3Dプリンタ、キラーコンテンツを誰がつくる?


この記事の所要時間: 330秒 〜 430秒程度(1974文字)


たった3万5千円(347ドル)で手に入る3Dプリンタが登場するかも知れない(参考:わずか3万5千円で購入できる3Dプリンターが登場|ギズモード・ジャパン)。まだ資金調達準備中の段階とはいえ、新しもの好きの食指を充分に動かすニュースだろう。万が一この会社が失敗したとしても、別の会社が低価格3Dプリンタを発売するのは時間の問題だと考えられる。
 
ただし、低価格機発売が3Dプリンタの普及を後押しするとしても、すぐに一般化するとは考えにくい。なぜなら、多くの人には3Dプリンタで出力するものなどないからだ。素人に3Dのデザインは困難だし、Web上で公開されている3Dデザインを探すのも難しい。それより何より、「いったいどんなものを出力できるのか」。紙への印字と違って、まったく想像もつかない人がほとんどだろう。
 
そうなると、3Dプリンタの普及に必要なのはキラーコンテンツだ。
誰もが「3Dプリンタを使ってこれを出力したい」と思えるようなモノを見付けない限り、普及に弾みはつかない。問題は、誰がキラーコンテンツを見付け出すかとなる。
 

photo credit : Shapeways: via photopin cc

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キラーコンテンツづくりは難しい


新商品が発売されたとき、それが画期的な商品であればあるほど、一般消費者にそのベネフィットが伝わりにくい。なかなか具体的な便益、恩恵を想像できないためだ。
 
このことが画期的な新商品にとって大きな障壁になる。
人はその商品が生み出すベネフィットに対する期待を買うため、ベネフィットが伝わらない商品は売れないのだ。技術的に優れた商品でも、ベネフィットが伝わらずに失敗した例は数多い。
 
この障壁を打ち破るのがキラーコンテンツだ。AppleⅡのVisiCalc(世界初のパーソナルコンピュータ向け表計算ソフト)、ビデオデッキのアダルトビデオ、家庭用プリンタの年賀状などがその例だと言われている。裏の取れるような事柄ではないが、どれもそれなりの説得力があるだろう。キラーかどうかは別にしても、これらのコンテンツが商品の普及に貢献したのは間違いない。
 
この中では、特に家庭用プリンタの事例がおもしろい。家庭用プリンタの開発において、年賀状の位置付けは元々おまけ程度に過ぎないと考えられるからだ。少なくても、プリンタにとって年賀状印刷は本質的な機能じゃないだろう。ところが、年賀状印刷がなければ普及が遅れていた可能性がある。そして、ここにキラーコンテンツづくりの難しさがある。一般消費者にフィットするコンテンツは、何もその商品の本質的な性能を発揮するものとは限らないのだ。
 
また、キラーコンテンツはメーカー等が仕掛けて生まれるものなのか、自然発生的に生じるものなのかもわかりにくい。キラーコンテンツの効果が喧伝されることで、これを狙っている企業・業界は多いが、なかなかうまくいかないのが実情のようだ。
 


3Dプリンタのキラーコンテンツは?


さて、3Dプリンタのキラーコンテンツとしてどんなものが考えられるだろうか。
 
これがまったくわからない。
企業ならば工業製品の金型などが考えられるが、一般家庭となったらお手上げだ。もちろん、プラスチック樹脂でつくれるスマートフォンのカバーのようなものをカスタマイズすることは可能だが、キラーコンテンツには程遠いだろう。
 
ここで考えてしまうのは、人は立体的なものをつくり慣れていないということだ。DIYのように何かを加工してつくることはあっても、立体的なモノをゼロからつくる経験はあまりないのではないだろうか。つまり、家庭用プリンタで起きたような、これまで自分の手でやっていた作業の代替という利用は考えにくい。この意味で、自然発生的にキラーコンテンツが生まれる可能性は少ないと考えられる。
 
そうなると、誰かがキラーコンテンツを仕掛ける必要があるが、難しいのはこの部分だ。誰が主役になるのかまったく見えない。
 
現時点で3Dプリンタを売り出している企業は、スタートしたばかりの小さな企業が多く、キラーコンテンツを仕掛けるにしてもニッチで充分だろう。だからといって、大企業が乗り出すには低価格が早い段階で進み過ぎている。利益が薄いところにキラーコンテンツを仕掛ける動機があるかは疑問だ。
 
果たして、3Dプリンタのキラーコンテンツをつくる救世主が現れるか。
3Dプリンタの将来はここにかかっているように思えてならない。

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