中華料理店、エビよりご飯で差別化を!


この記事の所要時間: 330秒 〜 430秒程度(1966文字)


食品偽装のニュースが続いている。次から次へと新たな偽装が発覚するものの、これまでと較べて驚くような案件は少なく、最近は「あっ、またか」と思う程度。いささか食傷気味になってきている。
 
食品偽装の報道を見ていて考えるのは、「素材がそんなに大切なのか」という素朴な疑問だ。例えば、エビのチリソース炒め。超がつく高級店の逸品ならいざ知らず、普通の街場の中華料理店で芝エビを使おうとバナメイエビを使おうと、出来上がりに大差は無いように思ってしまう。どんなエビを使うかより、炒め方やチリソースの味で出来不出来が決まると考えられるからだ。あんな大味の料理で、素材の細かな違いをどうこう言っても意味がないだろう。素材の良し悪しが大きく影響する天ぷらならばエビの種類や品質にこだわるのもわかるが、エビチリで重要なのはそこじゃない。
 
お客に伝えやすい競争軸を見付けると、多くの企業がその軸で競おうとする。炒め方やチリソースの味よりも、エビの種類や品質の方が誰にもわかりやすいので、ついついそこを強調してしまうのだ。そして、これが過剰になるとおかしなことになってくる。最初は「高級食材のエビを使いました」でお客にアピールできていたものが、ライバル店も同じようにエビを使うようになると、「芝エビを使っています」、「我が店の芝エビは○○産です」、「○○産の芝エビの中でも特に厳選された最上級の素材を使用しています」となってしまうのだ。
 
もちろん、消費者がこれらのラベルに反応するならそういうマーケティングも仕方がない。しかし、エビの種類や品質が実際には料理の味にあまり影響しないのなら、虚しい競争をしていることになる。「どうせ味に大差はないのだから、他のエビを使ってもわからない」となる背景には、こんなことも影響してそうに思う。
 
さて、ライバルとエビの種類や品質で競うよりも良い方法がある。それは、みずから新しい競争軸を提示することだ。もし自分が中華料理店を経営するのなら、エビの種類よりもご飯の旨さで争うだろう。その方が確実に差別化できそうだからだ。
 

Photo credit : andrea castelli / CC BY Photo credit : andrea castelli / CC BY

 


ご飯が旨けりゃ差別化になる?


中華料理でよく感じるのは、ご飯のまずさだ。変にパサパサしていてお米の旨みがまったく感じられない。夫婦でやっているような町の庶民的な中華屋だけならまだしも、かなりまともな店構えの中華料理店でもご飯がまずい店は多い。食べ物については個人の好みも大きいが、中華のご飯のまずさについては共感する人が多いように思っている。
 
確かに、中華料理店はご飯の質で競うものではない。腕の良い料理人がつくる料理自体で差別化を図るのが王道だ。しかし、多くのお客がそこに不満を持っているのなら、ご飯の旨さは充分な競争軸になるだろう。
 
ライバルも努力しているエビで競争するよりも、他店が力を入れてないご飯で争う方が容易なのは間違いない。もちろん、毎日確実に消費される基本的な食材に掛けるコストを上げるのは厳しいが、それでも、同じ軸で争うより勝算があるように思われる。
 


新しい競争軸を提案しよう!


今の世の中、競争軸が見えにくくなっている。どのような商品ジャンルでも、長い年月を経ることで多くの商品の完成度が上がり、どれを買っても「そこそこ満足」できるからだ。核となる機能はどの商品でも満たされているため、周辺部分で争うことになる。
 
しかし、周辺で争うのは難しい。例えばパソコンを考えた場合、処理速度で争うのはわかりやすいが、使い勝手で争うのはわかりにくいのだ。その結果、あるメーカーが一つの競争軸を持ち出すとすると、みんながそれに追随することになる。中華料理の例で言えば、素材の良さを競うことになる。でも、その同じ競争軸で争っている限り厳しい状態が続く。ライバル各社が注力しているところで争えば、競争が激化するのは当然だ。
 
このとき、新しい競争軸を提案することが有効になる。つまり、「エビは普通だけど、ご飯はおいしいです」とするのだ。そして、ご飯のおいしさを重要と考えるお客を呼びこむことになる。もちろん、呼び込みたいお客を先に決めて、競争軸をつくってもいい。要は、ターゲッティングが先かポジショニングが先かという問題だ。
 
大事なのは、ライバルと同じ土俵で戦わないこと。既存の競争が厳しくなったら、新しい競争軸をつくるといい。新しい軸の案出は簡単じゃないが、成功すれば実りが大きいだろう。奇を衒うことなくお客の立場で考えれば、新しい競争軸はおのずと見えてくる。ぜひ、新しい競争軸の提案にトライしてもらいたいものだ。

  1. コメントはまだありません。

  1. トラックバックはまだありません。

This blog is kept spam free by WP-SpamFree.