広告と買い物の因果関係はまぼろしか!?


この記事の所要時間: 250秒 〜 350秒程度(1690文字)


原因結果の関係を考えるのは難しい。例えば、ある現象とある現象が連続して起きた場合、そこに因果関係があるように思ってしまいがちだが、必ずしもそうとは限らない。お酒を飲み過ぎて気持ち悪くなったとしても、ランチで食べた刺し身に当たっただけかも知れない。社長が交代して会社の業績が向上したら新社長の功績のように思ってしまうが、前任者の従業員教育がやっと花開いた可能性もあるし、市場環境が好転しただけとも考えられる。
 
これらの例を挙げるまでもなく、日ごろ何となく考えている因果関係にはかなりいい加減なものも多い。結果から原因を推測する話を聞いていると、「それ、違う!」と思うことがしばしばだ。日常生活でそこまで因果を突き詰めて考える必要がないというのもあるが、聞き流せない場合も少なくない。
 
同じような現象についてたくさんの事例を集めて、その関係を分析すれば多少はまともな因果関係を推測できるが、それとて完璧ではない。事例の集め方や捉え方で、結果は大きく変わってくるからだ。人は、起こった現象の原因を簡単に特定しようとするが、実際にはかなり難しい作業と言える。
 
さて、因果関係の誤解について、おもしろい記事を目にした。Webユーザビリティ研究の第一人者であるヤコブ・ニールセンの書いたインターネットでのアクティビティバイアスは、ユーザーの行動にムラを作る|U-Siteという記事だ。ニールセンはYahoo!とeBayのスタッフが書いた論文を取り上げ、広告と買い物の因果関係はまぼろしかも知れないと疑問を呈する。
 

Photo credit : alles-schlumpf / Foter / CC BY-NC-SA Photo credit : alles-schlumpf / Foter / CC BY-NC-SA

 


インターネット利用が活発な日には、広告を見るし、買い物もする


ニールセンは広告と買い物にまったく関係がないと言っているわけではない。広告を見ることと買い物をすることが連動していても、広告が買い物の原因ではないかも知れないと言っているのだ。人々がどれだけインターネットを使うかは日によってバラツキがあり、インターネット利用が活発な日には、いっぱい広告を見るし、たくさん買い物もするので両者に因果関係があるように見えるという。
 
図示してみると、わかりやすいだろう。

広告と買い物の因果関係

「広告」が原因で「買い物」が結果なのではなく、「インターネット利用が活発」が原因で「広告」も「買い物」も結果ということだ。もちろん、この因果関係がすべての場合に当てはまるかはわからないが、記事で紹介されているデータはこの因果の可能性を示している。
 


コンサルティングと経営改善の関係も同じ構図?


この記事を読んで考えてしまったのが、コンサルティングと経営改善の関係だ。コンサルティングによって企業の経営は改善されるが、両者の因果関係はまぼろしかも知れない。
 
多くの場合、企業がコンサルティングを依頼するのは、企業活動が活発化しているときだ。「今のままで充分」と思っているときにコンサルティングを頼む企業は少ない。そして、コンサルティングをきっかけに何かをすることで経営改善がなされる。コンサルティングをしなくても、企業活動が活発ならば何らかの成果を出せる可能性はあるだろう。つまり、「企業活動の活発化」が原因で、「コンサルティング」と「経営改善」は両方とも結果と見ることもできるのだ。
 


それでもコンサルティングは役に立つ!


さて、こう書くとコンサルティングに価値がないようだがそれは違う。企業活動が活発化しても、見当違いの方向を目指したり、非効率な努力をしたりする企業は後を絶たない。企業の「中の人」がいくら優秀でも、通常業務とは毛色の違う「経営改善」に取り組むのは難しい。
 
そこで、活発化した企業が道を踏み外さないよう、手を差し伸べたり、背中を押したりする。これがコンサルティングの一つの役割だ。実際に経営を改善するのは企業の「中の人」だからこそ、それにアドバイスするコンサルティングが役に立つと考えている。

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