キンドルをメカニズム解明法で占うと・・・


この記事の所要時間: 420秒 〜 520秒程度(2451文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
ここまで3回にわたり、一橋大学大学院の沼上幹教授が提示する「経営戦略の3つの思考法」、すなわちカテゴリー適用法要因列挙法メカニズム解明法を紹介してきました。このフレームの素晴らしさを少しでも理解していただけるようできる限りわかりやすく書いたつもりですが、それぞれの思考法を個別に書いたこともあり、その全体像が伝わりにくかったように思います。
 
そこで、今回はある一つのテーマについて、これら3つの思考法を使って考えてみたいと思います。テーマは、日本市場参入が発表されたばかりの米アマゾン・ドット・コムの電子書籍端末 キンドル。このビジネスが成功するかどうかを考えてみましょう。
 

photo credit : skyfish81 via photopin cc

 


Kindkeストアがオープン


まず、キンドルの日本市場参入の概要は以下の通りです。

・電子書籍リーダー「Kindle Paperwhite」(8,480円/12,980円)、
 タブレット端末「Kindle Fire」(12,8000円)、
 タブレット端末「Kindle Fire HD」(15,800円/19,800円)を発売する。

・10月25日に日本版の「Kindleストア」をオープンし、5万冊を超える日本書籍、
 140万冊以上の英語およびその他の言語による書籍を提供する。

 
細かな仕様や読書以外にできることを書き出すとキリがないので、これ以上切るところがない抜粋にしました。高性能で安価な端末、そして5万冊超の日本の書籍を扱うKindleストアが目玉と言えるでしょう。
 


アメリカでヒットしているので成功する vs 日本では電子書籍は成功しない


米電子書籍大手 アマゾン・ドット・コムによる日本市場参入は大いに注目を集めており、インターネット上ではすでにさまざまな評価を見ることができます。
 
その中で散見されるのが、
 ●アメリカでヒットしているので成功する
 ●日本で電子書籍は成功しない

という論法です。
 
これらは、
 ●アメリカでヒットした商品 → 日本でも成功する
 ●これまで日本で失敗しているジャンルの商品 → 次も成功しない

という典型的なカテゴリー適用法で「成功する」「成功しない」を判断しています。
 
予想は偶然あたるかも知れませんが、このような論理展開では「成功する」「成功しない」の説明にならないのはおわかりいただけるでしょう。アメリカでヒットしても日本で成功しない商品はたくさんありますし、これまで失敗した商品ジャンルが次も成功しないなら、多くのビジネスはお先真っ暗です。
 
文章の組み立て次第でこのようなカテゴリー適用法が説得力をもってしまうこともあります。しかし、ある商品の成否を見極めたいのなら、このような安直な論理展開は避けるのが賢明です。
 


要因だけではわからない


次に、成功、失敗に影響を与えそうな事柄を、要因列挙法で書き出してみます。

 
 ・読みごこち
 ・端末の価格
 ・電子書籍の品揃え
 ・電子書籍の価格

などが、まず最初に思い付くところでしょうか。
 
当然これらはキンドルの成否に影響を与えます。しかし、それぞれの要因を単独で考えても、わかることは限られます。これらの、どれがどれに影響を与えて、その関係が成功にどう結びつくのかを考えることが、戦略を構築する上ではキーとなるのです。
 
例えば、「なぜ端末の価格を安く設定するのか(できるのか)」、「電子書籍の読みここちがよかったら何が起きるのか」などを考えることが役立つでしょう。
 


メカニズム解明法に挑戦!


さて、上記の要因を元に、メカニズム解明法に挑戦しました。

いかがでしょうか。
電子書籍に特に詳しいわけではなく、わかりやすさを優先して要因の数を限定したため表面的なメカニズムにとどまりますが、見どころはあるように思います。
 
ポイントは「利用者の増加」がアマゾンおよび出版社の利益の源泉でありながら、同時に端末価格と電子書籍価格の安さの結果となっている点です。このような時間展開のある関係を考えて、良い循環を見つけ出せるところがメカニズム解明法の良いところでしょう。
 
また、メカニズムを考えていて思ったのは、「読みごこち」が他にあまり影響を与えないだろうということです。関係性を考えることで、あまり重要でない要因が見えてくることもありそうです。
 


メカニズム解明法を楽しもう!


前回も書いた通り、考えられたメカニズムはただの仮説に過ぎません。そして、その因果関係を証明するのは困難です。戦略を実現させるまでは、このメカニズムを元に(図を見せるかどうかは別にして)関係者を説得して賛同者を増やせるかどうかが、その善し悪しを決めることになります。
 
アマゾンも、「自社の戦略の成功を信じて端末を安価で売ること(失敗したら大損)」を約束して、利用者の増加にリアリティを生み出し、出版社を口説いたのでしょう。それが実っての日本進出だと思います。
 
今回示したメカニズムは決して完成度の高いものではありません。
しかしそれでも、要因列挙法よりもメカニズム解明法で考えた方が戦略を深掘りでき、そしてなにより「楽しい」ことがわかっていただけるように思います。
 
最初は不出来なメカニズムしかできなくて当然です。
それでも、メカニズム解明法にチャレンジすることが、経営戦略構築のセンスを鍛えることになるでしょう。是非、試してみてはいかがでしょうか。

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