データ活用のジレンマ 正しさかおもしろさか


この記事の所要時間: 40秒 〜 50秒程度(2269文字)


中小企業診断士の佐々木孝です。
 
アメリカの大統領選挙はバラク・オバマの勝利で決着しました。
先行する民主党・オバマを共和党・ロムニーが猛烈に追い上げたものの結局届かなかったというところでしょうか。
 
なぜ「先行する」、「追い上げた」などがわかるかといえば、各種機関が行なった調査結果が大量に公表されているからです。アメリカ大統領選挙は国を挙げての一大イベントですから、さまざまな調査が数多く行なわれています。ニュースからは細かな調査設計などはわかりませんが、手法の面でも精度の面でも自由闊達、玉石混淆の調査活動が繰り広げられているようです。
 
さて、大統領選挙関連でTechCrunchにおもしろい記事を見付けました。

大統領選でニューヨークタイムズのネイト・シルバーの数理モデル予測が全50州で的中 ― 政治専門家はもはや不要?
New York Timesの選挙予測専門家、ネイト・シルバーは昨夜、大統領選の勝敗を全50州で的中させた。 その一方で、いわゆる政治専門家たちの予想はほとんどが外れた。中には笑うしかないような外れ方をした者もいる。〔略〕

 
長い記事なのですべては引用しませんが、ポイントは以下の3つです。
 ●今回、数理モデルによる予測は政治専門家の予想より正確だった。
 ●数理モデルは難解。正確で安定した予測は退屈なため、テレビ向きではない。
 ●選挙キャンペーンが選挙結果に与える影響は小さいことがわかった。早い段階で選挙
  結果が予測できるようになると、党派的な議論や選挙予測が盛り上がらなくなる。

 
これを読んで不思議に思う人も多いでしょう。
選挙の結果を予測しているのに、正しい予測はあまり歓迎されないのです。マーケティングにおいて「良い製品ならば売れる」が幻想なのは常識ですが、データ活用でも同じことが成り立ちます。データを活用する側が求めている結果を提供しなくては、たとえ有効なデータをつくっても受け入れられないのです。
 
データ活用をするとき、ここにジレンマが生じます。
「正しさ」を取るか、「おもしろさ」を取るかです。
今回は、このジレンマについて少し書いてみましょう。
 

photo credit : ThomasThomas via photopin cc

 


おもしろければ何でもいい?


データ活用のアウトプットはおもしろくなくてはいけません。
 
データから重要な事実がわかったとしても、それを野面で伝えてはただの数字の羅列となり、拒否反応が起き兼ねないからです。これを避けるために、データという素材を解釈することで情報に昇華させ、それに手練手管でデコレーションを加えて強いメッセージにします。その資料なり報告書なりを見た人の目を惹くよう、おもしろくするわけです。データは使われてこそ価値が出ますから、これは当然の作業と言えるでしょう。
 
しかし、あまりに「おもしろさ」ばかりを求めると、データからはわからないようなことまで盛り込んだり、ストーリーを派手にするために無理な解釈を潜ませたりすることになります。そして、解釈の部分は「ここまでが正しく、ここからが間違い」とハッキリしたものではないので、ここがジレンマになるわけです。
 
繰り返しになりますが、データ活用のアウトプットはおもしろくなくてはいけません。とはいえ、おもしろければ何でもいいというものでもありません。そこにジレンマが生じるわけですが、この部分こそがデータ活用を行なう人間の腕の見せどころです。「正しさ」と「おもしろさ」を両立させるべく、研鑽を重ねるしかないようです。
 


わかりやすいデータ活用には要注意


この「正しさ」と「おもしろさ」の迷いは、経験によりいつか軽減するものだと思っていたのですが、そんな簡単なものではありませんでした。ジレンマを抱えていること自体に慣れは出てくるので少しは楽になりますが、ジレンマ自体は深まります。何ごとも経験が解決するとは限らないのです。
 
その一方で、このジレンマにぶちあたらない人がいます。
どんな人かと言えば、自分自身の考えや解釈に強い自信がある人、「正しさ」をないがしろにしてでも「おもしろさ」を出すのが仕事だと割り切っている人、そもそもこのジレンマに気付かない人などさまざまです。
 
彼ら彼女らのつくるレポートは迷いが少なく、わかりやすい結論が導かれることが多いため、重用されます。それを否定してもしょうがないのですが、必要以上にわかりやすいデータ活用には注意をした方がいいでしょう。きれいな結論は遠くから見ている分にはいいですが、それを使って何かをするには危険が大き過ぎます。
 


データ活用は職人芸


このジレンマの含めて、つくづくデータ活用は職人芸だと思います。
 
統計学やデータ分析の専門家がうまくデータ活用をできるかというと、そうとは限らないのです。データを活用する側の要求に合わせつつ、間違った道にひきこまないために落としどころを探る。この技術は、まさにスキルではなくセンスであり、知識でどうにかなるようなものではありません。
 
経験を積むことで、更にこのセンスを磨きたいものです。

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