資金繰り支援で会社は再建できるのか?


この記事の所要時間: 310秒 〜 410秒程度(1852文字)


結論から申し上げよう。
資金繰り支援によって会社再建ができるとは限らない。
 
理由は簡単で、会社の再建にとって資金繰りは必要条件だが、資金繰りさえすれば十分条件が満たされるわけではないからだ。当然ながら、会社再建のためには、資金繰りの他にも商品開発、業務改善、マーケティングなどいろいろな機能が求められる。
 
必要条件・十分条件という用語はビジネスの場でよく使われる。
「数学や記号論理学で定義する必要条件・十分条件と意味が異なる」という指摘を脇に置いて、実際に使われるこれらの用語の意味を考えると、次のように言えるだろう。

 必要条件:目的を達成するために必要となる条件
 十分条件:すべてを満たせば十分に目的が達成できる条件

 
こうやって説明すると単純なようだが、必要条件と十分条件の取り違いはよく起きる。
特に、必要条件でしかないものを十分条件のように考えてしまうことは多い。そして、この勘違いを上記の資金繰りの例などですると、会社の命取りになり兼ねない。まだまだ手当てが足りない状態で、もう充分だと満足してしまうのだ。
 
さて今回は、この必要条件と十分条件の勘違いについて、いくつか例を挙げて説明してみよう。
 

photo credit : 401(K) 2013 via photopin cc

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「◯◯で会社が変わる」を疑え!


会社を成功させるために求められる必要条件はたくさんある。
ところが、巷のビジネス書には「これさえやれば成功する」という文言があふれている。本当は、成功のための必要条件の一つに過ぎない要素を、まるで十分条件のように喧伝しているのだ。「◯◯で会社が変わる」、「◯◯で成功間違いなし」の類は後を絶たない。
 
もちろん、読者もそのあたりは差っ引いて読んでいると思うが、ビジネスやマネジメントに「うぶ」な人はコロッと騙される。一つ間違えれば、それだけを金科玉条のようにして、◯◯の実現に邁進してしまうのだ。著者が、選択と集中を考えてあえて視野狭窄の状態をつくっていたとしても、読む方の解釈次第では必要条件と十分条件の取り違いに陥る可能性がある。
 
例えば、工場において5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)は大切だ。しかし、それは会社が成功するための必要条件であって、十分条件ではない。いくら工場を良い状態に保っても、肝腎のつくっている製品に魅力がなかったら会社の成功は覚束ないだろう。それでも、5Sのみに注力してしまう人がいるのだ。
 
「その条件を満たしただけで十分成功できるのか」を疑わなくてはいけない。
 


必要条件にも例外はある


必要条件を必要条件じゃないと言い張るパターンにも注意した方がいい。例外を見つけ出して、「◯◯なんてしなくても経営はできる」という論法で、これはかなりたちが悪い。
 
数学で考える必要条件・十分条件と違い、ビジネスの現場で使うこれらの用語には厳密性がない。
 ●花であることはバラの必要条件だ
と、
 ●マーケティングを行なうことは成功企業の必要条件だ
では、意味するところが異なるのだ。具体的に言えば、すべてのバラは花である必要があるが、すべての成功企業がマーケティングを行なっているとは限らない。もちろんマーケティングをしっかり行なう企業ほど成功確率は高いが、マーケティングをしなくても成功する企業はある。この例外を取り上げて、「企業にマーケティングは不要」と言い切るのは代表性を無視した雑な議論なのだが、この立場を取る人は案外多い。
 
この種の論理展開はよく見受けられる。
その条件が実際に不要なのかは、自分自身で熟考しなくてはならない。
 


必要条件は網羅的に洗い出そう!


ここまでの説明でもわかる通り、必要条件の一部を成立させただけの状態で満足すると、「仏つくって魂入れず」の状態になってしまう。必要条件を一つでも多く満たさなければ成功確率は上がらないのに、途中で立ち止まってしまうのだ。
 
ビジネスにおける議論は厳密性に欠けるところがある。ビジネスで言う必要条件は、必ずしも必要とは限らない。しかしだからこそ、常に必要条件を網羅的に洗い出す姿勢が求められるのだ。

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