マクドナルド「60秒サービス」と口コミの歪み


この記事の所要時間: 40秒 〜 50秒程度(2286文字)


マクドナルドで「ENJOY!60秒サービス」がはじまった。
会計終了から商品提供まで60秒以上掛かったら、「ビッグマックなどお好きなバーガー無料券」をプレゼントするキャンペーンだ。キャンペーン期間は1月4日(金)〜1月31日(木)で、対象となる時間帯は11:00〜14:00。商品が60秒以内で提供されても「プレミアムローストコーヒー(ホット/アイス)(S)無料券」がプレゼントされるため、期間内&時間内に来店したお客はいずれにせよ何らかのタダ券を貰えることになる(参考: ENJOY!60秒サービス|日本マクドナルド)。
 
このキャンペーン、条件は付けているものの、要は2種類のタダ券を配っているだけだ。それならば好評を集めそうなものだが、インターネットで目にする評判は極めて悪い。店員が60秒以内に商品を提供しようと慌てるため、ハンバーガーなどの出来が悪くなり、サービスが低下しているというのだ。例えば、こんなまとめ(【やはり無理があった】マクドナルドの「ENJOY!60秒サービス」が酷い|Togetter)ができている。
 
さて、マクドナルドはなぜこのような事態を招くことになったのだろうか。
そこには、口コミの歪みについての認識の甘さがあったと考えられる。
 

photo credit : Nomadize via photopin cc

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口コミは歪んでいる


口コミ情報は往々にして歪んでいる。
 
何も一部の口コミサイトで見られるステルスマーケティングの話ではない。現実の世の中でも、インターネットの世界でも、人から人へ伝わる情報には歪みがある。なぜなら、口コミは何らかの情報を伝えたい人が、自分が気付いたことを伝えているだけだからだ。おしゃべり好きの人や声が大きい人の意見が多くなり、また当たり前のことより珍しいことが話題になる。人が犬に噛まれてもニュースにならないが、人が犬を噛んだらニュースになるという話と同じ構図だ。
 
そこでは客観性や公平性は蔑ろにされ、話題性だけが優先される。
情報の伝わり方によっては、まるでその口コミが事実のように受け取られることもあるが、代表性は一切ない。嘘が紛れ込んでいない限り何らかの事実はあったのだろうが、その現象がどのくらい一般的に起きているかはわからないのだ。設計に基づいて計画的に集められたデータとは根本的な違いがある。
 


「酷いハンバーガー」は伝わり易い


さて、「ENJOY!60秒サービス」の実態はどうだろうか。
きっと不出来なハンバーガーは珍しく、多くのハンバーガーは普段と変わらない出来映えだと考えられる。もしかすると、「ENJOY!60秒サービス」期間中以外でも同じくらい出来の悪い商品があっただけかも知れない。実証的に確認することは難しいが、マクドナルドが大幅にハンバーガーの品質が下がってしまうキャンペーンを実施するとは考え難く、品質に大差がないという推測は妥当なように思う。
 
しかしそれでも、「60秒サービスで品質が下がった」という口コミは伝播する。
なぜなら、大多数の「いつも通り提供されたハンバーガー」は口コミに成り難く、ごく少数の「酷いハンバーガー」は口コミに成り易いからだ。その結果、まるで酷いハンバーガーばかりが提供されているようなイメージが広がることになる。
 
口コミには、伝わり易い情報と伝わり難い情報があり、これによって生じる歪みがある。このため、お店の評判などというものは多かれ少なかれ良い点、悪い点が拡大されて伝わっていくものだ。今回のマクドナルドのキャンペーンでは、この歪みによってマイナスの情報ばかりが拡散しているように見受けられる。
 


キャンペーンの効果をどうやて測る?


このキャンペーンの成否はわからない。
 
日本マクドナルドは月次で売上高と客数を発表しているのでまずはそれを待つことになるだろう。タダ券を配るというキャンペーンの性質上、売上高よりも客数の増加が期待されている筈だ。
 
しかし、売上高や客数が伸びたとしても、キャンペーンが成功したとは限らない。
一時的に業績が向上したとしても、今回のような騒動でイメージが傷つくのは間違いないからだ。
 
一度失ったイメージを取り戻すことはとても難しい。短期的な業績回復を追い求めるあまりイメージを棄却してしまったのなら、その損失は計り知れないものになるだろう。
 


マイナス情報の拡散を前提に!


インターネットが広く普及して、SNSが多用される現在、人から人に伝わる口コミ情報は爆発的に増えているように感じられる。そして、口頭で伝わる情報と違い、この口コミはインターネットのどこかしこに痕跡が残ってしまう。更に厄介なことに、口コミのコントロールはほとんど不可能だ。誤解を伴う口コミでも、際限なく広がっていってしまう。
 
正直に言って、マイナス情報の拡散に対する根本的な対策など思い浮かばない。
あれこれ対策ができるという人もいるが、話半分に聞いた方がいいだろう。しかし、口コミに歪みがあり、それによりマイナス情報が拡散し易いことを前提にするだけでも、事前対策の一助には成り得る。思わぬ不幸に出くわさないためにも、マイナス情報の拡散にはくれぐれも注意が必要だ。

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