わかりやすい案内表示をつくる「捨てる技術」


この記事の所要時間: 320秒 〜 420秒程度(1896文字)


東急東横線と東京メトロ副都心線の相互乗り入れがはじまった。
数々の報道がある中、一部で話題になっているのが案内表示の見にくさだ(参考:【大不評】東横線と副都心線の発車案内板が恐ろしく超詰め込み表記|NAVERまとめ)。簡単にまとめると、「表示されている言葉が長くて、見にくい、わかりにくい」という意見、「行き先の地名に馴染みがなく、どこに行く電車かわからない」という意見がある。乗り入れの複雑化が背景にあるのは間違いないが、東急側にも問題がありそうに思われる。
 
この話を読んだ第一感は「まじめ過ぎる」だった。
鉄道会社の職員はまじめ過ぎて、お客に伝えるべき情報をすべて盛り込んでしまったのではないだろうか。
 
しかし、お客に伝えるべき情報と、お客がわかりやすい情報の間には大きな開きがある。伝えるべき情報が多い場合、そのすべてを伝えるのではなく、情報の取捨選択が必要になるのだ。つまり、「捨てる技術」が求められる。
 

photo credit : Gilderic Photography via photopin cc

photo credit : Gilderic Photography via photopin cc

 


「伝えたい」より「知りたい」を


たくさんの情報の中から「何を伝えるか」を選ぶときに大切なのは、マーケティング的な考え方だ。マーケティングでは、「何を売りたいか」よりも「何が求められているか」を優先するように教えられるが、情報伝達でもこの発想が必要になる。
 
具体的には、情報を伝えたいターゲットを明確にした上で、そのお客が何を「知りたい」か考えるのだ。「伝えたい」は、正直どうでもいい。その上で、メインのメッセージとサブのメッセージを切りわけることになる。お客が「知りたい」と思わない情報の中には、どうしても伝える必要もあるだろうが、それはサブにすることで濃淡をつければいい。
 
発車案内板なら、まず発車時刻と、電車の種類(各停、急行など)、行き先がメインの情報となる筈だ。発車案内板の位置付けを考えるとこれらの要素は外せないし、一義的にはお客もこれらの情報を求めている考えられる。もちろん、その他の情報も必要だろうが、それはあくまでサブの注釈に過ぎない。注釈部分は、小さく表示するとか、下に流れる文字で表示するとかすればいい。ここを考えずに、何でも同じレベルで表示すると、何を見ていいかわからない案内表示になる。
 
更に言えば、鉄道会社の職員とお客の間に、大きな知識の開きがあることを忘れてはいけない。鉄道会社職員が重要だと思うことは、実はお客さまにはどうでもいいことだったりするのだ。また、沿線に住んでいるお客と、普段はその路線を利用しないお客で知識に差があることにも注意が必要になる。
 
もちろん、これらすべてを満たす正解の案内表示などはないだろう。しかし、もう少しお客の立場で考えれば、今回評判になったような案内にはならないように思う。
 


流通業に学べ!


こういう事態を招いた背景には、鉄道会社の特異性があるように思えてならない。
インフラであるがため、案内の表示方法が少し悪いぐらいでは、お客さまが減ることはないのだ。東急東横線の発車案内がわかりにくいからといって、他の路線で通勤、通学をすることは多くの場合現実的ではない。その結果、細部に注意が払われないことになる。
 
その点、流通業などは、ちょっとした案内等でお客さまの動きが変わってくる。商品の案内が見にくいという理由で、リピーターが減ってもおかしくない。中には酷い店もあるが、総じて案内の質は高いと言えよう。
 
東急は系列に流通業もあるのだから、少し教えを請うたらどうだろうか。
 


受け手の立場で情報デザインを考える


さて、話を膨らませれば、書類やメールのつくり方でも同じ理屈が成り立つ。
 
伝えたいメッセージがヘッドラインに書かれている必要があるし、注釈ばかりでは意味が取りにくい。このあたりは、案内表示となんら変わりはない。何をつくるにも、情報デザインの発想が求められるのだ。
 
情報デザインにはセンスが必要だが、何もそればかりではない。
まず、情報を受け取る相手のことをどれだけ考えているかで違いが出る。ターゲットを想定して、情報を発信することは常に重要だ。そして、情報が氾濫する現代においては、この工夫の価値が上がってきているように思う。

  1. コメントはまだありません。

  1. トラックバックはまだありません。

This blog is kept spam free by WP-SpamFree.