スティーブ・ジョブズの不都合な真実!?


この記事の所要時間: 320秒 〜 420秒程度(1921文字)


昨年公開された映画『スティーブ・ジョブズ』について、興味深い記事を目にした。GIGAZINEに掲載された映画「スティーブ・ジョブズ」に描かれなかったAppleの真実とは?という記事で、ジョブズとともにアップルコンピュータ(当時)を立ち上げたウォズことスティーブ・ウォズニアックからの反論だ。映画が公開されたときから「ジョブズの映画は間違っているところがたくさんある」とコメントしていた彼だが、今度は「女優カルメン・ペレスさんのGoogle+」で反論したらしい。
 
曰く、

 ●ジョブズがエンジニアやプログラマーであったことは一度もない
 ●Apple IIはウォズニアック氏が独力で開発した

など。これらの発言、ウォズ好きとしては全面的に支持したいが、冷静になれば事実は「神のみぞ知る」というのが妥当なところだろう。ウォズがこのような認識でいるのは間違いないとして、それを裏付ける根拠が示せそうにないからだ。
 

Apple

Photo credit : Sam Howzit / CC BY

 
それにしても考えさせられるのは、これだけ情報が豊富にある世の中になっても「事実」の同定がかなり難しいということだ。しかしそれでも、ビジネスで失敗したくないのなら、「事実」にこだわることは欠かせない。
 


ウォズの「真実」は「事実」じゃない!


事実にこだわるときに大切なのは、「事実」と「真実」をわけて考えることになる。言葉遊びをするつもりはないが、この二つの単語の意味を混同していては話がややこしくなるばかりだ。
 

「事実」は実際にあったことで、万人に認められる客観的な事柄であるのに対し、「真実」は主観的で偽ったり飾ったりしない本当のことという違いがある。

これは『角川類語新辞典』(大野晋、浜西正人/角川書店)にあった「真実」と「事実」の違いについての説明だ。実際にあった客観的な「事実」、主観的に本当である「真実」という解釈は一般的だろう。自分の言葉で言えば、「事実」は事柄の存在そのものであり、「真実」はそれに対する認識のうち「当人が本当だと思っていること」だ。
 
そして、このわけ方で考えると、ウォズの反論は「事実」というよりもウォズが本当だと思っている「真実」に過ぎない。万人が認めるような裏付けが取れない限り、別の人が考える別の「真実」があっても不思議はない。「事実」として存在したことと、それを見て認識に至った「真実」には大な違いがある。ウォズの指摘は映画『スティーブ・ジョブズ』にとって不都合な「真実」かも知れないが、「事実」とは限らないのだ。
 
記事中で裏付けが取れる事柄は、Apple IIの売上の部分だろうか。アップルコンピュータを支えていたかどうかはかなり主観的な事柄だが、アップルコンピュータの売上に占めるApple IIの構成比は財務諸表からわかる筈だ。また、Apple IIを開発する部署に誰が所属していたかはわかっても不思議がない。もちろん、誰が所属していても、肝腎な部分は全てウォズが考えた=「独力で開発」の可能性は残るが、所属者は「事実」として確認可能だろう。
 


ビジネスでは徹底的に事実にこだわる


ビジネスをめぐる議論では、事実とそれ以外のものが混在することが多い。誰かの真実はもちろんのこと、推測や予想だったり、主張や希望的観測だったりが、事実のようなふりをして顔を出すのだ。そして、それらに惑わされて判断を誤ることも多い。
 
だからこそ、ビジネスにおいては徹底的に事実にこだわることが有効になる。相手の発言のどの部分が事実で、どの部分が推測や主張なのか。慣れないうちは書き出してもみてもいい。そして、他人の真実などに惑わされず、事実のみに基づいてみずから考えることが価値を生む。
 
当然ながら、実際にあったこと自体をフラットに記憶・記録することはできないので、すべての事実は何らかの注釈付きだ。それでも、かなり事実に近いものとそうでないものがある。そして、それらを仕分けしてみると、意外と「事実」が少ないことに気付かされるだろう。
 
もちろん、ビジネスにおいては推測や予想、主張や希望的観測も大切だが、それと「事実」をわけて考えないと、思わぬところで足をすくわれることになる。ビジネで成功したいなら、万人に認められる客観的な事柄である「事実」に根ざして考えることが重要だ。

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