『現代用語の基礎知識』はいつまで続く?


この記事の所要時間: 410秒 〜 510秒程度(2353文字)


先週木曜日、『現代用語の基礎知識2014』(自由国民社)が発売された。創刊は第二次世界大戦終了から間もない1948年。今年で66周年を迎えるという。
 
さて、長い歴史のある『現代用語の基礎知識』だが、新聞広告で今年の発売を知ったとき、正直言って「まだ、売っていたのか!」と驚いた。どんなことでもインターネットですぐに検索できる今の時代、1年に1回しか改訂しない紙媒体での現代用語の紹介はもはや時代遅れ、すでに使命を果たしたと思っていたのだ。
 
そして、次に考えたのが『現代用語の基礎知識』は「果たしていつまで続くのだろう」、「どのような終焉を迎えるのだろう」ということだ。余計なお世話なのは間違いものの、この事典の行く末はちょっと気になる。
 

Photo credit : Nicholas Canup / CC BY Photo credit : Nicholas Canup / CC BY

 


インターネットが無かった時代の遺物?


少なくとも20年くらい前まで、『現代用語の基礎知識』は輝いていた。当時は、新しい用語は次々と生まれるのに、その意味を調べる方法がない時代。図書館に行っても新しい用語が載っている辞書や事典はほとんど無く、新聞や雑誌を調べるにしても「検索」ができないので膨大な時間が掛かる。そんなとき、『現代用語の基礎知識』を開けば新しい用語の意味が簡単にわかるのだから価値がある。実際に使う機会は少なくても、手元に置いておきたいと思ったものだ。
 
しかし、インターネットが広く普及し、コンテンツも充実してきた今の時代、わからない用語は検索すればいい。Googleなどの検索エンジンで調べれば、新しい用語どころかまだ意味がはっきりしていない未定義の用語までヒットする。スマートフォンを持ち歩いているなら、いつでもどこでも用語の意味を知るのに困ることはない。
 
このような環境変化の中、1,660ページの大部となる『現代用語の基礎知識』はいかにももっさりしている。『現代用語の基礎知識』を「インターネットが無かった時代の遺物」と考える人は自分だけではない筈だ。
 


たとえ競争優位があったとしても・・・


『現代用語の基礎知識』とインターネット検索を較べて競争優位を見出すなら、「信用」と「一覧性」だろうか。
 
長い歴史を通して選ばれた執筆陣が書く用語解説は、インターネット上の情報にはない「信用」がある。誰が書いたかわからないWikipediaの情報よりも、正しい感じがするのは間違いないだろう。インターネット上にも「信用」できる情報は多いし、『現代用語の基礎知識』にも「信用」できない情報は含まれると考えられるが、まだまだ『現代用語の基礎知識』の方が粒が揃っている。
 
紙媒体ならではの「一覧性」もインターネットにはない利点だ。あるジャンルについての情報をまとめて素早く見たいのなら、『現代用語の基礎知識』の方が有利となる。何せインターネットのページを読み込むよりも紙のページをめくる方が早いし、紙媒体の視認性はパソコンやスマートフォンの画面より今でも優れている。
 
ただし、これらの競争優位があったとしても、『現代用語の基礎知識』の苦境は変わらない。理屈では『現代用語の基礎知識』が良いとわかっていても、身近にあるインターネットで済ます人が多いと考えられるからだ。良いものだからといって利用されるとは限らない。この程度の競争優位では、人の「面倒臭い」という気持ちに負けてしまう。
 


残された道は「名誉ある撤退」?


さて、厳しい状態に追い込まれている『現代用語の基礎知識』だが、残存者利益を享受しているという見立てもできる。すでに売上高が減少傾向にある商品ジャンルでも、一定数の販売があるのなら利益が出る。市場から競合他社が撤退すれば競争が緩やかになるので、細々ながら確実に利益を得られるという訳だ。この種の事典のパイオニアである『現代用語の基礎知識』が、『イミダス』と『知恵蔵』が去った今、その残存者利益を得るのは当然のように思う。
 
とは言え、残存者利益にも限界がある。発行部数がある水準を切ってしまえば利益が出なくなると考えられるからだ。現時点でどのくらいの余裕があるかはわからないが、売上高が減少傾向にあるのなら、先を見据えた計画作成が必要になる。だらだらと続けて少しずつ追い込まれていくと、何も手が打てなくなってしまう。どうにかなっているうちに、先手を取らなくてはいけない。
 
理想的なのはポジションの変更だ。『現代用語の基礎知識』の位置付けを「現代用語の意味がわかる」から、今の時代にあったポジションに変えられれば生き残りが可能になる。ただし、紙媒体で発行したものをデジタル化するだけではポジション変更にならないので、インターネット検索との差別化ができない。ポジション変更を目指すなら『現代用語の基礎知識』にしかつくれない新しい価値を生み出さなくてはいけないのだ。そして、これはなかなか容易ではない。ポジション変更ができればそれに越したことはないが、難しいのが現実だろう。
 
ポジション変更ができないなら、残された道は「名誉ある撤退」しかないだろう。いろいろな対策を行なうことで多少の延命はできるかも知れないが、ポジションを変えられない限り大きな効果は期待しにくい。延命策のせいでそもそものポジションがおかしくなるビジネスも多い中、ジタバタせずに「名誉ある撤退」を選ぶのも一つの道のように思う。
 
ある時代における『現代用語の基礎知識』の価値を認めるからこそ、最後は計画的に美しく終焉してもらいたい。外野からの無責任な意見ながら、そんなことを考えた。

  1. コメントはまだありません。

  1. トラックバックはまだありません。

This blog is kept spam free by WP-SpamFree.