欲しいのはSSD!? マーケティング発想法再び


この記事の所要時間: 410秒 〜 510秒程度(2357文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
先週10月23日(米国時間)、米アップル社がメディアイベントを行ない、いくつかの新製品を発表しました。メディアの注目はiPad miniに集中しているようですが、アップル好きとしてはディスプレイのエッジをわずか5mmにした極薄の新しいiMacに目を奪われます。
 
見掛けの美しさも然ることながら、「やられた!」と思ったのがFusion Driveという新しいストレージです。Fusion Driveは「大容量のハードドライブと高性能のフラッシュストレージを組み合わせた」もので、この2つを組み合わせてハイブリッドにしたところに妙があります。「言われてみれば当たり前」の便利なストレージなのですが、少なくとも佐々木の発想にはありませんでした。
 
今回はこのFusion Driveについて、マーケティング発想法で考えてみることにします。
 

photo credit : ElGekoNegro via photopin cc

 


フラッシュストレージとハードディスクを使いわけ


まずは、Fusion Driveに使われているフラッシュストレージの説明から入ります。
 
従来、パソコン上にあるデータはハードディスクドライブ(HDD)に保存されていました。ハードディスクは安価で大容量(2TBで1万円弱)という特長があり、最近のパソコンに多くの動画や画像を保存できるのはこのドライブのお陰といってもいいでしょう。しかし、このHDDには「遅い」という欠点があります。データを記録する際にディスクを物理的に回転させる必要があるため、データの読み書きに一定の時間が掛かってしまうのです。
 
これに対抗する形で登場したのがフラッシュストレージです。一般的にはSSD(Solid State Drive)と呼ばれることが多いように思います。SSDの特長はとにかく「速い」ことです。自分は普段、ほぼ同時期に買ったHDDが入ったWindowsパソコンとSSDが入ったMacBook Airを併用しているのですが、体感速度は段違いなものがあります。パソコンを立ち上げるとき、データを保存するときなど、あまりの速度の違いに、Windowsパソコンを使うのが嫌になる程です。
 
このようにSSDはとても素晴らしいのですが、価格が高いのが難点です。1万円で買えるのはせいぜい128GBのドライブ。同じ金額で購入できるHDDの容量の10分の1以下です。このため、SSDとHDDを使いわけることを考えるのですが、これはなかなか面倒です。奮発してすべてSSDにするか、諦めてHDDを使い続けるか。この二者択一を迫られることが多いように思います。
 
そこに登場したのが、Fusion Drive。
どうやら、よく使い「速さ」が必要なデータはSSDに、そうでないデータはHDDに、自動で仕分けして保存してくれるようなのです。上記の悩み(?)から開放してくれる、素晴らしいストレージだと思います。
 


消費者が求めるのは、×速さ ◯快適さ


さて、話はマーケティング発想法に移ります。
 
マーケティング発想法とは、マーケティング界のドラッカーことセオドア・レビットが主張する考え方で、「人は製品を買うのではない。製品がもたらすベネフィットに対する期待を買うのである。」という着想のことです。「人は四分の一インチの穴を買うのであって、四分の一インチのドリルを買うのではない。」「女性は化粧品を買うのではない。希望を買っているのである。」などの事例が有名ですが、要は、消費者が求めているものは「購入する商品」自体ではなく、その商品がもたらす効果、便益だという発想です。
 
マーケティングを考える上でこの発想法が極めて重要なことがわかっていても、誰かに指摘されるまでなかなか気付かないのがこの発想法の難しさです。ついつい既存の商品自体が求められていると思い込んでしまうのです。
 
恥ずかしながら、今回も引っ掛かりました。
SSDのあまりの快適さに喜ぶあまり、誰もがSSDを求めるようになるだろうと考えていたのです。もちろん、新たな技術が登場すれば少しでも「速い」ドライブを求めるだろうというレベルのマーケティング発想法はしていたのですが、「快適さ」という視点を見失いました。
 
Fusion Driveは「速さ」を追求する視点では生まれないでしょう。相対的に「遅い」HDDを含んでいるからです。しかし、費用なりの「快適さ」を求めればこの発想にたどり着いてもおかしくありません。「快適さ」を実現するためには、すべてが「速い」必要はないからです。
 
言い換えれば、「快適さ」の視点がなければFusion Driveは開発できません。ここに、マーケティング発想法の重要さを再認識できます。こんなことに気付かないのは自分だけかも知れませんが、Fusion Driveを見て「やられた!」と思ったのはこういう次第です。
 


マーケティング発想法は難しい!


常々、マーケティング発想法でモノを見たいと思っているのですが、なにぶん「こうやればできる」というスキルではなく経験等から身に付くセンスなのでなかなかうまく行きません。
 
手法の価値はわかっていても実践できないのです。
そこで、今週は、マーケティング発想法の事例を考えることで、少しでもセンスアップを目指したいと思います。

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