ハロー効果による判断ミスを減らす方法


この記事の所要時間: 40秒 〜 50秒程度(2219文字)


心理学にハロー効果と呼ばれる理論がある。ある対象を評価をするときに、顕著な特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪められる現象のことで、認知バイアスの一種だ。「ハロー」とは太陽や月の周囲にできる光の輪のこと。見ようとしている対象に後光が差すと、目が眩んで判断力が鈍ってしまうことをあらわしているのだろう(参考:ハロー効果|ウィキペディア日本語版)。
 

Photo credit : AER Wilmington DE / CC BY Photo credit : AER Wilmington DE / CC BY

 
例えば、プロ野球などで言われる「名選手必ずしも名監督ならず」などもハロー効果の文脈で捉えることができる。名選手と呼ばれるような人は、こと野球に関してはすべての面で「素晴らしい」と考えがちだが、そうとは限らない。選手として求められる能力や資質と、監督として求められるそれらには大きな違いがあるからだ。しかし、名選手を監督として採用して失敗するケースは後を絶たない。その人物の「名選手」という顕著な特徴が、「監督」としての評価を歪めてしまっていると見立てれば、正にハロー効果の典型例と言えるだろう。
 
当然ながら、すべての事柄についていちいちゼロから良し悪しを評価、判断するのは現実的ではない。そんなことをしていたら、毎日毎日考えることが多過ぎて人間の処理能力はパンクしてしまう。まともな社会生活さえ送れないだろう。ハロー効果を「思考の近道」として使うことは、決して否定されるようなことではない。しかし、ハロー効果に騙されることが多いのも事実だ。生活の中のちょっとした判断なら「失敗しちゃった」で済むが、ビジネスにおける重要な判断ではその悪影響は大変な損害をもたらすことになる。一事が万事で判断していては大きな間違いを起こし兼ねない。ハロー効果の悪影響には、充分注意する必要があるのだ。
 


高級靴のブランドは素晴らしいスーツをつくれるか?


ビジネスの現場では、ハロー効果は採用や人事評価における注意点として挙げられることが多いが、他の局面でも意識するに越したことはない。人間の脳は少しでも楽をしようとするので、ちょっとでも隙があればハロー効果はすぐに顔を出すからだ。
 
営業マンが優秀だからといって良い取引先とは限らないし、見映えのいいアプリケーションだからといって使い易いかどうかはわからない。高級靴のブランドが素晴らしいスーツをつくれるかは未知数だし、製造業として実績を残した企業がサービス分野に進出して成功できるかは神のみぞ知ることだろう。
 
どこからどこまでをハロー効果というのが適切かはわからないが、ある一つの特徴に引っ張られて全体や他の部分の評価が歪むことは多い。そして、この誤った評価によって多くの損をするケースは多々見受けられる。すべての事柄についての検討は無理だとしても、重要な場面ではハロー効果が生じていないか入念にチェックした方が身のためだ。
 


ハロー効果を「カテゴリー適用の誤謬」と言い換えれば・・・


ハロー効果の悪影響はどこかしこに存在しているのに、「ハロー効果」という言葉はあまり耳にしない。頻繁に生じる困った現象があって、それに「ハロー効果」というラベルも付いているのに、その名称があまり使われていないのだ。「ハロー効果」という呼び方がもっと一般に浸透すれば、これによる悪影響を避け易くなるだろう。ラベルの効果は案外大きい。
 
この呼び方が浸透しない理由ははっきりわからないが、「ハロー効果」という言葉がピンと来ないことがその一因だと思われる。「ハロー」が何をあらわしているか直感的に思い浮かばず、更に「効果」という単語がプラスのイメージを持っているため、困った現象とマッチしないのだ。「ハロー効果」という言葉から悪影響を想像するのは難しいだろう。
 
そこで考えるのは、「ハロー効果」に別名を付けることだ。例えば、「カテゴリー適用の誤謬」と言い換えたらどうだろう。ハロー効果による間違いは、カテゴリー適用法で説明できるからだ。対象を何らかの基準(例えば「選手として」)で評価してあるカテゴリー(同「素晴らしい」)に分類し、そのカテゴリーを他の基準(同「監督として」)に適用するからおかしくなってしまう。別の基準なのに同じカテゴリーを適用するから間違いが起きるのだ。
 
「カテゴリー適用」なら意味もわかるし、「誤謬」からは誰もがマイナスをイメージする。このラベルならすぐに思い浮かび、ハロー効果を未然に防げると思うのだが。
 


評価基準を事前に決めよう!


ラベル云々は脇に置いて、ハロー効果による判断ミスを減らす方法を考えるなら、評価する前にその基準を設定するのが有効だ。あらかじめどうやって評価するかを決めていないから、特徴的な要因に引っ張られ易くなる。
 
例えば、「どのスーツがいいか」を何となく評価するのでなく、①デザイン、②縫製、③コストパフォーマンスで評価するとしておけば、判断ミスは少なくなる。もちろん、こういう評価基準を決めても特徴的な要因の影響が残るのは間違いないが、その影響がかなり小さくなるのは確かだ。
 
何かを評価するときは、事前に評価のフレームを決めることが欠かせない。ハロー効果の悪影響を受けないためにも、評価の前に基準を決める習慣を付けるといいだろう。

  1. コメントはまだありません。

  1. トラックバックはまだありません。

This blog is kept spam free by WP-SpamFree.