従業員が冷蔵庫に入るのを防ぐよりも・・・


この記事の所要時間: 350秒 〜 450秒程度(2188文字)


最近、冷蔵庫が熱い。
Googleトレンドでウェブ検索の人気度を見ると、この8月が最大値になっている。もちろん、急に冷蔵庫を探す人が増えた訳ではない。冷蔵庫に入っている飲食店従業員の画像が次々とインターネット上にアップロードされ、どこかしこで炎上しているためだ。いくつかニュースにもなっているので、ご存知の方も多いだろう。
 
さて、今となっては後知恵だが、このニュースをはじめて見たときに「他にもいる」、「後追いが出てくる」と直感した。ハインリッヒの法則はここでも成り立ち、冷蔵庫に入る従業員はそこまで珍しくないと考えたからだ。
 

Photo credit : chelseacharliwhite / Foter / CC BY

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29枚の写真? 300人の実行者?


ハインリッヒの法則は労働災害における経験則で、「1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在する」というもの。300の異常をヒヤリ・ハットと言い換えて、ヒヤリ・ハットの法則などとする人もいる。損害保険会社の技術・調査部の副部長をしていたハーバート・ウィリアム・ハインリッヒが、ある工場で発生した労働災害5000件余を統計学的に調べてこの法則を導き出した。基本的には、ヒヤリ・ハットや軽微な事故を見逃さないことでこれらを減らし、重大な事故を防ごうという文脈で活用される(参考:ハインリッヒの法則|ウィキペディア日本語版)。
 
ハインリッヒの法則で経営者や労働者の意識を高め、労働災害を減らすことは素晴らしい。しかし、この法則の真のポイントは別のところにあると思っている。それは、表面にあらわれる事象は氷山の一角に過ぎず、その背後にたくさんの似たような事象が隠されているということだ。労働災害に限ったことではない。どんなことにおいても、何か一つの問題が起きたら、その背後には数多く問題があると考えることが重要になる。
 
上記の冷蔵庫の例で言えば、1人が画像をアップして炎上したなら、きっと他に29枚の写真が存在していて、別に300人の実行者がいると考えるということだ。その上で、他社の事件を眺めるだけではなく、自社でも起こりうる問題と想定することが大切になる。問題が発覚した店舗や人間だけが「特別」と考える積極的な理由がないのなら、問題はどこにでも確率的に起きると考えた方が正しい。「我が社は特別」、「うちの店に限って」などというのは過信でしかない。あくまで確率的な現象なのだ。決して他人事と考えてはいけない。
 


「やめるように!」では解決しない


こういう事件が発覚すると、「ああいうことは、やめるように!」と自社の従業員に対して指導する経営者や管理者がいる。具体的に、マニュアルを改定したり、新人アルバイトの研修を強化したり、店舗の管理者を増やしたり、炎上した場合のペナルティを設けたりするかも知れない。
 
もちろん、何らかの対処を行なおうとする姿勢は正しいし、一定の効果を生むだろう。しかし、それだけでは何も解決しないのも確かなのだ。多くの従業員は特に指導をしなくても冷蔵庫には入らない。一部の困った従業員が冷蔵庫に入る。指導することで冷蔵庫に入る従業員が減るだろうが、何せ元が困った従業員だ。誰もが従うと考えるのは虫が良過ぎる。指導をしてもなお、1万人に1人、10万人に一人の確率で冷蔵庫に入る従業員は残るだろう。こういう困った従業員は、ゼロにできないと考えるのが現実的な考え方というものだ。
 


後始末の付け方を決めておく


何らかの手を打ち、問題が起きないように努力するのは確かに大切だ。しかし、それでも問題は発生する。だからこそ、「対処をしたから安全」と考えるのではなく、「それでも問題は起きる」と考えることが必要になる。問題が起きないようにすることもリスク管理だが、問題が起きてしまったときの後始末もリスク管理だ。
 
このような考えに立った上で、問題が起きたときに、
 ①誰が
 ②いつまでに
 ③何をするか
を事前に決めておくことが有効になる。
 
具体的には、事実関係の確認、処分の決定、再発防止の方針策定、問題の公表などについての役割分担と予定時間を決めておくのだ。何ならチームをつくっておき、定期的に他社の事例を研究したり、模擬的な作業をしてもいい。
 
問題は確率的に起こるものだから、ある程度以上のところでは防ぎようがない。だからこそ、問題が起こることを前提にして、事前に後始末の付け方を考えておくことが重要になる。問題そのものではなく、その対処を間違えて窮地に陥る会社は多い。
 
問題を起こさないことを重視すると、「問題は起きない」という錯覚を持ってしまうことがある。問題を起こさないために努力しているのだから、問題が起きたことのことを考えることは不謹慎などと考える人さえいるようだ。
 
しかし、問題を根絶することはできない。
「問題は必ず起きる」という前提に立ち、それに向けた準備をすることが重要なのだ。

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