ジェネリック家電が売れる時代の原点回帰


この記事の所要時間: 440秒 〜 540秒程度(2579文字)


ジュネリック家電が売れているという記事があった。
 

今、“ジェネリック家電”が注目を集めている|週プレNEWS
特許が切れた医薬品(先発医療品)と同じ成分で別メーカーが作る薬を、ジェネリック医薬品(後発医薬品)という。効き目は同じなのに価格が安くなるため、最近は医師の処方にジェネリックを希望する人が増えている。これと似たような流れが、家電業界でも起こっているのだ。

家電製品の世界でも、あまり名を聞かないメーカーが製造する激安商品なのに、有名メーカーの人気商品に負けない性能を持つものが数多くある。〔略〕

テレビやHDレコーダーなどのAV機器やタブレットなどのITデバイスのほか、日常生活に欠かせない白物家電でも評判が広まりつつあるジェネリック家電。上質の製品を見極める目があればお金をかけずに生活向上できるだけに、ポイントを押さえて賢く使いたいものだ。

 
ここでジェネリックは「一般名称で販売される」「ノーブランド」の意味。ジェネリック医薬品と同様、「効き目は同じなのに価格が安くなる」ジェネリック家電が注目を集めているというのだ。記事では、家電量販店と家電メーカーの力関係に注目しているが、マーケティング視点で考えるとポイントは少し違ってくる。重要なのは、「最新機能が豊富なブランド家電」と「基本機能を抑えているジェネリック家電」の違いが、消費者に届いていない点だ。
 
現代においてマーケティングを考えるとき、消費者がマーケティングを知っていることを前提にする必要がある。マーケティングが導入された初期の時代と違って、うぶな消費者はほとんどおらず、多くの消費者は企業のマーケティング活動をさめた目で見ている。「またやってるよ!」の類だ。今どきの消費者は、メーカーが必要のない機能を追加することで商品価格を吊り上げようとしていることを知っている。商品の機能が増えたことを素直に喜ぶほど、消費者は単純じゃない。
 
そして、この記事を読んで感じるのは、手だれの消費者が「最新機能が豊富なブランド家電」と「基本機能を抑えているジェネリック家電」の違いに見向きもしなくなっている実態だ。メーカーが売り文句にする追加機能の多くがほとんど役立たないことに見抜いていて、そのことを隠そうともしない消費者像が見えてくる。
 
そんな時代にこれまで通りの戦略を実行しても、勝ち目がないのは自明と言えよう。
では、企業はどうしたらいいのだろうか。
 

photo credit : Magic Madzik via photopin cc

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追加機能が魅力的だった時代は終わった


以前から追加機能の多くが役立たないことはわかっていたという指摘もあるだろう。確かにその通りだ。消費者がうぶでなくなったのは昨日今日のことではない。その意味では、役に立たない追加機能の受け止め方が変わったという方が適当かも知れない。
 
将来の経済成長が見込まれ、新技術や新機能への期待が大きい時代には、新しい追加機能が魅力的に見えただろう。右肩上がりの経済を実感していれば、多少のあたりはずれがあっても新機能に対する財布の紐は緩くなる。少しでも性能の良い商品を目指して、我先に新商品に飛び付く心理があって当然だ。商品が成長期にあるうちは、実のある新機能が生まれる可能性が高く、そこには魅力がある。
 
しかし、今は時代が違う。
多くの商品が成熟化していて、画期的な新機能の出現はほとんど見込めない。それでも、メーカーは需要を喚起するために新機能の開発を繰り返すが、その新機能は消費者になかなか届かない。だからこそ、基本機能を抑えたジェネリック家電が人気を集めることになるのだ。
 
追加機能が魅力的だった時代は終わった。
まず、企業はこのことを真摯に認める必要がある。
 


その新機能はコモディティ化の流れに勝てるのか?


成熟期をむかえた商品はコモディティ化する。
どのメーカーの商品も性能が似たり寄ったりになり、消費者にとってはどれを選んでも同じような状況になるのだ。そうなると、多くの場合は価格競争をするしかない。ある程度コモディティ化が進んでも、過去の遺産でブランド価値が残っていることもあるが、そこにすがるのは危険過ぎる。
 
しかし、その商品を主力としてきた企業は、商品のコモディティ化を認めたがらない。その結果、絶えず新しい機能を備えた新商品を売り出す。しかし、その多くはメーカーや技術者の独りよがりであり、消費者には見向きもされない不幸な事態を招く。
 
コモディティ化の流れは強烈だ。
多少の追加機能ではその流れには対抗できない。テレビの画質を4Kにしたり、掃除機に喋らせたりしても駄目なのだ。その新機能を使うことによるベネフィットを消費者が感じられなければ、意味はない。要は、新機能で「得する」と実感できることが必要なのだ。
 
この「得する」を演出できない限り、消費者はジェネリック家電のような商品を選ぶようになるだろう。メーカーとしてこれに抵抗したいのは当然だが、下手な鉄砲も数打ちゃ当たるをやっていては、メーカーの信頼度が下がってしまう。あのメーカーはろくでもない新機能ばかり開発しているという評判が立つのは好ましくない。新機能ができても、その追加機能はコモディティ化の流れに勝てるほど強力なのかを考える必要がある。これができていないのが、今の家電業界だと思われる。
 
残念ながら、真に魅力的な新機能を生み出すのは困難だ。
多くの人間が多大な時間を掛けて成熟化させてきた商品にモレは少ない。発想の転換が必要なるが、これは既存メーカーがもっとも苦手にするところ。商品のことを知り過ぎていて、新しい発想を受け入れる余地がないのだ。

そして、真に魅力的な新機能がつくれないなら、原点回帰か市場撤退しか道はない。
家電業界の現状を見る限り、いつまでも新機能で遊んでいる時間はないと思うが、いかがだろうか。

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