ピンクのクラウンはどこに向かう?


この記事の所要時間: 320秒 〜 420秒程度(1929文字)


昨年末、トヨタから14代目となる新しいクラウンが発表された。
「新型クラウンは、デザインに徹底的にこだわった」との言葉通り、今までのクラウンとは趣きの違うかなりインパクトのあるデザインだ。フロント部分の大きな王冠も特徴的だが、それより何よりあのピンクのクラウンに驚かされた人も多かっただろう(参考:王冠大きく、デザイン2種類 全面改良14代目クラウン|朝日新聞)。
 
このインパクト抜群の新しいクラウンは、多くの注目を集めている。
他の新車との比較は難しいものの、ニュースサイトの取り上げ方、Googleでの検索数の推移を見る限り、話題性があるのは間違いないようだ。
 
新商品を発売するとき、話題づくりは欠かせない。
商品を買ってもらうためには、まず注意や関心を集めることが必要だからだ。その意味で今回の新型クラウンの立ち上げは成功と言えよう。
 
しかし、話題づくりには「良い話題づくり」と「悪い話題づくり」がある。
そして今回の新型クラウンの話題づくりは後者、すなわち「悪い話題づくり」のように思えてならない。「ピンクのクラウンはどこに向かう?」と、その迷走ぶりを心配するのはその所為だ。
 

photo credit : #patrick via photopin cc

photo credit : #patrick via photopin cc

 


ピンクは価値なのか?

話題づくりの良し悪しは、消費者の欲求を掻き立て、実際の購買行動につなげられるかで決まる。もちろん、まったく認知されていない新商品の場合は話題づくり自体が目的の場合もあるが、クラウンに限ってそれはないだろう。キャンペーンで新型クラウンが話題になったとしても、それで車が売れなければ価値はない。話題づくりは手段であり、目的ではないのだ。
 
良い話題づくりに大切なのは、商品コンセプトの核を伝えることだ。
その商品を手に入れることによって、どのような価値やベネフィットを享受できるかがわからなくては、消費者はなかなかモノを買おうとしない。特に高額品では、消費者が自分自身を納得させるためにも、他社や既存の商品と違ったベネフィットが必要になる。例えば、「新しいパソコンで作業効率が向上」、「このエアコンなら省エネ効果もばっちり」といった類の効果が求められるのだ。
 
さて、新型クラウンで得られるベネフィットは何だろうか。
クラウンのホームページには「今を変えるために生まれた。」、「高級車の新しい常識をつくれ。」などの言葉が踊っている。クラウンのテレビCMで使われている「ReBORN」というフレーズを考えてみても、「新しさ」を強調したいのは間違いないだろう。
 
しかし、「新しさ」自体に価値はない。
新しくなったことで、どこがどう変わり、それによってどんなベネフィットが生まれたのかを示さなければ、消費者は動かないだろう。「新しさ」は確かに魅力的な要素だが、それだけでは具体性が乏しく、購買行動につながり難いのだ。
 
そして、「新しさ」の象徴がピンクのクラウンとなる。
しかし、ピンクに何の価値があるのだろうか。今までのクラウンにはない新しいイメージなのはわかるが、そこにベネフィットがともなっていなくては消費者の反応は限定的となる。注目、関心は集めても、行動には結びつかない。これでは、「悪い話題づくり」の典型だ。
 


奇を衒うよりも原点回帰

歴史のある商品が行き詰まってくると、これまでのその商品との差別化が必要になる。
 
ここで問題となるのは差別化の方向性だ。
よくある勘違いは、ただただ既存商品と「違う」ことを目指すパターンだ。本来、差別化とは「差別化された価値」なのに、価値を無視して奇を衒っただけの商品を開発することになる。想像に難くないだろうが、このパターンは不幸な結果を招くことが多い。
 
繰り返しになるが、差別化の要諦は「価値」だ。
価値をおざなりに差別化しても、大きな成果は望めない。歴史ある商品を差別化するならば、奇を衒うよりも原点回帰を目指した方がいいだろう。数多くの商品が発売される現代社会で目立つのは難しいかも知れないが、拠り所となる「価値」はしっかり存在しているからだ。
 
クラウンは固定ファンも多いので、いくらピンクのクラウンを発売しても大はずしはしないだろう。その意味で今回の失敗は大きなことではない。しかし、この「悪い話題づくり」を平気でしてしまうトヨタの迷走には心配が残る。

  1. コメントはまだありません。

  1. トラックバックはまだありません。

This blog is kept spam free by WP-SpamFree.