比較アンケートで真因に近付こう!


この記事の所要時間: 420秒 〜 520秒程度(2423文字)


JBpressで日本の問題は通貨ではなく、競争力のない製品だという記事を見掛けた。英フィナンシャル・タイムズ紙からの転載で、「たとえ円が大幅に下落したとしても、世界の消費者はサムスンの製品を捨てて、ソニーや東芝の製品に乗り換えるつもりは全くない」という強烈な主張からはじまる記事だ。「競争力がない」の根拠が一切不明なところは引っ掛かるが、第一感で「一理ある」と思った。最近の、何でもかんでも円高をスケープゴートにしてしまう論調に疑問を持っていたからだ。
 
輸出企業の業績不振を、円高の所為にするのはたやすい。しかし、当然ながら円高だけが企業の不調の原因ではない。例えば、製品の競争力やマーケティングにも難があると考えるのが普通だろう。この場合、円高が解消されただけでは企業の競争力はあまり回復しないだろう。円高は、業績不振の唯一の真因ではないのだから、当たり前の話だ。
 
人は、何か問題があるとその原因を考えようとする。そして、ビジネスにおいては真因を見付け出すことが求められる。「臭いにおいは元から絶たなきゃダメ」というわけだ。確かに、表面的な対症療法では効果が限定されるため、根源的な真因を取り除くアプローチには魅力も説得力もある。
 
しかし、ここに大きな落とし穴がある。
多くの場合、真因など誰にもわからないのだ。もし、みんなが同意できるほど自明な真因があるのなら、とうの昔に発見されて既に解決されているだろう。「真因がある」、「真因を知ることができる」という考え自体が、自信過剰になった人間の勘違いだと言える。
 
では、どうやれば少しでも真因に近付けるのか。
これが今回のテーマとなる。
 

photo credit : angelferd via photopin cc

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社内の常識で真因を決めるな!


真因などわかる筈がなくとも、企業は問題の真因を求め続ける。そしてその結果、真因探しは責任のなすりつけ合いにすり変わることも多い。社内政治が機能して落としどころが見つけ出され、かりそめの真因が決まるのだ。
 
たとえそれが本当の真因でなくても、その原因を適切に排除すれば良い結果を生むことが多い。一つの問題に注力することで選択と集中の仕組みが働けば、思いがけない成果を生み出すこともある。現実のビジネスにおいては、問題が解決されて成果が出ればそれが本当の真因であろうとなかろうとどうでもいいと考えることも可能だ。
 
だが、真因を排除できなければ、いずれまた同じ問題が表出する。
円高解消で一時的にきれいな決算が出ても、競争力のある製品を生み出せなければすぐに元に戻ってしまうのだ。時限爆弾を抱えているようなもので、業績が回復しても問題は解決していないことになる。
 
真因は神様にしかわからない。「わからない」では前に進まないので、ビジネスではかりそめの真因を決めて対策を打つ。このとき、社内の常識で真因を決めるとおかしなことになる。社内で力を持つ部署が真因を抱えているときにそれを認められなかったり、社内の常識が世間の非常識だったりするのだ。
 
硬直化した組織が導き出す真因は、往々にして社内ばかりを見つめたものになる。そんな真因に関わっていては、企業の状態は悪くなるばかりだ。
 


真因を「見える化」する


ある商品が売れ行き不振で困っていたとしよう。
営業部は商品の品質に問題があると考えており、製造部は営業の問題だと考えている。広報部はそもそもの商品コンセプトに疑問を感じていて、経営陣は広告をテコ入れしたいと思っている。どこの会社でもあるような日常的な光景だ。
 
さて、この商品について部署横断のプロジェクトチームをつくり立て直しを図ることになった。ここで真因の追求が行なわれる筈だが、実際には駆け引きが始まり、落としどころが探されることになる。そんなことをしていても、成功するかどうか覚束ない。どこにも魅力のない商品を営業と広告で売ろうとするなど、無理な施策になるのが関の山だ。
 
こんなときは従業員と消費者に同じアンケートを取ってみるといい。
「この商品の不振の原因はここにあると思う」とか、「消費者はこう考えている筈だ」とか、それぞれの思い込みに基づく議論を止めて、データを元に考えるのだ。実際の真因はわからなくても、関係するいろいろな人たちが真因をどのように捉えているか「見える化」することで、わかってくることがある。
 
アンケートの内容は状況次第だが、要は不振の原因が何にあると思うかを単刀直入に聞けばいい。社内でまことしやかに真因とされていたものが、どれだけ根拠に乏しいかわかることになるだろう。
 


彼我の違いを認めることからはじめよう


立場立場で違った真因を考えることがわかって何になるのか、という疑問もあるだろう。しかし、社内の政治で無理矢理つくった真因より真実に近い姿が浮かび上がってくるのは間違いない。
 
ある仕事を長く続けていると、その担当者はなんでもわかっているつもりになる。「消費者は安いものしかかはない」、「ライバル会社は動かない」、「うちの商品は広告なんかしなくても売れる」などの考えだ。根拠が薄弱のことが多く、先入観は邪魔になる。
 
これに風穴を開けるのが、今回説明した比較アンケートだ。
データにして「見える化」することで、つべこべ言い訳をする隙を無くす効果がある。ビジネス、そしてマーケティングの第一歩は、自分と違う考えの人がいると認めることだ。比較アンケートを通して彼我の違いを認めることで、真因に近づくことが可能になる。

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