因果を考える3つのコツ


この記事の所要時間: 420秒 〜 520秒程度(2388文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
戦略について考えていると、究極のところで「因果とは何か」という問題に行き着きます。原因と結果と言ってしまえばそれまでなのですが、この両者の関係は複雑怪奇で一筋縄では理解できません。因果そのものと言えるメカニズム解明法の矢印も、自信を持って引くことはなかなかできないものです。
 

 ・「できること」と「起きること」の峻別
 ・「動機づけ要因」と「衛生要因」の見極め
 ・「確率の影響」の検討と回避

さて、これらは、因果を考えるときの3つのコツです。「因果とは何か」という深遠かつ壮大なテーマからは程遠いですが、メカニズム解明法を実践する際に少しでも役立つヒントを経験からひねり出しました。
 
今回は、「経営戦略の3つの思考法」を紹介してきた1週間の締めとして、これらのコツを順に説明します。
 

photo credit : harry harris via photopin cc

 


「できること」と「起きること」の峻別

「できること」と「起きること」をわけて考えることは、戦略を立てるときの基本となります。
 
自分や自社が直接「できること」と、その結果として「起きること」を峻別するのです。
たとえば、
 商品の低価格販売 → 顧客増加 → 売上高向上
という戦略上の流れがあるとしましょう。
 
商品を低価格で売り出すことは自社の決定だけで可能です。しかし、顧客を増やすことはどうでしょう。自社が直接行なうことはできません。顧客増加はさまざまな戦術を実行した結果としてもたらされる「起きること」です。上記のような戦略の流れを考えるときには、この両者の違いをはっきり認識して、顧客増加は達成し得ないこともあるとわかった上で考えを進めることが大切なのです。
 
企画書等では、説得力を出すため、結果的に「起きること」を当然の帰結として「すること」のように書くことがあります。例えば、「顧客を増やす」と書いてしまうのです。もちろん、それはそれで企画書づくりのテクニックなのですが、そこには矛盾があります。因果を考えるときには、自分や自社がコントロール可能なものとそうでないものを明確に分けて考えることが必要です。企画書では、他人をその気にさせなくてはいけませんが、つられて自分までその気になってしまっては元も子もありません。
 
それと同時に、自らが「すること」をしてから、実際に結果が「起きる」までの経過時間をイメージすることも求められます。この時間軸が明確でないと、戦術を実行するタイミングが狂ったり、途中の通過点(例えば顧客増加)の成功、失敗の判定を間違えることになってしまうからです。
 


「動機づけ要因」と「衛生要因」の見極め

これは以前の記事(『「不満解消 ≠ 満足向上」に気を付けろ!』)でも書きましたが、人を動機づける要因と、不満を解消して衛生をつくり出す要因はまったく別です。
 
前回(『キンドルをメカニズム解明法で占うと・・・』)のキンドルの例で言えば、「電子書籍の豊富な品揃え」はキンドルの購入を動機づけますが、「満足できる読みごこち」は状況を改善するだけで動機づけにまでは至らないでしょう。
 
一般的に品質改善は売上アップにつながる要因だと考えられますが、そうはならないこともたくさんあります。品質改善で状況は改善されても、「欲しい」と思わせるまでの動機づけにならないことが多いからです。
 
戦略を考えるときには、自社の商品にプラスとなる要因が本当に「動機づけ」を起こすほど強力なのかを厳しく見極めなくてはならないのです。
 


「確率の影響」の検討と回避

しんがりに登場するのは「確率」の話です。
 
成功という結果を導き出すための努力をすべて行なったとしても、実際にその戦略がうまくいくかどうかは確率に支配されます。100%の成功が約束された戦略などはどこにもありません。ビジネスにおいて戦略の良し悪しが結果で評価されるのは仕方ありませんが、成功確率が低い戦略が成功することもあれば、その逆もあるのです。まあ、これを言ってしまえばお終いなのですが、悲しい事実です。
 
確率にあがなうことは不可能でも、何もできないわけではありません。
自分たちの戦略が確率による偶然の影響を受けやすい戦略か、そうでないかを検討することは可能です。
 
戦略を実行した結果、100点満点で100点のこともあれば10点のこともある戦略なのか、100点の可能性は低くても多くの場合70点〜90点ぐらいに収まる戦略なのかを考えるのです。その上で、偶然に支配されやすい戦略を取らないようにします。
 
また、一定比率で起きる偶然により失敗が起きそうな場合は、その手当を事前に考えておくことも有効です。
 


少しでも余分に考えた奴が成功する!?

断片的ですが、これらが自分が因果を考えるときのコツです。
どれも明解なノウハウになっていませんが、これらを少しでも多く考えることが成功の確率を上昇させます。
 
戦略を考える作業には「少しでも余分に考えた奴が成功する」としか言いようのない側面があります。時間さえ掛ければいいものができるわけではないのですが、考えが足りない状態では成功には届きません。熟考に熟考を重ねて、戦略を磨く必要があるのです。
 
今回示したコツは、まさに「余分に考える」際の視点です。これらを使って、自身の戦略を再考してみてはいかがでしょうか。

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