アンケートの敵=認知的不協和に気をつけろ!


この記事の所要時間: 430秒 〜 530秒程度(2525文字)


人は平気で嘘をつく。
ましてやアンケートならなおさらだ。

 
年齢を鯖読む人、自分の嫌なところを隠す人、本音ではなく建前を答える人、世の中の流行に合わせる人、質問者側に気遣いをする人、・・・。挙げていけばキリがない。「嘘をつく」という言い方が刺激的過ぎるなら、「本当ではないことを答える」と言い換えてもいいだろう。いずれにせよ、回答者から本当のことを聞き出すのはとても難しい。
 
例えば、無料セミナーなどの評価アンケート。
たとえ内容が乏しいセミナーでも、主催者側の作業に敬意を表してあまりマイナスの答えをしないことが大人のマナーだと思っていたりしないだろうか。講師が知り合いのときなどは、少し無理をしてでも良いところを探し出すのものだ。それが浮世の義理だと言えばそれまでだが、そんな回答が多くてはアンケートを実施する側としては困ってしまう。評価を真摯に受け止めようとしているとき、余計な気遣いをされても困惑するだけだ。
 
アンケート回答の嘘の中でも、特に厄介なのが認知的不協和が生み出す嘘だ。
「認知的不協和はアンケートの敵だ」と言ってもいいだろう。
 

 


人は自分の行動を正当化するために商品を高く評価する


認知的不協和とは「人が自身の中で矛盾する認知を同時に抱えた状態、またそのときに覚える不快感を表す社会心理学用語」のことだ(参考:認知的不協和|ウィキペディア日本語版)。こういう定義を見ると難しそうだが、要は事後的な自己正当化と考えていい。人は、自分の行動を正当化するために、自身が認知したこと自体、認知したことの評価や解釈を変更する。認知的不協和は矛盾による不快感自体を意味するが、その解消行為を含めて認知的不協和と言われることが多いように思う。
 
新しいノートパソコンを買うとしよう。
多少は値の張るものだし、使い難いものを掴んでしまっては買った後が大変なので、じっくり時間を掛けて機種を選ぶことになる。そうなると、購入したノートパソコンに満足しないところがあっても、それを認めたくないのが人情だ。
 
 ①投資したお金と時間
 ②使って感じる満足度
の間に矛盾が生じると、人はそれを解消して自分の行動を正当化しようとする。「最近はパソコンの機種にこだわっても仕方がない」と言ってみたり、「競合パソコンも同じくらい使いにくい筈だ」と考えてみたり、「まだ使い慣れてないから不満に感じるだけ」と自分を慰めてみたりするのだ。誰もが身に覚えのある心理だろう。
 
認知的不協和の解消は人間心理の一面を表しているだけなので、それを良いとか悪いとか言ってもしょうがない。多くの人はこういう考え方をする、ただそれだけのことだ。しかし、その商品についてアンケートをするときには困ったことになる。商品購入者が、自分の失敗を認めたくないために、高い評価を答えるのだ。自分をだましてまで正当化したいのだから、アンケートに対して正直に答える訳がない。
 
認知的不協和がアンケートに与える影響を知らないと、高い評価にぬか喜びすることになる。「自分や自社が高く評価された」というメッセージを発するために調査をしているのなら、認知的不協和による高評価を活用することが可能だろう。だが、実際の正しい評価を知りたいのなら認知的不協和は撹乱要因でしか無い。
 


認知的不協和を取り除く方法


認知的不協和の影響はアンケート結果に大きな影響を与える。とは言え、何も対策ができないわけではない。最後にいくつかの対策を紹介しよう。
 
 不満点への賛同を質問する 
商品自体の満足を質問した後に、細かな不満点を質問する方法が考えられる。
いくつもの不満点を挙げて、それぞれ賛同するかどうか5段階程度で評価してもらうのだ。商品への満足意向を確認した上で細かな不満を聞けば、そこでは気に入らない箇所を正直に答える人も多い。5段階で細かく質問してその差を見れば、商品の改良すべき部分はおのずと明らかになる。実際の評価自体はわからなくても、どこが悪いかがわかれば役に立つだろう。
 
 聞き方を工夫する 
「満足しましたか」と聞けば「いいえ」と答えない人でも、他の聞き方をすれば本音を表すことがある。例えば、「次回も同じ商品を買いますか」「友人・知人にこの商品をすすめますか」「あなたと同年代の人は、この商品を高く評価すると思いますか」など、間接的な聞き方をするといい。回答者が抱えている矛盾を刺激しないように質問するのだ。これらの質問の答えが「満足しましたか」と大きく異なるようなら、認知的不協和の影響が強いと思っていいだろう。
 
 継続的に調査を行なう 
満足度を聞こうと、次回購入意向を聞こうと、一つの商品のアンケート結果だけでは、その結果が高いか低いかはわからない。長いこと市場調査に関わっていれば、感覚的に高いか低いかは判断できるが、それはまた別の話だ。
やはり数値の意味をしっかり捉えたいなら、いろいろな商品について継続的に同じ調査を繰り返すことでデータを蓄積する必要がある。そうすれば、認知的不協和込みの満足度だったとしても、過去の結果と較べることでその数値の高低がわかるようになる。
 
認知的不協和の影響を減らすための工夫は、商品のタイプや調査設計によって変わる。つまり、これらを行なえばいつでも問題がなくなるというわけではない。それでも、常に認知的不協和を意識して対策をしなければ、間違いの多く含まれた調査結果を使って判断する事態に陥ってしまう。
 
真摯にアンケートに取り組むなら、少しでも嘘の少ない調査結果を手に入れるため、これらの工夫を怠ってはならないのだ。

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