「退会しにくい」に価値はない!


この記事の所要時間: 330秒 〜 430秒程度(2020文字)


GIIGAZINEにさまざまなウェブサービスから退会する難易度・方法・直URLがわかる「Just Delete Me」という記事が掲載された。なかなか退会できないウェブサービスが多いため、その方法を網羅的に紹介するJust Delete Meなるサイトができたらしい。不便なサービスを提供するサイトがあると、それをフォローするサイトがあらわれる。いかにも今の時代らしい動きと言えるだろう。
 
さて、世の中は「退会しにくい」サービスで溢れている。
Just Delete Meの評価を見る限り、自分が使っているサービスのうちAmazon、Feedly、iTunes / Apple IDの退会難易度がHARD。Evernote、Wikipedia、WordPress.comに至っては退会がIMPOSSIBLE(不可能)という始末だ。
 
ここまで退会しにくいサービスが多いと、退会しにくいことに価値があるように思えてくるが、そんなことはない。一度つかんだお客を手放さないことには価値があるものの、それには正しいやり方というものがあるのだ。周りに檻をつくるようなことをしてお客を無理に囲い込んでも、その効果は限られる。「退会しにくい」ことに大きな価値はない。
 

Photo credit : MSVG / Foter / CC BY Photo credit : MSVG / Foter / CC BY

 


「退会しにくい」は逆効果?


「退会しにくい」に価値がない理由は単純だ。
方法がわからなくて退会できなかったユーザーは、その後そのサービスにどう接するだろうか。登録が残っているからといって、また頻繁に使い出すとは考えにくい。何かの拍子に利用することもあるだろうが、その確率はかなり低い筈だ。退会の邪魔をしても、何か月も利用のない「幽霊ユーザー」が増えるだけ。売上などへのプラスの貢献はほとんどないと考えられる。
 
むしろ「退会しにくい」ことから生まれる逆効果の方が大きいだろう。退会しにくいサービスが増えると、多くの人は新しいサービスへの参加に慎重になるからだ。後から面倒な思いをしたくないので、簡単に新規登録をしなくなる。そして、「ちょっと使ってみる」が減ることは、インターネット全体の不利益になってしまう。1つのサイトでどうこうという話ではないが、「退会しにくい」サービスはこんな逆効果も起こし兼ねない。
 


不合理な「退会しにくい」を見直そう!


行動経済学を持ち出すまでもなく、人間には一度手に入れたものを失いたくないという心理がある。既存ユーザーを退会させたくないというのは人情だ。しかし、そこに経済的な合理性はない。人間の持つ不合理な部分が使い勝手の悪い「退会しにくい」サービスをつくっていると言っていいだろう。
 
実際には、個人の心理ではなく、会社の心理も大きく作用する。ユーザー数が社内の評価指標などになっているパターンだ。しかし、それで「退会しにくい」サービスを続けていても、得られるモノは限られるし、一定のコストが掛かる。インターネット上でサービスを提供している企業は、このことを充分考慮して「退会しにくい」仕組みを見直す必要があると思うのだが、いかがだろうか。
 


お客を「やみつき」にさせるアプローチを


冒頭にも書いたが、一度つかんだお客を手放さないことに価値はある。一般的に、既存のお客を維持するコストの方が、新規のお客を獲得するコストより小さいだからだ。反復購入が多いビジネスをするなら、既存顧客の維持は最重要課題となる。
 
そこで、企業はお客の引き止めを目指すのだが、ここで無理な囲い込みを行なうとおかしなことになってしまう。お客が逃げられないような強引な仕組みをつくるパターンだ。そんな方法でお客を引き止めることに成功しても、その人たちはサービスに不満を募らせるばかり。かなりの無理を抱え込んでいることになる。もちろん、こういうやり方も商売といえば商売だが、顧客が満足していないという時限爆弾を抱えている。マーケティングの視点で考える限り、オススメはできない。
 
引き止めのために行なうべきは、お客を「やみつき」にさせるアプローチだ。
そのサービスを一度使ったら「便利過ぎて他は使えない」と思わせる。サービスが提供するベネフィットに独自性があればこれは可能だ。これが正しい引き止め策となる。
 
当然、「やみつき」にさせるのは容易ではない。しかし、だからといって安易に無理な囲い込みをすれば、いつかしっぺ返しにあう。こんなことを書くと綺麗ごとだと思うかも知れないが、企業にとって最も大切なのは信頼だ。無理な囲い込みを行なって不興を買えば取り返しの付かないことになる。
 
お客を引き止めるなら、「囲い込み」より「やみつき」がいい。
このことを忘れず、マーケティング活動を行なって欲しいものだ。

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