報道各社で政党支持率が異なる理由


この記事の所要時間: 520秒 〜 620秒程度(2958文字)


先日、読売新聞に各社世論調査、「政党名読み上げ」で結果に差という記事があった。
 
報道各社の世論調査で、①政党支持率(正確には「比例選で投票したい政党」の比率)に違いがあること、②質問方法(特に「政党名読み上げ」)に違いがあることを指摘し、質問方法の違いが政党支持率の違いの原因だとしている。
 
この記事、正直言って噴飯物だ。
両者の因果関係はただの推測に過ぎないし、政党支持率の結果に影響を及ぼす他の要因をまったく考慮していない。なぜ、こんな論理構成のあまい記事が掲載されるのか不思議にさえ思う。
 
さて、新聞の愚かさや間違いを指摘して喜ぶ趣味はない。
しかし、アンケート調査に詳しくない人がこれをそのまま信じてしまうのは癪に障る。そこで今回は、「なぜ政党支持率が報道各社の世論調査で異なるのか」を解説する。
 

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質問方法による違いは確かにある


世論調査の結果が報道各社で異なる理由の一つは、読売新聞も指摘する通り質問方法による違いだ。
 
記事にも書いてあるように、政党名を読み上げて回答を求める読売新聞や共同通信の方法(助成想起)と、政党名を読み上げずに回答してもらう朝日新聞の方法(純粋想起)で結果が異なると考えるのは一般的だし、質問文の違いや全体の質問の構成・並び順も結果に影響する。
 
特に質問文の影響は大きい。
例えば、
 ●どの政党に投票しますか?
 ●どの政党に投票したいですか?
 ●どの政党に投票する予定ですか?

というような微妙な違いでも調査結果は変わるものだ。確定的な質問文にすればするほど対象者の回答は慎重になり、「まだ決まってない」の類が多くなるだろう。「明日が投票日なら」などの注釈をつける場合もあり、これも結果を左右する。
 
他にも、政党名を読み上げ順をどのようにコントロールするか(ランダムにするのが理想だが、そうすると回答者が混乱する)、どの程度の速度で読み上げるか(早いと聞き取り難く、遅いと最初の方の選択肢を忘れる)、回答者からの質問(例えば「◯◯さんが党首なのは何党?」)にどう対応するかなどによっても政党支持率は変わってくる。極端なことを言えば、大学の試験期間などに調査をすると調査員アルバイトの質が変わり、それが調査のレベルを下げて結果に影響を及ぼし兼ねない。
 
調査を実施する側は、このように調査結果に悪い影響を与える要因を広く想定して、それらを少しでも取り除こうとする。しかし、そのすべてをクリアすることはなかなかできない。良心ある調査担当は最善を尽くすものの、予算、時間の制約があるからだ。だからこそ、軽々しく「政党名読み上げの影響」などと書いてあるのに腹を立てることになる。
 
加えて、質問方法が結果に大きく影響を与える質問とそうでない質問があることにも注意が必要だ。性別や年齢といった「事実」についての質問は、当然ながら質問方法によるブレがほとんどない。一方で、商品イメージなどの「意識」の質問は大きな影響が出る。この記事は、政党支持率は「意識」に近いものと捉えていることになる。選挙がイメージ戦の様相を示しているのは間違いないものの、ここにも疑問は残る。
 


調査対象者による違いの方が・・・


質問方法が調査結果に影響を与えるという指摘はあながち間違っていないが、この記事は調査結果に違いを与えるもう一つの大きな要因を見落としている。
 
それは、調査対象者による違いだ。
もちろん、各社とも何らかのやり方でランダムサンプリングを目指してるのだろうが、その方法には違いがあって当然だ。電話番号はランダムで発生させたとしても、そのつながった電話番号の誰に調査をするのか、不在の場合に再度の電話を何回するのか、調査を何時から何時まで行なうのかで結果に違いが出る。
 
更に、調査対象者にはアンケートに協力しない人も多い。
この拒否の比率が違えば、これも結果にブレを生じさせることになる。拒否率は調査員の技量によって変わり、拒否率が下がればなかなか調査に協力しないような人の声を集められることになる。その人たちの政党支持率に何らかの特徴があれば、調査結果が変わるのだ。
 
また、調査する報道機関によって拒否する層が違う可能性も大きい。自分が好む報道機関のアンケートにだけ協力する人がいるのだ。「◯◯新聞です」と名乗って調査に答えてくれる人と、「××通信です」と名乗って調査に答えてくれる人に違いがあるのは想像に難くないだろう。
 
自分の経験から言えば、質問方法の違いよりも調査対象者の違いの方が結果に大きな影響を与える。残念ながら証明できるような事柄ではないが、質問方法の違いだけしか考慮せず、それを支持率相違の原因とする読売新聞のロジックがいい加減なのは間違いない。
 


補正による違いにも要注意


もう一つ考えられるのが、補正による違いの可能性だ。
 
普通に電話調査を行なえば、多くの場合、人口構成よりも若者の比率が少なくなる。これを人口構成比に合わせるように比重を変えて集計することは、何らおかしなことではない。ただ、これはどのような層わけで集計するかによって結果に差が出る。これも、結果の違いの要因になる可能性がある。
 
少し話はそれるが、各選挙区の当落予想をする場合はこの補正が難しい。
なぜなら、「一般的に◯◯党支持者は支持政党を隠す」、「我が社の調査では、◯◯党が高く出る」などの傾向があるため、生の調査結果で当落を予想してもあたらないのだ。このとき、前回のアンケート結果と前回の得票数を較べることで、補正の方法を決めるしかない。しかしながら、今回のような政党の離合集散、新党乱立があってはこの補正がうまくできない。今回、選挙区ごとの当落予想は当たりにくいだろう。
 


たかが調査、されど調査


さて、ここまで調査結果に影響を与える要因をいくつか紹介した。
「で、どこの調査結果が信頼できるの?」という疑問もあるだろうが、アンケート調査に回答する人と実際に選挙に行く人の違いもあり、どの調査結果が正しく、どの調査結果が正しくないという判定は難しい。どれもある程度正しいだろうが、どれもある程度間違っている。その意味で「たかが調査、されど調査」である。
 
完璧なアンケート調査などないのは当然だが、だからと言って、いい加減な調査を行なってその結果を大々的に発表していいことにはならない。しかし、最近の調査を眺めている限り、かなり怪しいものも混じっている。
 
「調査に関するリテラシーを高めて、報道各社の調査結果を見較べよう!」と言いたいところだが、これは単なる理想論で実現はなかなか難しい。
残念ながら、「調査結果をあまり真に受けない方がいい」が結論となる。

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