夏の恵方巻とイベントのインフレーション


この記事の所要時間: 310秒 〜 410秒程度(1798文字)


今年から、セブンイレブンが夏の恵方巻を売りはじめた。
あまり馴染みがない立秋前の節分を持ちだしてまで恵方巻を売ろうという企画で、初年度は100万本の販売を目指すとのこと。2月の節分に恵方巻を販売するようになって約15年。恵方巻の一定の浸透を受けて、次の一手を打ったというところだろうか(参考:セブンイレブンが「夏の恵方巻」を初めて発売 8月4-6日|MSN産経ニュース)。
 
小売店などがあの手この手を使って、消費を刺激するのは当然のことだ。企業や業界団体が無理矢理イベントをつくって何かを売ろうとしても、消費者が買うも買わないも自由なのだから文句を付ける筋合いではない。企業が「売れる仕組みづくり」を目指してさまざまな試行錯誤を行なう姿は好ましくさえ思う。
 
とは言え、最近のこの手のイベントには少し趣の違った居心地の悪さを覚える。企業が仕掛けるイベントに、消費者が無理して乗っているのように見えるのだ。そして、無理にでも乗ってくる消費者に対して、企業はイベントを仕掛け続ける。この持ちつ持たれつの関係は、かなり歪んでいるように思えてならない。
 

Photo credit : Charley Lhasa / Foter / CC BY-NC-SA Photo credit : Charley Lhasa / Foter / CC BY-NC-SA

 


消費者も承知の上で・・・


土用の丑の日の例を持ち出すまでもなく、イベントを使った消費の刺激は誰かが仕掛けるものだ。小売店の店頭で販促に励むにしても、口コミを使った浸透を狙うにしても、マスコミへのリリースを有効活用するにしても、何らかの思惑を持った主体が動いている。
 
以前は、この仕掛けをなるべくバレないように行なう習慣があった。まるでどこからともなく自然発生した消費のように装うのだ。しかし、今どきの消費者はすれているので、これが難しい。企業がマーケティング活動の一環としてイベントを仕掛けているのを知っており、イベントの意図を素早く見抜いてしまう。
 
そうなると、イベントによる消費の刺激がうまくいかなくなりそうなものだが、近ごろはむしろ盛んになっている印象を受ける。なぜそんなことになるかと言えば、消費者も承知の上で企業が仕掛けたイベントに乗っかっているからだ。
 


SNSがイベントのインフレーションを起こす


TwitterやFacebookに代表されるSNSのユーザーは常にネタを探している。
高い頻度で書き込みを続け、ある程度の話題性を提供しようと思ったら、ネタは欠かせない。日常生活をただただ書き込んでもおもしろくないので、話に彩りを与える何らかのネタが必要になる。
 
このネタ探しにおいて、イベントは便利な道具だ。「今日の夕食はお寿司を食べました」では話題性の欠片もないが、「今日は秋の節分なので恵方巻を食べました」なら読み手の心に引っ掛かるフックができる。ほぼ同じことを書いていても、イベントを絡めることでネタになるのだ。
 
ネタを求める人が増えると、イベントのインフレーションが起こる。イベントを仕掛ける企業が増えて、それに乗る消費者も増えるからだ。そこに商機があるのは間違いないが、あまりにイベントが多くなると、個々のイベントの価値は下がってしまうだろう。
 


イベントも量より質


そして、ネタ探しのためのイベントは、参加している本人たちがあまり楽しそうでないという特徴がある。イベントに参加する目的がネタ探しになってしまうと、イベントは手段に成り下がってしまうので楽しくないのだ。この奇妙なイベントの扱いこそが、冒頭に書いた居心地の悪さを感じる原因だ。
 
SNSに追われて、たくさんのイベントに参加するなど馬鹿げている。
それよりもいくつかの厳選したイベントを楽しんだ方が、生活は充実するだろう。そう、イベントも量より質なのだ。巷に訳の分からないイベントがあふれる中、何でも参加すればいいというものではない。
 
もちろん、イベントを仕掛ける側の企業においても、この視点は大切になる。イベントのインフレーションが起きて価値の小さなイベントばかりになったら、手間暇ばかり掛かって儲けが期待できない。数多くのイベントを仕掛けるのもいいが、少し長期的な視野に立ち、実りの多いイベントを生み出すことこそが真の価値を生むのではないだろうか。

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