毎日わかる経済指標は役立たない!?


この記事の所要時間: 310秒 〜 410秒程度(1835文字)


日本政府が新しいマクロ経済指標をつくろうとしている。何ごとを為すにしても、現状をしっかり把握することがスタート地点。経済の仕組みが大きく変わっていく中、新指標作成に取り組む姿勢は素晴らしい(参考:政府がビッグデータ活用した新マクロ指数作成へ、世界初の試み 政策対応迅速に|Reuturs)。
 
さて、このマクロ経済指標。詳細についてはこれから検討されるようだが、記事を読む限りポイントは以下の3点だ。

 ①景気と連動性が高いビッグデータの活用

 ②指標作成の迅速化

 ③対象期間の短期化

今まで観測できなかったようなビッグデータを用いることにより、指標の精度と即時性を向上させようとしている。現在使っている景気動向指数で景気の山・谷が決まるのは1年以上経ってから。景気判断のタイミングを早めることで、素早い景気対策を行なうという狙いは極めて明解だ。
 
ただし、経済指標を算出する対象期間の短期化には疑問がある。記事には「新指数の作成頻度を毎日とするか週単位とするかなども検討」とあるが、俄に信じ難い。これを実現すれば、「昨日は一昨日より景気が悪かった」、「どうやら先々週が景気の谷らしい」というようなことになり兼ねない。精度の高い経済指標ができて、これらの景気判断が正しかったとしても、こんな情報は混乱を招くだけだと考えられる。なぜなら、データを短期化していけば、ノイズが増えるのは必至だからだ。
 

Photo credit : Nukamari / Foter / CC BY-NC-ND Photo credit : Nukamari / Foter / CC BY-NC-ND

 


上り調子の株式相場でも・・・


データを短期化して見たときの問題点を株式相場の例で説明しよう(参考:『まぐれ』ナシーム・ニコラス・タレブ/ダイヤモンド社)。
 
この1年、日本の株式相場は好調だ。東京証券取引所の日経平均株価は、昨年10月1日の始値が8,815.07円、本日9月30日の終値が14,455.80 円。実に5,640.73円(64%)の上昇となっている。途中に行きつ戻りつはあるものの、大きな傾向として株価が上り調子なのは間違いない。
 
これを月単位で見るとどうなるだろうか(参考:Yahoo!ファイナンス)。
前月最終営業日の終値と当月最終営業日の終値を比較した場合、12か月中8か月が上昇、4か月が下落となっている。1年の傾向は「上げ相場」でも、短期で見ると33%の「下げ相場」が混じってくるのだ。この「下げ相場」の比率は週単位で見ると29%(52週中週15週)、日単位で見ると実に44%(245営業日中108日)となる。全体としての傾向が、部分にまで及ぶとは限らない。短期で見たデータには、「下げ相場」というノイズが多く含まれるのだ。
 
新しい経済指標でもこれと同じようなことが起きる可能性は高い。長期間で見れば好景気なのに、ある期間だけを切り取るとたまたま不景気に見えることは珍しくないだろう。短期間のデータを見ると、このような危険が生じる。日単位や週単位の経済指標に一喜一憂して経済対策をするようなことになれば、たくさんの無用な政策を行なうことになり兼ねない。指標作成の迅速化と対象期間の短期化をしっかりわけて考えることが大切だ。
 


ポイントは匙加減


多くの人は、データを細かく分析すればより詳細なことがわかると考えがちだ。確かに細かな分析を行なえば、たくさんの分析結果を得ることができる。しかし、それらの分析結果が意味のある情報になるとは限らない。重箱の隅をつつくような事態になることもあるのだ。
 
ビジネス全般に言えることだが、世の中が成熟すると勝敗をわけるポイントは匙加減になる。「安いものをつくれば売れる」、「少しでも性能の良い製品を開発すれば競争に勝てる」のならビジネスは簡単だ。しかし、今の時代のビジネスはそこまで単純ではない。「安さ」や「性能」を程よい匙加減でコントロールして、消費者に魅力的なを価値つくる必要がある。誰もが支持する一直線の価値観が存在しないからこそ、現代のビジネスは難しいし、おもしろみがあるのだ。
 
データ活用も同じことだ。何もかも細かく分析すればいいというものではない。どんな分析も、適切なレベルの詳細度で行なわないと、焦点が合わなくなってしまう。データ活用においては、そのデータに合った細かさを見付けるセンスが重要になる。

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