コンピュータと水道、どちらが大事?


この記事の所要時間: 30秒 〜 40秒程度(1731文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
JBpressというニュースサイトがあります。
「経営者・マネジメント層、ビジネスパーソンに向けて、本質的で深い分析に基づいた記事を提供」と掲げるだけあり、既存メディアとは少し違った切り口のニュースが特徴的なサイトです。英エコノミスト誌や英フィナンシャル・タイムズ紙の翻訳記事が多数掲載されており、そこにも魅力を感じます。
 
先日、そのJBpressで目に止まったのが、限りない経済成長の時代は終わったのか?という英フィナンシャル・タイムズ紙の記事です。ノースウエスタン大学のロバート・ゴードン教授の論文を取り上げたもので、経済成長の源泉を人口増加と生産性向上にわけ、「生産性の伸びは向こう100年間低下し続け、無視できるレベルにまで落ち込むかもしれない」としています。
 
この記事のキーワードとなっているのが汎用技術という言葉です。
 


photo credit : TF28 ❘ tfaltings.de via photopin cc

 


汎用技術は世の中を発展させる


汎用技術はGeneral Purpose Technologies(GPT)の訳語で、素直に「汎用目的技術」といった方がわかり易いでしょう。「あらゆる人々によってあらゆる目的に使用され、〔略〕個別のツールではなく、多種多様なツールや用途の土台」となる技術のことを言います(参考:『クラウド化する世界』ニコラス・G・カー/翔泳社)。
 
具体的には、電気、内燃機関、水道、通信、そしてコンピュータなどが汎用技術です。これらの技術が広く普及し、規模の経済によってコストが下がって誰もが使える状態になることで、世の中が大いに発展するのです。
 
今話題のクラウド・コンピューティングもこの文脈で捉えることが可能です。
多くの企業がそれぞれ独自のアプリケーションやサーバーを持つよりも、IT系の大企業が汎用的な技術を提供した方が安価で高品質なものになり(ある種のコモディティ化)、それが世の中の発展に貢献するということになります。
 


コンピュータと水道、どちらが大事?


この記事で注目しているのは、それぞれの汎用技術が世の中や人々に与える影響の大きさの違いです。
 
現在、汎用技術となって生産性向上に貢献しているコンピュータやインターネットは、一つ前の時代の汎用技術である電気や水道と較べて、影響が小さいというのです。
 
ここで問われるのが、

 「2002年以降に発明された優れものの機器の数々」か「水道と屋内トイレ」の
 どちらか一方だけを取っておけるとしたら、どちらを取るか

という思考実験です。
 
タイトルでは簡略化して「コンピュータと水道、どちらが大事?」としてみましたが、要は今の時代の汎用技術と一つ前の汎用技術とどちらを取るかという問いかけです。もちろん、調査をしてみなければわからないものの、一つ前の汎用技術を取る人の方が多いように思います。なぜなら、電気などの一つ前の技術が現代人の生活の基盤を支えているのに対して、コンピュータやインターネットといった現代の汎用技術は生活の表層を豊かにしているだけだと考えられるからです。影響力の違いは明らかでしょう。
 


画期的な汎用技術はもう出ない?


さて、現代の汎用技術の影響力が小さいとしても、前の時代の汎用技術で代替することはできません。汎用技術による「変化の多くは1度限りのもの」だからです。だからと言って、生産性向上に大きく役立つ新しい汎用技術を生み出すイノベーションの実現は困難でしょう。生活の基盤は既に充分整っていますから、そこまで大きな影響を与える新技術は難しいように思います。
 
今後、生産性を大きく向上させるような画期的な汎用技術は期待できないのかも知れません。夢を見るのも大切ですが、これを前提として自覚することも必要ではないでしょうか。

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