ヤマト運輸、お客が得するIT活用でコスト削減


この記事の所要時間: 320秒 〜 420秒程度(1885文字)


ヤマト運輸の宅急便がまた便利になった。
荷物を受け取る前に配達日時を変更できるようになったのだ。インターネット通販等で買物をすると、多くの場合、事前に自分の荷物の伝票番号がわかる。これを使って事前に配達日時を指定すれば、余計な手間が省けるという訳だ(参考:ヤマト運輸、荷物受け取り前に配達日時を変更可能に|ITpro)。ヤマト運輸の担当者が言う通り、「受け取る方が荷物を待ったり、不在通知票をやり取りしたりするストレスを軽減」できるサービス。この記事についてのツイートが概ね好意的なのも当然だろう。自分も次は早速使いたいと思った。
 
さて、この記事。
利用者視点で「便利になった」と読むだけでは勿体ない。ヤマト運輸の視点で考えるてみると、また別の一面に気付くことができるのだ。この事例からは、IT活用のお手本が見えてくる。
 

photo credit : Nemo's great uncle via photopin cc

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お客を働かせてコストを削減


ヤマト運輸側から見たこのシステムの効果はコスト削減だろう。
このシステムが利用されることで、荷物を配達に行ったときにお届け先不在の可能性が低くなるのは確実だ。
 
1個の荷物をお届けするための平均訪問回数が減る効果は大きい。ヤマト運輸のIR情報によれば、宅急便の年間取扱個数は14億2360万個(2012年)。平均訪問回数が0.01回減っただけで、約1423万回の無駄足がなくなることになる。1回の訪問コストが50円として7億円、100円として14億円のコスト削減効果を見込める。数値は机上の空論だが、コストが削減されるのは間違いない。ついでに言えば、空振りが減ればドライバーのストレスも減りそうだ。
 
ここでのポイントは、このシステムに入力する作業を、ヤマト運輸の従業員ではなくお届け先のお客が行なう点だ。つまり、お客を働かせてコストを削減していることになる。
 
どうしてお客がそんなことをするかといえば、それでお客が得をするからに他ならない。疲れて自宅に帰って、宅配便の不在通知票を見たときの、あの残念さ、億劫さ。これから開放されるなら、数分の時間を使ってお届け時刻を入力することを厭わないお客は多いだろう。そして、これこそがヤマト運輸の狙いなのだ。
 


IT活用も顧客志向で!


繰り返しになるが、これが可能となるのは、お客も得するシステムだからだ。ここが、世間に数多ある“困ったIT活用”との違いと言える。
 
典型的な“困ったIT活用”として、企業がコスト削減するために、お客の負担だけを増やすシステムがある。お客の手間は増えるのに、その見返りがないシステムは多い。そういうシステムに限ってユーザビリティが低いので、お客は不快や不満を感じ、そのサービスから離れるきっかけになり兼ねない。
 
もちろん、どんな商品も値上げが難しい環境の中、価格を維持するためには、お客に相応の負担を求めるのも致し方ない。しかし、それにはお客が得をしたと感じられる見返りが必要だ。IT技術を過信して、お客ではなくシステムを中心に考えたサービスをつくっても、お客は協力してくれないだろう。
 
システム開発においても重要なのは顧客志向だ。
ここが狂うと目的と手段が逆転して、お客にとって不便なシステムができてしまう。そうなると、企業にとってもお客にとっても、不幸な事態を招くのは必至となる。
 
システムを改めるなら、それによるお客の利便性向上と負担増加のバランスを考える必要がある。もちろん、お客によってITスキルは大きく違うので、自社の顧客層を充分考慮した上での検討となる。お客が担当者と同じくらいのITスキルを持つという決め付けが、お客に不快感を与えることを忘れてはならない。
 
真にお客の役に立つシステムをつくれば、今回取り上げたヤマト運輸の例のように、お客が勝手に働いてくれる。そういうシステムをつくるために必要なのは、まずお客のことを知り、お客になって考えることだ。まさに、顧客志向と言えよう。
 
この顧客志向の視点が抜けているIT活用が多い。
IT活用で顧客志向がうまく実現できれば、そのシステム自体が差別化要因となろう。ぜひ、積極的に顧客志向のIT活用を考えてもらいたいものだ。

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