米大統領選挙の妙 二番手候補が当選する方法


この記事の所要時間: 420秒 〜 520秒程度(2410文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
アメリカ大統領選挙は4年に一度、11月第1月曜日の翌日が投票日です。
今年は明後日、11月6日に投票が行なわれます。ほぼ1年間にわたる選挙戦の結果が、この日に明らかになるのです。
 
外から見る限り、アメリカ大統領選挙はある種のお祭りのように見えます。
民主党、共和党の支持者が両大統領候補を熱狂的に応援する姿には、直接選挙(厳密には選挙人投票を経ますが、民意がほぼそのまま反映されるので)ということもあり、日本の選挙とは違った盛り上がりがあるようです。
 
あの盛り上がりを見ていると、そこにアメリカ大統領の強さの源泉を感じます。
相手からの攻撃をかわし、国民の支持を集めるその過程を経たことが、大統領になってからの自信や権威、そして行動につながるように思えるのです。かつて将棋の羽生善治三冠は、「勝ち負けには、もちろんこだわるんですが、大切なのは過程です。結果だけなら、ジャンケンでいい」と言ったそうです。将棋と大統領選挙は大きく違いますが、この勝敗決定までの過程に価値があることに変わりはないように思います。
 
大統領選挙は、国民が熱狂するビッグイベントという側面がある一方で、当然ながらさまざまな手練手管が繰り広げられる戦いでもあります。アメリカ大統領という大きな権力を持つ座を手に入れるために、ありとあらゆる手段が考えられ、実行されるのです。
 
その中には、アンケートやデータ活用と関連するテクニックもあります。今回はそのいくつかを紹介しましょう。
 

photo credit : Rusty Blazenhoff via photopin cc

 


アンケートのふりをしてネガティブ情報?

1960年、ジョン・F・ケネディとリチャード・ニクソンが激しい大統領選挙を戦いました。この選挙では、アンケート調査が悪用されたという話を読んだことがあります。
 
ネガティブキャンペーンで相手のことを直接的に誹謗中傷する代わりに、その誹謗中傷の内容を提示して「そのことを知っていましたか」というアンケートを取ったのです。今回、この話を読んだ文献が見付からず詳しいことはわからないのですが、「さもありなん」という手口のように思います。
 
片方の陣営が他方の候補についてのネガティブ情報を流せば、それを受けた選挙民の多くは「敵陣の言っていること」という注釈付きでその情報を捉えるでしょう。効果は限定的です。これに対し、中立な調査機関を装っていかにも事実のような言い方で誹謗中傷の内容を伝え、「知っていましたか」と質問すれば、選挙民はその情報を真実だと信じ易いという仕掛けです。こちらの方が効果が大きいことは容易に想像が付きます。
 
この方法には倫理的な問題を感じますが、人間の心理をうまく利用した思わず賞賛したくなるほどの高等テクニックとも言えそうです。
 


二番手候補が当選する方法

アメリカ大統領選挙は、ご存知の通り民主党、共和党の二大政党を中心に繰り広げられます。しかし、日本での報道にはほとんど登場しませんが、毎回のように第三、第四の候補が立候補しています。そして、ここに二番手の候補が当選する魔法のトリックがあるのです。
 
ある時、A党の支持率が51%、B党の支持率が49%だったとしましょう。
支持率が投票行動にそのまま結びつくのなら、A党の候補者の勝利は確実です。B党の支持拡大が見込めない場合どうすればいいでしょうか。絶体絶命のようですが、方法はあります。その方法とは、A党に極めて政策が近い第三の候補・C党を選挙戦に参加させることです。C党がA党から3%分の支持を奪い取れば、A党48%、B党49%、C党3%となり、B党の候補者が当選するのです。
 
言われてみれば当たり前のやり方なのですが、正攻法で挑もうと考えていては、なかなか思いつかない方法です。アメリカではB党がC党に選挙資金等を提供したこともあるそうです(参考:『選挙のパラドクス』ウィリアム・パウンドストーン/青土社)。正に、勝つためには手段を選ばない熾烈な戦いと言えるでしょう。
 
A党とそれに政策が似通ったC党の支持が合計で過半数を超えていても、少数派の筈のB党から当選者が出ることは起こり得ます。民意が正しく反映されていないように思いますが、一番得票を集めた人を当選者とする現在の選挙制度はそういうルールなのです。
 


戦いのルールを熟知することが差別化になる

さて、『選挙のパラドクス』では、より民意が反映されやすい選挙方法等も考察されていますが、その採用の可能性は低いように思います。採用されるとしても時間が掛かるでしょう。そして、残念ながら自分の興味はここにはありません。
 
現実的に考えた場合、実際の世の中にはさまざまな欠陥のある制度が存在していて、なかなか改まらないその不出来なルールの中でいかに戦うかが重要になります。制度の欠陥を指摘することよりも、そのルールにおいていかに勝つかを考えることが大切なのです。
 
ビジネスにおいても、ルールを充分に理解して勝つ方法を見つけることが大切です。あまり汚いことをすると後で返り討ちにあう可能性があるとはいえ、時には勝つために手段を選ばないことも必要になります。
 
どんな競争を戦うのであれ、そこにあるルールを熟知することがひとつの差別化になるでしょう。ルールを知らずに戦っても勝ち目はありません。表面的な戦いに目を奪われることなく、ルールの理解につとめる戦略は勝利への近道となります。

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