ヒューマンエラーは必ず起きる!


この記事の所要時間: 330秒 〜 430秒程度(2026文字)


新聞や雑誌を読んでいて違和感を覚えるのが、ヒューマンエラーへの理解の浅さだ。
「ヒューマンエラー発生 ⇒ チェックシステムが異常を感知 ⇒ トラブルを未然に回避」のパターンを、まるで大きな危険があったかのように問題視する記事は目に余る。トラブルに至らなかったのはたまたまなので、「ヒューマンエラーをすること自体がけしからん」ということらしい。
 
果たして本当にそうなのだろうか。
企業は「ヒューマンエラーをなくす」ことに注力すべきなのだろうか。この問いかけは熟考に値する。なぜなら、そもそもの問題設定を間違えれば事態の改善は望めないからだ。考えるべきテーマを間違えていては、いくら頭を悩ましても答えを出しても、それに見合った成果は期待できない。
 

photo credit : Alex E. Proimos via photopin cc

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人間はミスをする? ミスをしない?


世の中には「人間はミスをする」と考える人と「人間はミスをしない」と考える人がいる。後者の多くも「人間はミスをする」ことを知っているが、それは努力、訓練、集中力などで防げるというのが彼ら彼女らの論法だ。
 
確かに努力でミスは減るかも知れない。しかし、ミスを減らすのとゼロにするのは別の話だ。ヒューマンエラーを減らそうとすることは素晴らしい。その究極の目標は、ミスをゼロにすることだろう。そして、一定期間に限ればミスが起きないこともあり得る。だが、それは二度とミスが起きないということではない。
 
だからこそ、ミスの存在を前提にして、それがトラブルに発展しないようなチェックシステムをつくることが重要になる。設定すべき問題は「ヒューマンエラーをなくす」方法ではなく、「ヒューマンエラーを確実に発見する」方法なのだ。
 
個人のヒューマンエラーを責めても問題は解決しない。
ミスが重大なトラブルを招いた場合、その元となった人を追求したくなるのは人情だが、それでは何も生み出さないのだ。「集中力が足りないからミスをするんだ」、「もっと真剣にやれ!」といった精神論は害にしかならない。新聞や雑誌は外野からあれこれ言っているだけなのでそれでいいかも知れないが、当事者はもう少し冷静に事態に対処する必要がある。外野の声に惑わされて問題設定を間違ってしまっては、問題解決から遠ざかるばかりだ。
 


ヒューマンエラーの取り扱い方


ヒューマンエラーによるリスクを管理したいのなら、まずはその存在を認めることが必要になる。本来の目的は「ヒューマンエラーをなくす」ことではなく、「結果的に大きなトラブルを引き起こさない」ことなのだ。ここを考え違いしてはいけない。
 
ヒューマンエラーを大きなトラブルにしないために必要なのは徹底した従業員教育だ。人は「人間はミスをする」ことがわかっていても、他人には完璧を求めることがある。「ヒューマンエラーは必ず起きる」ことを常に前提とさせるためには、繰り返しの教育しかない。「ヒューマンエラーは努力によって減少するが、ゼロにはならない」という価値観を広く共有する必要がある。これを実現するために、経営者や管理職は細心の注意が求められる。ちょっとした発言が従業員を完璧主義に走らせ、「人間はミスをしない」の前提を蘇らせ兼ねないからだ。
 
その上で、チェックシステムをつくることになる。
システムというと大袈裟に考えるかもしれないが、要は二重、三重に確認するようにするだけだ。ただし、「みんなで頑張ってお互いにチェックしよう」ではいけない。確実にミスを発見できる仕組みをつくることが求められる。
 
この部分を内輪で済ませようとするとなし崩しになる危険がある。最初はしっかりチェックしていても、だんだんと通過儀礼と化し、終いには「見ただけ」になってしまうのだ。実効性を保つために、作業者とチェック者の関係をコントロールする、チェック実施を抜き打ちで監査する、外部に委託する等の工夫で、チェックシステムが形骸化しないように配慮しなければならない。このチェック部分の実効性がなくなり、トラブルを招く例は多い。
 
ミスが起きることを前提に、そこから起きるトラブルを防ぐシステムをつくり、その実効性を維持する。これは当たり前のようでありながら、なかなか難しい。難しいからこそ、「ヒューマンエラーエラーをなくす」という問題設定に逃げてしまう。しかし、それでは問題は何も解決しない。
 
「ヒューマンエラーを確実に発見する」ことを目指し、それを達成すれば企業の比較優位になるのは間違いない。しっかりと問題設定をして、ここに注力して貰いたいものだ。

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