お年玉を現金にしても年賀状が増えない理由


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季節はずれの陽気が続いていても、すでに10月半ば。11月の声を聞くようになれば、急に寒くなってくる。年賀はがきが売り出され、酉の市がはじまり、クリスマスの飾り付けが街に登場し、一気に年末を感じるようになるのは例年のことだ。
 
年賀はがきの発行枚数は2003年度(2004年用)の44億6千万枚をピークに減少傾向にある。2012年度(2013年用)の発行枚数は34億3千万枚となり、ピークと比較して20%以上、10億枚を超える減少。断片的なデータでしか確認できなかったものの、販売枚数や配達枚数も減っているようだ。「年賀状離れ」という言葉もよく耳にする。
 
この「年賀状離れ」を食い止めるため、日本郵便は2014年用お年玉付き年賀はがきの1等賞品を変更するという。新しい「お年玉」は現金1万円。これまで100万本に1本だった1等の当選確率を10万本に1本に高め、「お年玉」の強化で巻き返しを狙う(参考:年賀はがき、1等は1万円=初の現金プレゼント-日本郵便|時事通信)。
 
この現金1万円の「お年玉」。貰えば確かに嬉しいが、これで年賀はがきの販売枚数が増えるとは考え難い。「お年玉」が豪華になったからといって、年賀状の枚数を増やす人はいないと考えられるからだ。
 

Photo credit : yossie_asym / Foter / CC BY-NC-ND Photo credit : yossie_asym / Foter / CC BY-NC-ND

 


商品購入につながる満足、つながらない満足


一般的に考えて、商品には中核的な機能と周辺的な機能がある。その機能がないと商品として成立しない中核部分と、それ以外の周辺部分だ。ある商品が世に出たとき、最初は中核部分の良し悪しが競争軸になる。しかし、商品が成熟してくると中核部分はどの商品でも同じようなレベルに達するため、周辺部分での競争も活発になってくる。現在、この周辺部分の競争が繰り広げられているのがノートパソコンやデジタルカメラだろう。
 
周辺機能の競争では、お客に「ちょっといい」と思わせることが重要になる。商品の中核機能は似通っているので、「すごくいい」と感じさせることはとても難しいためだ。もちろん、アップルがデザインをコンピュータの競争軸に仕立てあげたように、「すごくいい」を成し遂げられることもある。しかし、これは極めて特別な事例だと考えれられる。
 
ここで問題となるのが、周辺機能の「ちょっといい」を「買いたい」に変えられるかどうかだ。周辺部分においても、商品を改善することはお客の満足を向上させる。しかし、満足には商品購入につながる満足とつながらない満足がある。もちろん、少しでもお客の満足を高めることは素晴らしいが、ビジネスライクに考えると、購入につながらない満足を向上させても「無駄な努力」、「自己満足」ということもできるのだ。
 


「お年玉」強化は「出したい」につながるか?


年賀はがきにおいて「お年玉」は周辺機能となる。「お年玉」が変わることで年賀はがきの満足が向上しても、それが「出したい」につながらなければ意味はない。この満足が、年賀状のこれまで以上の販売を促進するかが問題となる。
 
さて、想像してみて欲しい。
今まで年賀状を書かなかった人が、「お年玉」が豪華になったからといって年賀状を出す姿が思い浮かぶだろうか。今年から「お年玉」が現金1万円になったのを知って、昨年より年賀状を増やそうとする人がイメージできるだろうか。なかなか考えられないだろう。
 
「お年玉」の強化が満足の向上につながったとしても、それは「出したい」=商品購入につながらない満足だ。販売枚数の増加が実現できるとは考え難い。
 


ポジションの見直しを・・・


年賀はがきの販売枚数を増加させるために必要なのは、年賀状の新しいポジションだろう。気軽に電話を掛けたりメールを送ったりすることができ、TwitterやFacebookなどのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)でコミュニケーションを取っている現在、これまでと同じ位置づけで年賀状を売り続けるのは難しい。年に一度、書面に住所を書いて年賀状を送ることにどんな価値があるのか。この部分を改めて価値付ける時期に来ているように思う。
 
すっかり時代遅れに見える電報は、慶弔電報を前面に押し出すことでどうにか生き残っている。今では慶弔電報の比率が95%を超えている状態だ。これがなかったら電報事業自体がなくなってしまっても不思議はない。年賀状がこれと同じとは言わないが、ポジションを見直す作業は有効だ。
 
そして、ポジションの見直しは余裕があるうちにやった方がいい。後手に回れば、さまざまなアイデアを試す時間もお金もなくなってしまうからだ。団塊世代の退職、デジタルネイティブ世代の増加など、年賀状を減らす要因は事欠かない。余裕があるうちに、そもそものポジションを見直す取り組みが大切だと思うのだが、いかがだろうか。

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