相互作用を考えるメカニズム解明法は現実的?


この記事の所要時間: 430秒 〜 530秒程度(2541文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
引き続き「経営戦略の3つの思考法」を取り上げます。
今回はメカニズム解明法。真打登場です。
 

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キーワードは相互作用


前回(要因列挙法を使いこなそう!)、前々回(カテゴリー適用法に気をつけろ!)にならい、まずはメカニズム解明法の語義を確認しましょう。
 
『経営戦略の思考法』(沼上幹/日本経済新聞出版社)からの引用です。

これら2つの思考法〔引用者註:カテゴリー適用法と要因列挙法〕が、静的で単純な構造をもつ議論であるのに対して、メカニズム解明法は様々な要因や人々の行為と相互作用に注目し、時間展開の中でこれらが複雑に絡み合う様子を解明する思考法である。

 
つまり、メカニズム解明法では、要因がそれぞれ独立して存在するのではなく、人々の行為や時間展開によって各要因が相互作用を起こすと考えます。そして、その相互作用まで考慮に入れた戦略を考えるのです。現実の世の中では、各要因が複雑に絡み合って相互作用を起こすのが当然ですから、経営戦略を深掘りして考えるときにはメカニズム解明法が最も妥当な思考法となります。
 


メカニズム解明法は現実的じゃない!?


現実に存在する複雑な世の中のメカニズムを考えて、それを元に経営戦略を練るアプローチは極めて魅力的に映ります。「多くの経営者は、世の流行に振り回されて(カテゴリー適用法)、それぞれの要因に個別に注目して考え(要因列挙法)、メカニズムまで深入りしないから駄目なんだ」とさえ思います。自分にとって「腹落ち」する考え方なので、「経営戦略はできる限りメカニズム解明法で考えよう!」という勢いです。
 
しかし、実際に役立てようと考えれば考えるほど引っ掛かるのが、「メカニズム解明法で考えることは現実的なのか?」という疑問です。
 
『経営戦略の思考法』にもある通り、「深い思考と長い時間が必要」なのでいつでも使える方法ではありません。また、「簡単なメッセージに落とし込まないかぎり」は他の人に伝えられないという欠点もあります。更に言ってしまえば、考え出したメカニズムは仮説に過ぎないため、一つ一つの因果関係をどうやって確認、検証するのかも問題でしょう。
 
また、『経営戦略の思考法』の中では、要因を結びつける手順として以下の方法が示されますが、ここにも難があります。

 (1)リアルな「こびと」を思い浮かべ
 (2)多様な「こびと」同士の関係を把握して構造を描き
 (3)「こびと」の変化をトレースし、
 (4)メカニズムを解明する

 
メカニズムを解明するために多様な人々(リアルな「こびと」)を思い浮かべて、その総体がどのような影響を与えるか考えるという流れと主旨は理解できます。しかし、そんなことが現実的にできるかと問われれば、言葉を濁すことになるでしょう。自分にはできません。もし「できる」と言う人がいるとしたら、それは有能なのではなく、思い込みの強いただの自信家だと考えられます。人間は神にはなれません。
 
メカニズム解明法に強く惹かれながらも、現実的に「これを使えば有効な経営戦略を考え出せる」となかなか思えないのは、これらの欠点が立ちはだかるからです。
 


メカニズム解明法は自分磨きツール


さて、これらの欠点を踏まえた上で、限定的にメカニズム解明法を使うのが現実的なように思います。そこで、以下では自分が「メカニズム解明法をどう使おうとしているか」をお話します。
 
まず、

 アイデアや戦略を提案するときには、常に自分なりのメカニズムを考える

ことです。
相手に見せるためではなく、自分がカテゴリー適用法や要因列挙法に陥ってないかを確認するためにメカニズムを考えます。これにより、不用意な提案を避けることができますし、メカニズム解明法のセンスを磨くことを期待しています。
 
次に、

 アイデアや戦略に対する意見や反論を、メカニズムにフィードバックする

ことが可能でしょう。
先ほども書きましたが、自分で組み立てたメカニズムは仮説に過ぎません。そのため、他人がメカニズム(要因と要因のつながり)のどの部分に疑問を持つかをフィードバックすることがメカニズムのブラッシュアップに役立ちます。もちろん、疑問を持たれたからといって修正が必須なわけではありません。なぜそういう疑問が出るかを検討することが極めて有効なのです。メカニズム自体を公開しなくても、どこに反論が出たかはおのずとわかると考えています。
 
最後に、

 メカニズムを披露して、他人を説得する

としたいところですが、実はここまでは考えていません。
自分の理解と能力が足りない所為かも知れませんが、メカニズム解明法は他人に見せてどうこうするものではないように思うのです。メカニズムを共有しようとすると、各要因についての個人個人の認識の違いや、要因間の矢印の解釈で議論が発散してしまい、たくさんの妥協が必要となります。その結果、戦略として体をなさなくなると考えられるからです。メカニズム解明法は、自分の戦略を磨くためのツールとして使いたいと考えています。
 
以上が、自分が考えるメカニズム解明法の使い方です。
メカニズム解明法はかなり有効な考え方で、この使い方では思考法の価値を充分引き出せてないかも知れません。
 
それでも、経営戦略の考え方として、カテゴリー適用法、要因列挙法、メカニズム解明法の3つがあることを自覚して、その中で最上と考えられるメカニズム解明法について自分なりに考察することは価値があると考えています。
 
自分のモノの考え方を、一段メタで捉える作業は、頭を使う仕事している限り、欠かせないアプローチなのではないでしょうか。

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