「相棒」とアメリア・イアハート効果


この記事の所要時間: 430秒 〜 530秒程度(2483文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
季節は秋。
秋と言えば、テレビ朝日系列のドラマ「相棒」がはじまるシーズンです。
新しい相棒を迎えた今シーリズも勢いは衰えず、初回の視聴率は19.9%(関東地区/ビデオリサーチ調べ)。好調な滑り出しを見せています。
 
さて、「視聴率 19.9%」。
この数値だけを見ても充分に高視聴率だと思うのですが、新聞各紙が「初回として最高」と扱われているのがおもしろいところです。記事をつくる側がこの手のデータを調べることは考え難く、テレビ朝日側の広報発表にこのフレーズがあったものと思われます。「最高」というラベルを貼るためにやや力ずくの工夫しているところは、マーケティングの「アメリア・イアハート効果」を思い出させます。
 
こう書いても、「アメリア・イアハート効果て何だ?」という人がほとんどでしょう。
そこで今回は、誰もがナンバーワンになれる魔法の技術アメリア・イアハート効果について説明することにします。
 

photo credit : Leo Reynolds via photopin cc

 


1番目はわかっても2番目はわからない


世界ではじめて大西洋単独無着陸飛行をした人物がチャールズ・リンドバーグなのは、よく知られています。では、2番目にこの偉業を達成したのは誰か。答えられる人はほとんどいないでしょう。2番目以降は、歴史にも記憶にも残らないのです。
 
アメリア・イアハートは、世界ではじめて大西洋単独無着陸飛行をしたもう一人の人物です。もちろん、「人類ではじめて」はリンドバーグなのですが、イアハートは「女性ではじめて」大西洋単独無着陸飛行をした人物として歴史に名を刻みます。
 
ナンバーワンになることは、消費者の記憶に残るためにも、広報活動で使うためにも、大きな価値を持ちます。しかし、ナンバーワンになるのは容易なことではありません。そんなとき、ランキングの対象を絞り込むことでナンバーワンになる魔法の技術が役立つのです。
 


「東京スカイツリー効果」とした方が・・・


さて、この話はよくできているので、かなり前に読んだ内容を覚えていました。しかし、「アメリア・イアハート効果」という名称はさっぱり記憶にありません。今回この内容を書くにあたっても、記憶の断片から「マーケティング 女性 飛行」のキーワードを思い出し、これで検索して「アメリア・イアハート効果」に行き着いたのです。
 
用語として一般的なのかさえよくわかりません。
インターネットで調べた中では、プレジデント社のホームページにある業界下位がトップを奪う秘策「アメリア・エアハート効果」とはという記事が最も出どころがはっきりした出典なのですが、その中で筆者の石井淳蔵先生は、「こうした効果を、彼女の名にちなんで、アメリア・エアハート効果と呼ぶことにしよう。」と書いています。この文章から判断する限り、「アメリア・イアハート効果」という名称は石井先生の発案で、本人もあまり一般的でないと思っているようです。
 
この着想、素晴らしいと思うのですが、広く周知しないのはネーミングに難があるせいのように思います。少なくとも日本ではアメリア・イアハートはあまり有名でなく、なかなか効果の名称を覚えられないからです。
 
2位や3位に注釈を付けて1位にするやり方は、他でもいろいろ行なわれています。どうせなら、「自立式鉄塔」で一番高いと喧伝する東京スカイツリーにあやかって、「東京スカイツリー効果」としたらどうでしょうか。これなら忘れ難いと思われます。
 


世界一高いタワーはピサの斜塔?


本題に戻ります。
 
アメリア・イアハートは属性をわけることでナンバーワンになりましたが、1位になる方法はもう一つあります。それは、別の比較軸を持ち出す方法です。
 
このインフォグラフィックをご覧ください。

ここでは世界のタワーを比較していますが、いろいろなナンバーワンがあります。高さがたった55mしかないピサの斜塔でも、高さ1メートル当たりの展望台料金を基準にすればナンバーワンです。比較軸を変えることの有効性は、この1枚を見るだけでわかっていただけるでしょう。
 


「ナンバーワンづくり」はほどほどに


属性の絞り込みと、比較軸の変更を行なえば、どんなものでもナンバーワンに仕立て上げることができます。この「ナンバーワンづくり」は極めて魅力的ですが、あまり無理をするとしっぺ返しがあると考えられます。それを聞いたり読んだりした消費者に「おかしい」と思われると意味が無いからです。
 
注意すべきは、

 ・あまりに恣意的な属性や比較軸を選ばない
 ・該当数が極端に少ない属性は避ける
 ・絶対値がよくないものは諦める
 ・順位の根拠が示せるようにする

などです。
 
「アジア人女性で初」ならいいでしょうが、「◯◯県の30代未婚の小太り女性で初」は成り立たないということです。冒頭の「相棒」の例で言っても、「初回最高」だからいいのであって、「5話目最高」と言われてもピンと来ません。また、視聴率が5%や6%だったら最高と言われても説得力がないでしょう。視聴率は数字であらわせるので「最高」が明確ですが、「最高の話題作」と言われても信じない人も多い筈です。
 
充分な注意をした上で使えば、アメリア・イアハート効果は役立ちます。
ナンバーワンづくりを行ない、ビジネスに活用してみてはいかがでしょうか。

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