ズバリあたる選挙予測も夢じゃない?


この記事の所要時間: 30秒 〜 40秒程度(1728文字)


アメリカにネイト・シルバーという選挙予測の専門家がいる。
彼のつくった数理モデルによる予測は精度が高く、今回の大統領選挙では全50州の結果を的中させた。前回2008年の選挙でも50州中49州の勝敗を当てたというのだから、まぐれではないだろう。
 
では、なぜ彼のモデルがよく当たるのか?
今回は、TechCrunchの記事(参考:大統領選でニューヨークタイムズのネイト・シルバーの数理モデル予測が全50州で的中―政治専門家はもはや不要?)を元に、これを説明してみることにする。
 

photo credit : Alan Cleaver via photopin cc

 


各種世論調査の結果がインプットに!


ネイト・シルバーの選挙予測の特長はインプットにある。
彼のモデルは、独自に行なったアンケート調査の結果、政治専門家の意見、取材に基づく推測ではなく、各種世論調査の結果自体をインプットにしているのだ。A社の調査結果、B社の調査結果、・・・を元に、それらをモデルを使って合成することで正確な予測を導いている。
 
1社1社の調査結果には、前回の記事(参考:報道各社で政党支持率が異なる理由)でも書いたように、何らかの傾向があると考えられる。しかし、それらの結果を集めてうまく調整すれば、いくつもの傾向を相殺して正しい結論に近付くことができるだろう。ネイト・シルバーのアプローチは、要はこういう理屈で成り立っている。そして、このモデルによる調整がかなりうまいため、抜群の正確さを実現させることができる。
 
具体的には、各社調査の信頼度の違いや傾向の違い(◯◯党が高い結果になり易いなど)を勘案することになる。もちろん、実際にはかなり複雑なモデルを構築して解いている筈だが、そこまで理解する必要はない。インプットの違いと予測を当てるための理屈さえわかれば、この方法が他の方法よりも当たり易い理由は納得していただけるだろう。
 


日本の選挙でも応用可能?


日本でも各種の選挙予測が公開されている。
データをしっかり追えば◯◯社の結果は自民党が上振れする、××社の予測は信頼度が低いなどの傾向もわかるに違いない。そうやってデータを積み上げていけば、同様のモデルをつくることで精度の高い選挙予測をできるようにも思える。
 
しかし、一つ大きな問題がある。
日本の選挙予測の多くは、政治専門家の意見や取材に基づく推測が加味されているのだ。アンケートなどによる調査結果は、出来の良し悪しはあるとはいえ、ある程度は客観的なものだ。これに対して、専門家の意見や取材に基づく推測などというものは、極めて主観的なものに過ぎない。調査結果と較べれば根拠に乏しいところがある。これらはそのときどきのブレが大きいと考えられ、それがインプットの質の低さを招くことになる。
 
これに加えて、政党の離合集散、不安定な調査設計、選挙制度の煩雑さなどもあるため、日本で同じことをやってもアメリカほどの精度では当たらないだろう。ズバリ当たる選挙予測は日本では難しそうだ。
 


選挙予測はある種の娯楽


選挙は、実際に投票が行なわれれば程なく結果が出る。
結果が出た後に「事前の調査ではこんなはずじゃなかった」と言っても、当然ながら結果に影響を与えることはない。
 
そう考えると、「なぜ選挙結果を予測するのか」が問題だ。
特に選挙直前の調査などは、1週間か2週間も待てば正しい結果がわかるのに、たくさんのお金を掛けてまで調査を行なうのはなぜかということになる。それも、手に入るのはよりによって不正確な結果なのだ。
 
それでも選挙結果を予測する意味があるとすれば、それはある種の娯楽として位置付けだろう。報道各社が新聞紙面や放送時間を埋めるため、有権者が話の種にするために、調査が行なわれているという解釈だ。そもそも、正しい選挙予測を望むのが間違っているのかも知れない。

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