なぜ電源ボタンでシステム終了できないの?


この記事の所要時間: 340秒 〜 440秒程度(2062文字)


パソコンをシステム終了したいときには電源ボタンを押せばいい。パソコンを落とすために行なうこの極めて自然な操作が、最新のMacOSではできなくなっている。電源ボタンを押してもスリープ状態になるだけ。最初にこれを経験したときは、「なぜ電源ボタンでシステム終了できないの?」とかなり驚いてしまった。Macユーザーにとって、電源ボタンからシステム終了する操作はそれくらい自然なものだ。
 
MacOSとWindowsの違いは多々あるものの、「直感にあった操作性」ができるか否かはその核心部分と言える。そして、システム終了時の操作はその象徴のように思っていた。物理的な電源ボタンを押すだけのMacOSに対して、Windowsでは画面上のスタートボタンなどをクリックして当該メニューを呼び出さなくてはならない。どちらが直感に合っているかは一目瞭然だろう。
 
新しいMacOSでも、電源ボタンを「長押し」したり、「controlキー」と一緒に押したりすれば、今まで通りの終了作業が行なえる。システム終了か再起動かをたずねるダイアログが出てくるのだ。しかし、この「長押し」や「controlキー」といった一手間が「直感にあった操作性」を妨げている。賛否はあるのかも知れないが、やはりこの電源ボタンまわりの変更は「改悪」と言わざるを得ないように思う。
 
世の中にたくさんの機器が溢れ、そのほとんどをマニュアルなど読まずに使う人が多い現在、「直感に合った操作性」の価値は更に増していると考えられる。最近は、どうやったらその機器が使えるか、あまり考えなくてもわかるような商品が求められているようだ。ビジネスにおいても、「直感に合った操作性」を意識することは欠かせないと言えよう。
 

Photo credit : Brandon Daniel / CC BY-SA

Photo credit : Brandon Daniel / CC BY-SA

 


そのドアを引きますか? 押しますか?


目の前にドアがあるとしよう。引/押、PUSH/PULLなどの表示はなく、引いていいのか押していいのかわからない。このとき、人はどういう行動をするだろうか。
 
人は、ドアノブにあたる部分に四角い板のようなものが付いていればそこを押してドアを開けようとし、取っ手が付いていればそれを引いてドアを開けようとする。これは、ドナルド・A・ノーマンが『誰のためのデザイン?』(新曜社)などで紹介したアフォーダンスの考え方だ。モノのデザイン自体が、それを使用する人に対してある使い方を促していると考える。どこからどこまでがアフォーダンスなのかがよくわからないものの、正しい使い方が直感に伝わるデザインとそうでないデザインがあるのは間違いないだろう。押さなくては開かないドアに取っ手が付いていれば、間違ったメッセージが伝わって人はそのドアを引いてしまう。そうなればそのデザインのアフォーダンスは直感に訴えられていないことになるのだ。
 
そして、商品を考える上で、この「直感に合った操作性」を促すデザインが重要になる。プロダクトアウトで顧客の直感に合わないデザインをつくるのと、マーケットインで顧客の操作性に考慮したデザインをつくるのとでは、おのずと顧客の満足が大きく違ってくるのだ。顧客志向で考えるなら、マーケットインのアプローチでユーザビリティを高めるのが当然となる。
 


「直感に合った」書類づくりを!


さて、商品デザインについての話だと他人事のように思う人も多いだろうが、使いやすさについてのこのような考え方はウェブページや書類のデザインにも関わってくる。例えば、ウェブページでいうなら取り消しボタンと決定ボタンの位置関係、書類でいうなら結論の書かれている場所や文字の強調方法などが直感に合うことが必要なのだ。
 
もちろん、「必要」だと思えばすぐできるというようなことではないが、こればかりは心掛けない限り実現できない。書類等をつくるときに、直感に合っているかをチェックする習慣をつけることは大きな価値があるように思う。ユーザビリティの問題なので、その良さがすぐに直接的な効果としてあらわれることはあまりないし、効果の測定も難しいだろう。しかし、これを続ければ必ずや報いがあると信じている。なぜなら、使いやすさは満足を感じさせる基本となるからだ。
 
書類の見掛けには徹底的にこだわりたい。本質的ではない努力という人がいるが、書類は読まれて初めて価値がある。見掛けで「読みたくない」と思われてしまったら、その書類はその時点でおしまいなのだ。書類にうまい惹句を付けたり、目を引く画像を組み込んだりする方法などをよく見かけるが、直感に合うこともかなり重要だ。書類をしっかり読んでもらいたいなら、少し直感に合うことを心掛けてみてはいかがだろうか。

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