アップルは光学ドライブを葬り、何を目指す!?


この記事の所要時間: 420秒 〜 520秒程度(2421文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
先日発表されたiMacには、前回紹介したFusion Drive以外にもう一つ大きな特徴があります。その特徴とは、CDやDVDといった光学ドライブが内蔵されていないことです。光学ドライブのないパソコンは、ノートでは既に珍しくないものの、デスクトップではまだまだ少数でしょう。
 
米アップル社のワールドワイドマーケティング担当シニアバイスプレジデント Phil Schillerは、このことについて米TIME誌の取材に以下のように答えています(参考:アップル幹部、新Mac製品で光学式ドライブを廃止した理由を説明|CNET Japan)。

「こうした古い技術はわれわれを引き戻そうとする。われわれの歩みに抵抗する錨なのだ。こうしたものはすでに役目を終えていると思う。競争相手は古い技術を手放すことを恐れているが、われわれはより優れた解決策を見つけ出そうとしている。顧客はわれわれに大きな信頼を寄せてくれている」

 
うっかり「そうなんだ」と頷きそうですが、これでは「古い → いらない」というカテゴリー適用法を使っているだけで、何の説明にもなっていません。しかし、これはメッセージを伝わり易くするためにあえてカテゴリー適用法を使っているだけであって、真の不採用理由は他にあると考えるのが自然でしょう。
 
その真の理由は何なのか?
今回は、この光学メディア不採用の理由について、マーケティング発想法を使って考えてみようと思います。
 

photo credit : nigel@hornchurch via photopin cc

 


初代iMacがフロッピーを亡きものにした


さて、今回の光学ドライブ不採用で思い出すのは、はじめてiMacが発売されたときのことです。
 
iMacが登場した1998年当時、まだまだ誰もがフロッピーディスクを使っていました。しかし、スティーブ・ジョブズが自信満々に発表した初代iMacにはフロッピーディスクドライブ(FDD)が付いていなかったのです。先端性を示したいのはわかるものの、「フロッピーのないパソコンをどう使うの?」という疑問は、自分も含めたくさんの人が感じたようです。
 
でも、発売されたiMacは大ヒットしました。
内蔵されているのはCD-ROMドライブだけ(書き込みできない)。それでも、どうにかだましだまし使っているうちに、ほとんどの利用者はフロッピーディスクなしのパソコンで困らないようになりました。
 
元々、個人同士のデータのやり取りはそこまで多くなかったことに加えて、急速にメール活用が浸透したことでフロッピーを使わないでも済むようになったのでしょう。そして、この現象(?)を通じて、多くの人がフロッピーディスク自体にニーズはなく、求められているベネフィットは情報伝達だったたことに気付かされたのです。
 
今ではフロッピーディスクドライブが付いたパソコンを見かけることはほとんどありませんが、このドライブを亡きものにしたのは初代iMacです。そして、そこに「実際に求められているものはフロッピーではなく、情報伝達というベネフィットだ」というマーケティング発想法の構図を見ることができます。
 


光学ドライブは「情報の同期と共有」に向かない


一見、今回の動きもこれと同じ構図に映ります。
たしかにそういう一面もあるでしょう。しかし、それだけではないと考えることもできます。CDやDVDなどの光学ドライブにニーズがないのは自明として、代わりとなるベネフィットは情報の伝達じゃないように思うのです。そして、それこそがアップルの真の狙い、戦略だという考え方です。
 
最近、以前と較べてデジタル機器が急激に多様化しています。スマートフォンやタブレット端末の普及に象徴される動きです。その結果、消費者が求める真のベネフィットは「情報の伝達」から「情報の同期と共有」に移ってきています。さまざまな端末で、いつでもどこでも同じ情報にアクセスできることが価値あるベネフィットなのです。どの端末を使っているか感じさせないほどの環境が求められています。
 
DropBoxやEvernoteはこのベネフィットに対応しているので躍進していると考えることができます。一方で、CDやDVDといった光学ドライブはどうでしょう。データをハードディスクやフラッシュストレージにまるまるコピーすれば別ですが、ドライブにメディアを入れ続けていない限りデータを利用できないという致命的なネックがあります。その意味で「情報の同期と共有」に向きません。
 
CDやDVDといった光学ドライブをなくすことが、「情報の同期と共有」というベネフィットを加速度的に増加させる。これがアップルの狙いだと考えられます。
 


マーケティング発想法で真の狙いを探れ!


以上が、米アップル社がiMacで光学ドライブを不採用にしたことの佐々木なりの解釈です。光学ドライブは、これからより求められるようになる「情報の同期と共有」というベネフィットとの相性が悪いため、先んじて不採用にしたという考えです。
 
正直、この見立てが当たっているかどうかは重要ではありません。
企業の戦略を考えるときに、眼前にあるニーズではなく、その背景となるベネフィットを考えることが欠かせないことに気づいていただければ、この記事は成功です。
 
マーケティング発想法は使い方が非常に難しいですが、うまくつかえばこれらの分析をするときに強力なツールとなることをわかって欲しかったのです。

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