3社乗り継ぎ切符なんていらない!


この記事の所要時間: 320秒 〜 420秒程度(1909文字)


東急東横線の副都心線、東武東上線、西武池袋線への乗り入れについて、3社乗り継ぎ切符(以下では【3社切符】)が買えないという記事があった(参考:川越→横浜、電車は直通でも…3社またいで買えない切符|朝日新聞)。「3社以上連続の切符は購入できないため、〔川越等から〕横浜に行く場合は乗り越し精算が必要」との指摘だ。
 
記事の見出しや内容から読み取れるのは、「せっかく便利になったのに不便な点が残っている」「まだまだ企業努力が足りない」という論調だ。しかし、よく考えてみて欲しい。【3社切符】を買えないことは本当に悪いことなのだろうか。
 

 


「より良い製品をつくればいい」は大間違い


この記事の欠点は、安直な製品志向で考えている点だ。
切符をひとつの製品として考えるなら、後で精算が必要となる2社乗り継ぎの切符より、1枚の切符ですべてをまかなえる【3社切符】の方が高機能で優れている。だからこそ、【3社切符】を実現せよという主張になる。「より良い製品をつくればいい」は典型的な製品志向の考え方だ。良い製品ならば、消費者がその価値を認めてその製品を選ぶようになると考える。
 
でも、消費者が実際に選ぶのは自分が欲しい製品でしかない。「より良い製品」をつくっても、それが消費者の意向に合わなければ売れる訳がないのだ。3Dテレビ然り、大阪弁をしゃべる掃除機然りだ。
 
ビジネスに疎い人ほど「より良い製品をつくればいい」と考えるが、これは大間違いだ。常に「より良い製品」を選ぶほど、人間は合理的な生き物じゃない。
 


切符を買うのはどういう人たちか?


一方、顧客志向では、お客さまを起点に考える。
今回の事例で言うならば、「切符を買うのはどういう人たちか?」がスタートだ。
 
その路線を通勤・通学で使っている人たちは、定期を持っているので切符は買わない。普段から電車によく乗る人、特に一定年齢より若い人はSuicaやPASMOを持っているから切符は不要だ。こうやって考えると、駅で切符を買う人たちは①その路線にあまり馴染みがない人、②電車にあまり乗らない人、③高齢の人だと推測される。やや決め付けが過ぎるものの、大きく間違ってはいないだろう。
 
さて、最近の券売機は難しい。
以前のように、目的地までの運賃を調べ、その金額のボタンを押せばいいような単純なものではない。乗り入れが複雑化している環境を背景に、いろいろな指定をしなくては切符が買えないようになっている。
 
そして、ここに問題がある。
先ほどイメージしたような切符購入者は【3社切符】を無事に買うことができるだろうか。もちろん実験してみなければわからないが、たやすくないことは想像が付く。【3社切符】を買えるようにしても、誰も買わないか、余計な混乱を引き起こすだけだろう。
 
【3社切符】は、製品として高機能でも顧客に優しくない。
つまり、顧客を重視するならば、【3社切符】を発売しないことは正しいのだ。むしろ、乗越精算を推奨した方がいいようにさえ思う。まあ、乗越精算機は、あれはあれでわかりにくいのだが、・・・。
 


真のマーケッターを探せ!


マーケティング活動のポイントの一つは、いかにお客さまの立場で考えられるかだ。どんなお客さまも、自分とどこか似ているが、どこか違う。この当たり前のことを常に心しなくてはならない。人は自分を中心に考えるものだが、それでは駄目なのだ。
 
このことをいくら頭でわかっていても、人はお客さまのイメージとして、ついつい自分や自分の周りの人たちを考えてしまう。そして、このことが失敗を招く。客さまの立場で考える能力は、一朝一夕に実現できない。この価値観を、腹落ちするまで徹底させて身に付ける必要があるのだ。
 
これを心底からできるのが「真のマーケッター」だと思う。
最新のマーケットトレンドとか、新しいマーケティング技術とかは確かに素晴らしいが、それらを振り回している人は、この根本部分ができていない「にわかのマーケッター」が多い。表面的な手段を振り回しても、そもそもの目的設定が間違っていたりする。
 
マーケティングのサポートを求めるなら、まず真のマーケッターを探すことが肝腎だ。

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