要因列挙法を使いこなそう!


この記事の所要時間: 320秒 〜 420秒程度(1942文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
前回(カテゴリー適用法に気をつけろ!)に続いて、一橋大学大学院の沼上幹教授が提唱する「経営戦略の3つの思考法」を取り上げます。
 
今回は要因列挙法です。
 

photo credit : Lars Plougmann via photopin cc

 


要因列挙法は説得力と安心感があり、批判にも強い


『経営戦略の思考法』(沼上幹/日本経済新聞出版社)の中で、要因列挙法は以下のように説明されています。

要因列挙法とは、ある現象の原因となる要因を多数列挙して網羅的に検討する思考法である。

 
更に、インテル社の利益率の高さを「メモリーでなくプロセッサーである」、「デファクト・スタンダードである」、「ブランド・イメージが浸透しているという3つの要因で説明することで、「デバイス事業だから儲かる」というカテゴリー適用法よりも要因列挙法の方が優れていることを示します。
 
要因列挙法による説明の方が、

賢い頭の使い方で
 ・説得力が大幅に増している
 ・安心感も手に入る
 ・社内の各方面から飛んでくるに違いない多数の批判に対して
  事前に準備ができている

からです。
 
この後、要因を列挙しているだけではまだまだ思考の深堀りが足りず、その要因間の関係=メカニズムを考える必要があるという展開となりますが、今回はテーマに沿って要因列挙法の話を続けます。
 


要因列挙法は人気者


要因列挙法が経営戦略の思考法として優れているかは別にして、これがビジネスの場であまねく一般的に使われているのは間違いありません。要因列挙法はかなりの人気者です。それどころか、著者も指摘している通り、この要因列挙法で抜け目なく、数多くの要因を考え出せることが、ビジネスマンとして高い評価を得るのに欠かせないのです。
 
背景には、要素還元主義への信仰(?)があるように思います。
ウィキペディア日本語版は、還元主義の「日本で比較的定着している定義」として、以下の2つを紹介しています。

 ・考察・研究している対象の中に階層構造を見つけ出し、上位階層において
  成立する基本法則や基本概念が、「いつでも必ずそれよりひとつ下位の
  法則と概念で書き換えが可能」としてしまう考え方のこと

 ・複雑な物事でも、それを構成する要素に分解し、それらの個別(一部)の
  要素だけを理解すれば、元の複雑な物事全体の性質や振る舞いも
  すべて理解できるはずだ、と想定する考え方

 
物ごとを理解するために、それを要素に分けて各要素を理解するというのは極めてオーソドックスな考え方といえるでしょう。人間の身体を理解しようとして、まず身体の一部分である脳の仕組みや臓器のつながりを理解し、更にそれを構成する細胞、DNA、原子と追求していくわけです。
 
これがうまく行っているうちは、このアプローチは単純明快で素晴らしいものです。しかし、還元主義では理解、説明できないものまでこの枠組で考えようとすると落とし穴にはまります。経営戦略は還元主義が成り立たないジャンルなのではないでしょうか。
 


要因列挙法を積極活用しよう!


とは言え、モノを考えるときにまず行なうべきは、要因列挙法です。
 
最初から物ごとの仕組みを考えようとしてもうまく行きません。
まず、要因をことごとく列挙してから、その要因間の関係を考えるのがリアルな作業です。要因列挙法だけでは充分な戦略を考えることができず、後からメカニズムを考えなくてはいけないことを前提に、自覚的に要因列挙法の作業を行なうことが有効でしょう。要因列挙法の欠点を踏まえた上で、あえてそれを積極活用するのです。
 
経験的に言えば、リアルに作業するときは、要因を列挙するステップと、メカニズムを考えるステップをはっきりわけることが重要です。要因を列挙しているうちに、メカニズムを考えだすと「何を議論しているかわからなく」なってしまいます。要因列挙は多人数でブレストのように、メカニズム解明は少人数(場合によっては1人)で淡々と行なうなど、明確に分割してこれらの作業を行なうことが、より有効なアウトプットを出すための近道のように思います。
 
要因列挙法をうまく活用するもしないも、使い方次第です。
「3つの思考法」を意識しながら、自覚的に要因列挙法を活用したいものです。

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