日経トレンディの2013年ヒット商品は早過ぎる


この記事の所要時間: 350秒 〜 450秒程度(2171文字)


『日経トレンディ』が2013年ヒット商品ベスト30を発表した(参考:「2013年ヒット商品ベスト30」が発表! 1位は「コンビニコーヒー」)。

1位 コンビニコーヒー
2位 パズル&ドラゴンズ
3位 アベノミクス消費

 
ランキングについては「そんなものか」と思う程度だが、いつも引っ掛かるのが発表のタイミングだ。10月末という時期は、1年を振り返るにしては早過ぎる。いろいろ事情はあるにせよ、こんな不自然なタイミングで年間のヒット商品を発表していては、せっかくのランキングの価値がだんだん下がってしまうだろう。
 

Photo credit : romana klee / CC BY-SA Photo credit : romana klee / CC BY-SA

 


いい加減なランキング?


実は、この2013年ヒット商品ベスト30には「集計期間中(2012年10月から2013年9月まで)に発表された商品やサービス」という注釈が付いている。ここでいう「2013年」とは、あくまで「2012年10月から2013年9月」のことなのだ。ランキングはこれに合わせてつくられているので、そこに定義としての間違いはない。
 
ただ、多くの人が「2013年ヒット商品」として思い浮かべるものと『日経トレンディ』の定義には相違がある。「2013年ヒット商品」というラベルと、発表された内容がフィットしていないとも言えよう。その結果、どこにも間違いはないにしても、何とも間抜けなランキングが出現することになる。対象が2013年1年間ではない2013年ランキングが広く流布されてしまうのだ。
 
何でこんな不自然な集計期間になるかといえば、年内に、しかも他誌に先んじてランキングを発表して話題を集めるためだろう。年が明けてしまえば前年のことは話題になり難いし、ランキングがさまざまなメディアで評判になるには一定の時間が掛かる。影響力を最大化するために、ランキングをこのタイミングで発表するという戦略は理解できる。
 
しかし、そのために失っているものも大きい。「2013年ヒット商品」というラベルとその定義が一致しないことで、多くの人がこのランキングを軽んじる可能性があるのだ。10月末に年間ランキングでは、いい加減なランキングのように見えてしまっても仕方ない。ランキングに本気さが感じられず、相手にしない人も多くなりそうだ。
 


超えてはいけない一線がある!


ランキングは「少しでも早く」発表した方が価値が高い。先週1週間(月曜〜日曜)のランキングが週明けの月曜日に発表できるなら、火曜日や水曜日に発表するよりいいに決まっている。月曜日の夜中にランキングを算出して朝刊や朝の情報番組に間に合えば、それに越したことはない。
 
ただ、1週間のランキングが日曜日の夕方に発表されたらどうだろう。日曜正午までの結果から正しいランキングを推測できるとしても、その結果を信用できないと感じる人は多い筈だ。いくら「少しでも早く」が求められているにせよ、物ごとには超えてはいけない一線がある。行き過ぎると、そのランキングの位置付けがわからなくなり、価値が認められなくなってしまうのだ。
 
個人的な感覚で言えば、年間ランキングは多少のフライングがあっていいように思う。1年間の場合、元々の期間が長いので、その発表が12月の中旬や下旬ならばそんなに不自然さを感じない。しかし、それにしても10月末は早過ぎる。「少しでも早く」を目指すあまり、本来の目的を見失ってしまったように思えてならない。
 


「手段の目的化」にご用心


ランキングを発表するならば、その価値を少しでも高めたいと考えるのは当然だ。そのために、「少しでも早く」の実現を目指すのも何ら間違いではない。しかし、こういうことを続けていると、いつのまにか本来の目的を忘れて手段ばかりを重視してしまうことがある。いわゆる「手段の目的化」だ。「2013年ヒット商品」でいえば、ランキングの価値向上を脇に置いて、手段である「少しでも早く」だけが優先されるようになる。目の前にあるわかりやすい評価軸ばかり注目するようになってしまうのだ。
 
手段が目的化してしまい、本来の目的からかけ離れた手段の達成を追い求めてしまうパターンは多い。画質がキレイ過ぎる4Kテレビ、使わない機能だらけの携帯電話などは、この典型といえる。画質のキレイさ、機能の多さは商品の魅力を高めるために必要だが、それ自体が目的になってしまうとおかしなことになる。
 
画質のキレイさであれ、機能の多さであれ、ある一線を超えてしまうと多くの消費者は喜ばなくなる。「どうでもいい」、「かえって邪魔」となるのだ。このとき、一般的な感覚を失わず、おかしいものはおかしいと気づくことが大切になる。「10月末の年間ランキングは不自然」という視点を忘れてはならない。
 
作業をしている中では、渦中の人となることが必要なときもある。しかし、だからこそ、あえて一歩引いて常識的にモノを見ることが役に立つ。成功を引き寄せるためには、「手段の目的化」に用心することが欠かせないのだ。「手段の目的化」はどこにでもある。これを機会にちょっとチェックしてみてはいかがだろうか。

  1. コメントはまだありません。

  1. トラックバックはまだありません。

This blog is kept spam free by WP-SpamFree.