いいね!のインフレーションに見る憂鬱


この記事の所要時間: 340秒 〜 440秒程度(2114文字)


フェイスブックの「いいね!」の73%は“建前”いいね!らしい。
野村総合研究所の調査結果で、内訳を見ると“見たよ”いいね!が30%、“お返し”いいね!が19%。果ては、“仕方なく”いいね!が10%、“理由なし”いいね!が14%となり、この合計が“本気”いいね!の27%と大差ないボリュームになる。(参考:『ソーシャルメディアはイケてるのか』野村総合研究所
 
GIGAZINEには、Facebook上のいいね!をまとめて一括でクリックする「どうでもいいね!」という記事があった。Google Chromeの拡張機能で、これをインストールするとワンクリックで画面上の「いいね!」をだいたい全部クリックしてくれるらしい。“見たよ”いいね!には持ってこいのツールだろう。
 
誰もが気づいている筈だ。
最近のインターネットは、どうでもいいくらいたくさんの「いいね!」で溢れ返っている。いいね!の大安売り、「いいね!」のインフレーションだ。1日に1回だけいいね!を押す人のいいね!と、1日に100回もいいね!を押す人のいいね!では価値が大きく違いそうなものだが、そんなことはお構いなし。これだけインフレーションが起きてしまっては、いくらいいね!を集めたところで大した価値もないだろうに、いいね!の数に一喜一憂している輩もいる。
 
まあ、人が楽しんでいるのをとやかく言っても仕方ない。
それでも、フェイスブックを支える重要な要素の一つである「いいね!」がこのように形骸化してしまっては、このサービスはどこに向かうのだろうと心配になる。
 

photo credit : FindYourSearch via photopin cc

photo credit : FindYourSearch via photopin cc

 


フェイスブックはおもしろくない

栄枯盛衰の激しいインターネット上のサービスを見ていて気づくのは、おもしろいのはサービスではなくユーザーだということだ。特定のサービスが提供する独自の機能のお陰で、あるユーザーが特におもしろくなることはあったとしても、サービス自体がおもしろいわけではない。普段おもしろくない人がフェイスブックをはじめたからと言って、急におもしろくなるわけもない。当たり前のことだ。
 
その意味で言って、フェイスブックはおもしろくない。
インターネット上で個人が交流するシステムとして、ニフティーのフォーラム、大小さまざまな掲示板、各種ブログサービス、数々のSNSなどが一定の役割を果たしてきたが、どれも同じようなものだ。気の利いた新しいサービスができると、気の利いた人が集まるのでおもしろい。しかし、そのうち訳のわからない人が増えてきて詰まらなくなり、気の利いたい人は更に新しいサービスに移っていく。何年もこれを繰り返しているだけのように見える。
 
インターネット上のサービスのおもしろさは、そのユーザー層に依存しているのではないだろうか。
 


「誰でも使い易く」が問題に!

インターネット上にとんがったおもしろいサービスができると、次に必要になるのは「誰でも使い易く」することだ。
 
楽しむためだけにサイトをつくっているなら「誰でも」は必要ないが、ビジネスとして成功するためには通らなくてはならない関門になる。一歩先、半歩先を行く着想でサービスをつくり、一部の人に受けたとしても、この「誰でも」を失敗すれば注ぎ込んだ投資を回収できない。少し前のはやり言葉で言えば、キャズムを超えられるかという話だ。
 
そして多くの場合、この過程を経ることでサービスは詰まらなくなる。
サービス自体が変わってしまうことと、ユーザーが変わってしまうことで元の姿とはまったく違ったものになるからだ。深夜番組がゴールデンに進出すると詰まらなくなるのとほとんど同じ理屈と言えば、わかり易いだろう。
 


フェイスブックの憂鬱

フェイスブックは「誰でも使い易く」なり、それどころか「いいね!」にインフレーションが起きているほどの活況になっている。さて、そこに残っているユーザーはおもしろい人たちだろうか。
 
クローズドな部分もあるシステムなのでおもしろい人たちの集団も残っているかも知れない。しかし、普通の人が足を踏み入れても、集まってくるのは自分が普段付き合っているような人たちばかりだろう。この場合、バッサリといってしまえば、“建前”いいね!があふれるような「ぬるい」関係ができ上がるのが関の山だ。もちろん、それが心地良い人も多いだろうが、個人としてはあまり興味を持てない。将来性もないように思う。こういう見方をすると、そう遠くない未来、フェイスブックに落日が訪れるように思えてならない。
 
しかし、それまでには何年かの期間が流れることだろう。
その間、“建前”いいね!に付き合うとなったらかなり憂鬱な話だ。フェイスブックに深入りしていない一人として、そんなことを思った。

  1. コメントはまだありません。

  1. トラックバックはまだありません。

This blog is kept spam free by WP-SpamFree.