100万台は実売数? 大きな数値に気をつけろ!


この記事の所要時間: 410秒 〜 510秒程度(2345文字)


年末商戦を控え、新型ゲーム機が相次いで発売された。ソニー・コンピュータエンタテインメントの「プレイステーション4」とマイクロソフトの「XboxOne」だ。ともに日本での発売は来年2014年となるが、ゲーム市場に大きな変化が見られる中、注目を集めるのは間違いないだろう。
 
さて、これら両商品について次のようなニュースがあった。
 ●ソニーのPS4、北米発売初日で100万台超販売|WSJ.com
 ●マイクロソフトの新型Xbox、初日の販売100万台超|WSJ.com
どうやら、それぞれ初日に100万台販売されたらしいのだ。
 
記事を読む限り、販売台数はマスコミ等の推測ではなく両社の発表。何らかの事実に基づいた数値なのだろうが、あまりに出来過ぎた話で「ホントかよ!」と突っ込みたくなる。にわかに信じ難い。
 

Photo credit : Alan O'Rourke / CC BY Photo credit : Alan O’Rourke / CC BY

 


サムスンはスマートウォッチ80万台を「出荷」した


なぜ台数に引っ掛かったかといえば、少し前、韓国サムソン電子のスマートウォッチ(腕時計型端末)「ギャラクシー・ギア」を巡ってかなり怪しいニュースがあったためだ。
 
当初、韓国サムスンの腕時計型端末、発売2カ月で80万台販売|Reutersというニュースが報じられた。ネットで酷評されている同商品の好調さに驚いていると、新たに韓国サムスン 、ウエアラブル端末でも先行 発売2カ月で80万台出荷|Reutersというニュースが登場。「販売」が「出荷」に修正されたのだ。後の方の記事には、「サムスンは当初、80万台を販売台数として発表したが、その後小売り店や通信会社への出荷台数に修正した」とある。
 
言葉の意味は国家や文化、業界や企業によって少しずつ異なるので、そこで何らかの取り違いが生じたのだろう。サムソン電子の発表に故意による誇張があったかはわからないが、大々的に報道される数値の危うさを示す事例と言える。何せ「販売」と「出荷」では大違いだ。理屈で言えば、80万台出荷して1台も売れてない可能性すら残る。
 


数値の意味をしっかり確認しよう!


大きな数値が報道されると、数値ばかりに目が行ってしまい、その数値が何を意味するのか厳密に捉え損なうことがある。「販売」と「出荷」は間違えないにしても、何をもって「販売」としているかを見落とすのだ。また、数値にはいろいろな注意書きが付きもので、これらを見落とすことも多い。「よく売れているな」と思ったら、「○○年からの累計販売数」という注釈があったりする。
 
ニュースで報道される大きな数値に惑わされないためには、数値ばかりに目を奪われることなく、その意味をしっかり確認することが大切だ。具体的には、「誰が発表した数値なのか」、「発表者はどんな意図を持っているのか」、「その数値はどうやったら把握できるのか」などを考えるといい。
 
冒頭のゲーム機の例で言うなら、発表者はメーカー自体なので数値そのものは信用できる。「販売」の定義はわからないものの、ある数え方をすれば100万台になる筈だ。発表の意図は「たくさん売れているので、みんなで買いましょう!」といったところか。なるべく大きな数値を発表して消費者を刺激したいのは確かだろう。そして、実際のエンドユーザーへの販売台数把握がかなり難しいことも想像できる。インターネットを通じた直接販売ならいざ知らず、全世界の小売店で商品が「販売済み」か「在庫中」かを調査するのは極めて困難だ。確実に「販売済み」と判明した分だけを集計している可能性はあるものの、「100万台」が本当に正しい実売数なのかは疑わしいように思う。
 


強調は「程々」に・・・


一方、ビジネスマンとしては情報を発信する企業の立場で考えることも必要になる。
 
新商品を発表するときなどに、少しでもいい情報を強調したいと考えるのはどの企業でも変わりない。偽装まではしないにしても、虚偽のない範囲で大袈裟な表現になることは避け難いだろう。商品の魅力をより効果的に伝える広報戦略もマーケティング活動の一部。ある種の手練手管がほどこされる。
 
中には、「一部で大人気」とか「話題沸騰中」とか、ウラの取りようがない言葉遣いもしばしば見受けられる。ヒットしていない映画の「絶賛公開中」もこの類だ。一般的な消費者に見向きもされずコアな信奉者だけが見に行くような映画は、見た人ベースでは「大絶賛!」となり易い。どこにも嘘はなくても、何とも不自然な感じが残る。
 
もちろん、こういう怪しい言葉遣いを続けると信頼を失うことになる。テレビCMで映画が「絶賛公開中!」とされても信じない人は多いだろう。ここで大切になるのが「程々」ということだ。
 
企業が何かを発表するとき、それは実際よりも素晴らしい内容になりがちだ。自信を持って発表するのだから、多少の強調は仕方がない。消費者もそれはわかっている。しかし、その強調が過ぎると、信頼が損なわれることになる。ここまでがセーフでここからがアウトというものではないからこそ、「程々」にする自己制御が必要になるのだ。
 
短期的に考えれば、少し踏み込んでも良い点を強調することが成功を導くかも知れない。しかし、企業の発展を永続したいなら踏み込み過ぎは禁物だ。「あの企業の広報発表は、大袈裟で信頼ならない」と思われてしまったら、長期的に大きなマイナスになる。
 
何ごとも「過ぎたるは猶及ばざるがごとし」。消費者と良い関係を築くためには、強調は「程々」にするのが現実的となる。

    • たけ
    • 2013年 12月4日

    SONYはこれまで出荷量を発表してました。ただ今回はあえて実売と言っているので、なんらかの推計に基づく物だと思います。

    今時ゲームはほぼネットに接続されますし、販売店も大きいところなら売れた数はシステムですぐに把握できますからねぇ。そういう意味では今後販売台数の集計が困難という状況はなくなっていくでしょう。

    企業によっては実売と出荷を同視してる所もあるので、確かにその間違いは気をつけるべきですね。

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