『平清盛』の低視聴率は松山ケンイチのせい?


この記事の所要時間: 410秒 〜 510秒程度(2339文字)


2012年のNHK大河ドラマ『平清盛』の平均視聴率は関東地区で12.0%となり、史上最低を記録した(参考:平清盛:最終回視聴率9.5% 期間平均は史上最低12.0%|毎日新聞)。これまで最低だった『花の乱』(14.1%/1994年)を2ポイント以上も下回っているのだから、かなりの低視聴率だ。
 
テレビドラマが低視聴率に終わると犯人探しがはじまる。
そして多くの場合、低視聴率は主演の男優・女優のせいとなる。もちろん、同じ男優・女優を使っても視聴率は高かったり低かったりするのだから、低視聴率が役者のせいばかりではないのは自明だ。しかしながら、興味本位の犯人探しでは主演の問題になる。
 
では、なぜそういう理由付けになってしまうのだろうか。
この背景には、ビジネスでもよく見られる人間の思考の癖が垣間見られる。
 

photo credit : blentley via photopin cc

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本当の原因はわからなくても、もっともらしい原因が必要に


人はある結果が生じたとき、その原因を無理にでも探し出す。
これが、おかしな犯人探しを繰り返させる人間の癖だ。
 
確かに、物ごとの原因はわかった方がいい。
原因がわからなければ、成功を次につなげることができないし、失敗を繰り返さないための対処もできないからだ。ただし、状況が複雑に絡み合っていて原因の特定が難しいときでもそれを求めるところに問題がある。
 
『平清盛』の視聴率は低かった。これは間違いない。
しかし、その原因は主役の他にもいろいろ考えられる。例えば、共演者、脚本、演出、平清盛という題材、放送枠、裏番組の環境、広報・宣伝など挙げていけばキリがない。これらのどれもが視聴率に影響を与えているが、どれもが唯一の原因ではない。これの影響が大きそう、小さそうという推測があったとしても、それはあくまで印象論だ。
 
そして、これらの要因はいずれも独立して存在しているわけではない。
主役と共演者がそれぞれ単独で見れば素晴らしかったとしても、その組み合わせが視聴者の目に奇異に映れば視聴率に悪い影響を与える。すべての要因を最高の状態にしても、最高の成果が得られるとは限らない。このような複雑な状況について因果を解明しようというのが多変量解析のアプローチだが、ドラマでは変数が多くサンプルが少ないので成立しないだろう。
 
このように、何らかの結果がもたらされた原因は判然としない場合も多い。
それでも人は原因を求める。それもできる限りシンプルな唯一無二の答えが欲される。その結果、「もっともらしい」理由が、さも本当の原因=真因であるかのうように語られることになる。もっともらしければもっともらしいほど多くの人が同意するが、多くの人が同意したからといって何も本当の原因に近付いた訳ではない。ある結果の原因がわからないと、人は落ち着かない心持ちになるため、本当でなくてももっともらしい原因が必要になる。それに応えるからこそ、もっともらしい原因が幅を利かすことになるだけだ。
 
世の中には、真因とは違うもっともらしい原因があふれている。
 


原因はおもしろければいい?


ある結果が生じる。その原因と考えられるものを列挙する。
その後、その中からかりそめの真因が選ばれることになるのだが、それはどんなタイプの原因だろうか。
 
上では「もっともらしい」を基準としたが、そのほかにも「説得力がある」「おもしろい」「わかり易い」「人に伝え易い」などが考えられる。そして、選考基準は原因を特定する主体、追求する理由によって変わってくる。口コミやインターネットなどでは「おもしろい」が重要なようだ。だからこそ、『平清盛』が低視聴率だった原因は松山ケンイチのせいになる。
 
繰り返しになるが、この際、その原因が本当の原因に近いかどうかはあまり関係ない。
そのような理由付けは危険を伴うが、そんなことお構いなしだ。どんな根拠の怪しい原因であれ、人は原因がはっきりすることを好む。
 


原因を疑おう!


このような犯人探しが、他愛もない事柄についての茶飲み話で行なわれている分には何の問題もない。むしろ、お金のかからない庶民の娯楽として歓迎されるべきだろう。
 
しかし、犯人探しが行なわれるのは茶飲み話に限ったことではない。
ビジネスの場でも年中行なわれている。ビジネスでは成功や失敗の原因を追求することが必要だから当然だが、そこで行なわれている真因探しは『平清盛』の低視聴率の原因探しと大差がないことも多い。
 
ビジネスの場で求められるのは、「説得力がある」原因だ。
それもターゲットとする人がいて、その人が納得しそうな原因が求められる。要は、上司やクライアントが「うん」と頷くような原因をつくることになる。
 
ビジネスマンとして生きていく限り、「説得力がある」原因を見付け出すスキルは必要になる。しかし、その原因が本当の原因と必ずしも一致しないことを知らないと、自分がつくった虚構に足をすくわれる。実際は大して重要でもない原因をクリアするために無駄な努力をするはめに陥るのだ。
 
ビジネスで成功するには、本当でなくてもっともらしい原因にだまされないことが必要だ。そして、世間に流通している原因を疑うことが、商売の芽になることは多い。
 
原因を疑うことは常に有効だ。

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