あまちゃん効果32億円の算出方法は?


この記事の所要時間: 40秒 〜 50秒程度(2247文字)


NHKの連続テレビ小説『あまちゃん』には、約32億円の経済効果があるらしい。
試算は岩手銀行系のシンクタンク・岩手経済研究所によるもので、観光客増加に伴う岩手県内の経済効果を32億84百万円と算出。併せて465人の雇用も生まれると予想している(参考:あまちゃん人気 岩手経済効果32億円 地元シンクタンク試算|河北新報)。
 
さて、この経済効果。大変結構な話ではあるものの、「試算は信じられるの?」と思う人も多いだろう。自分もその一人だ。途中の説明が少なく、結果の数値だけ報道されるのでついつい疑ってしまう。計算の過程がブラックボックスで、どんなソロバンを弾いているかわからないため、にわかに信用できないのだ。そこで今回は、この数値を信じていいか見極めるため、あまちゃん効果の算出方法を紐解いてみた。
 

Photo credit : Jeremy Brooks / Foter / CC BY-NC Photo credit : Jeremy Brooks / Foter / CC BY-NC

 


「観光客数 × 消費額 × 県内自給率 + 間接効果など」を計算


以下は、一般財団法人岩手経済研究所が公表したNHK連続テレビ小説「あまちゃん」の放映に伴う岩手県経済への波及効果(概要)を参考に作成している。詳細は別紙掲載(「岩手経済研究」25 年9月号)ということで不明な部分もあるが、算出方法の大枠を理解するには充分と判断した。
 
試算は次の5ステップで行なわれている。
 
 1 観光客増加数の予測 
どのくらい観光客が増えるかがスタート地点となる。
今回の試算では、久慈市の観光拠点である「やませ土風館」のゴールデンウィーク中の観光入込客が昨年比2倍となったことを根拠に、2013年度全体での久慈市への観光入込客も2倍になると予想している。観光客の増加数は延べ人数で48万9千人、実人数で34万4千人となる。
 
 2 観光消費額の推計 
売上予測の基本、客数 × 客単価で推計している。
観光庁が公開している共通基準による観光入込客統計を使用。この統計では、県内客か県外客か、宿泊か日帰りかを基準に観光客を4つに分類。各分類ごとの構成比および観光消費額がわかるため、客数 × 客単価の計算が可能になる。この推計による観光消費額は30億64百万円となっている。
 
 3 県内への直接効果を算出 
上記の30億64百万円すべてが岩手県内で生み出される訳ではない。他県から持ち込まれた商品などが含まれているからだ。このため、観光消費額に岩手県の自給率を掛けて県内への直接効果を算出している。県内への直接効果は20億96百万円
 
 4 間接効果、第2次波及効果の計算 
直接効果20億96百万円を元に、平成21年岩手県産業連関表を用いて間接効果、第2次波及効果を計算している。間接効果は7億7百万円、第2次波及効果は4億82百万円
 
 5 経済効果を合計 
直接効果20億96百万円、間接効果7億7百万円、第2次波及効果4億82百万円を合計すると、岩手県内への経済効果は32億85百万円になる。
 


概算なら観光客1人1万円で充分!?


ここまで読んでみて、いかがだろうか。
極めて綿密な手順で計算しているが、ゴールデンウィークだけのデータから1年間の観光客も2倍になるとか、観光客がこれまでの統計と同じ構成比になるとか、思わずツッコミを入れたくなるような仮定も多い。もちろん、仮定なくしての試算は不可能なので仕方ないのだが、精度にはおのずと限界があるだろう。
 
ここで考えてしまうのが、作業量と精度のバランスだ。
綿密に計算してもその精度に限界があるのなら、最初から概算しかしないのも一つの方法となる。結果から見る限り、観光客1人1万円で計算しても大差はない。観光の経済効果を概算をするときは、観光客1人1万円で計算する便法も有意義なように思う。
 


予算と実績の比較でボトルネック探しを!


一方で、しっかり試算するなら、その活用方法を拡充した方がいいだろう。
確かに、「32億円の経済効果」というメッセージによって、県内の観光産業に準備を促すことが可能だ。更なる観光客の呼び込みに役立つだろうし、県民の心理にプラスの影響を与えるだろう。しかし、それだけではただのアドバルーンにとどまってしまう。これだけでは、折角の試算がもったいない。
 
試算を有効活用するには、予算と実績の比較が必要になる。
経済効果はあくまで試算に過ぎないが、これを予算と捉えて後日わかる実績と比較するのだ。例えば、観光客数や観光消費額で比較するといい。観光客数が思ったほど伸びなかったのなら、広報活動に問題があるのだろう。観光消費額が予想よりも少なかったら、魅力的なおみやげが提供できなかったのかも知れない。日帰り客ばかり増えたなら、県内の宿泊施設や観光ポイントが足りない可能性が考えられる。悪い例ばかりで恐縮だが、予算と実績を比較すれば観光振興のボトルネックがわかることになる。
 
綿密な試算をしたのだから、それに見合った最大限の活用をした方がいい。
このとき大切なのは予算と実績の比較によるボトルネック探しとなる。大きな経済効果の試算で観光産業の伸びに期待するのは当然だが、それだけではもったいない。事後検討を行なうことで次の一手を見付けられれば、更なる観光振興に役立つのではないだろうか。

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