する点です。
 
どのようなビジネスでも、しっかりした調査を行ない、できる限り「事実」に近いデータから意思決定することが重要です。このとき、ビジネスの場でキーとなる「人間」について事実に近付くアプローチをしている行動経済学は知識として欠かせません。ここ数回は、消費者をイメージして行動経済学を説明しましたが、社内の人間関係やライバル会社の行動を予想するにも役立ちます。
 
さて、人間の行動を実測するという意味で、行動経済学に関連深いと考えられるのがA/Bテストです。
 

photo credit : nettsu via photopin cc

 


A/Bテストで比較しよう

A/Bテストを一言で説明するなら、比較テストということになります。
AとBの2つのパターンを用意して、それぞれに対する実際に消費者の反応を確かめ、どちらが優れているか判断するのです。もちろん、3つ以上のパターンを比較することもあります。
 
例えば、顧客へのメールでもA/Bテストは可能です。
顧客をランダムに2つのグループにわけて、片方のグループには文面Aをもう片方のグループには文面Bを送ります。その上で、実際のアクセス数などについて両グループを比較するのです。ログインが必要なサイトならその記録を分析すれば比較ができますし、そうでない場合でもメール文面に記載するURLに細工して、アクセスログの分析をすれば比較が可能です。
 
ホームページのデザインについても、2種類をランダムに表示させることで、どちらが滞在時間が長いか、実際に商品を購入するかなど比較することができます。ホームページは、ちょっとしたボタンの位置、説明の文言ひとつで使いやすさが大幅に変わるため、A/Bテストが有効でしょう。
 
テストの結果に基づいてさまざまな変更を行なえば、経験や勘で「ああした方がいい」とするよりも、ずっと確実に効果が期待できるのです。
 


まずは仮説を

技術的な面を除けば、A/Bテストに必要なのは仮説です。
 
A/Bテストでは、消費者の行動に影響を与えそうな要素を考え出して、それについて2つのパターンを提示します。その根っことなる影響を与えそうな要素が思い浮かばなければ、テストのしようがありません。
 
後からテストをするので、どんな仮説でもいいのですが、テストに掛かる手間を考えるとすべてを実験することはできません。複数人でアイデア出しをして、脈がありそうな仮説についてテストをすることになります。
 
先ほどのホームページの例で言えば、ボタンの位置、説明の文言以外にも、フレームのデザイン、ページ全体の色調、写真の大きさなどいろいろな要素が考えられます。どの仮説をテストするのが良いかは一概に言えませんが、少し頭を柔らかくして考えた方がいいのは間違いないでしょう。
 


一人でも店頭でもできるA/Bテスト

最近見かけるA/Bテストについての話題はインターネットに関するものがほとんどです。安価で、簡単にデータを取りやすいので、その方法がいろいろ考えられています。
 
しかし、A/Bテストは何もインターネット上に限ったものではありません。
実際の小売店で、お客に正面から声を掛けるか、横から声を掛けるか。こんな些細なことでも、お客の反応は変わってくるものです。この程度の内容だと、誰もが何となく試して改善しているようなことですが、それをテストとしてやることに意味があります。人間の認知や記憶はいい加減だからです。
 
テストと意識しないでこのような改善を行なうと、「正面から声を掛けたあのお客さんはいい感じの反応をした」とか、「横から声をかけた別のお客さんは、スッと体をかわして逃げてしまった」とかのぼんやりした記憶を積み重ねることになります。しかし、このような記憶の積み重ねにはバイアスが付きものです。自分の都合のいいような記憶の改竄がされるものです。
 
これを防ぐためにA/Bテストと意識して行なうことになります。
大切なのは次の3点です。

 ・テストする要素以外は、なるべく同じように行動する
 ・評価基準(例えば、購入有無、店舗滞在時間)を事前に明確にする
 ・結果を記録する

 
当たり前のようですが、これらを行なうことでずっと本格的なA/Bテストに近付きます。A/Bテストは何ら難しいことではありません。
 
明日からと言わず、今日から始めてみてはいかがでしょうか。

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