「これも一局」をオススメします


この記事の所要時間: 250秒 〜 350秒程度(1697文字)


テレビやニコ生で将棋の解説を見ていると、将棋の世界の言葉が一般にも浸透していることに気付かされる。先手を取る、筋が良い、手詰まりなど。普段の会話でもよく聞く言い回しが将棋の用語としてたくさん出てくるのだ。昔の人たちが日常の出来ごとを勝負に見立てるとき、身近にあった将棋の言葉を借用したのだろう。
 
将棋の言葉で最近おもしろいと思うのが「これも一局」という言い回しだ。対戦者が実際に打った手とは違う手でも、一つの戦法として「それもアリ」なときに用いる。例えば、「攻め」の好きな対戦者が攻撃的な手を指したとき、解説者が別の「守り」の手に対して「これも一局」と言ったりするのだ。その手を指せばまた「別の一局」が成立するという意味合いになる。
 
さて、「これも一局」からは、正解がはっきりしないときにさまざまな主張を認める姿勢が感じられる。見解の違いを脇に置き、他人の意見に対して極めて寛容な意思表明とも言えよう。何かとギスギスし易いビジネスの場でも、応用可能な言葉のように思われる。ぜひ、オススメしたい言い回しだ。
 

将棋

Photo credit : tenaciousme / CC BY


 


フレームの違いは議論しても仕方ない!


業績不振で苦しんでいる企業があるとき、財務的なアプローチとマーケティング的なアプローチのどちらが有効だろうか。コンサルタントが100人いれば100通りの主張が出てきそうだが、いずれにせよ正解はない。財務かマーケティングかはモノを見るフレームの違いであり、どちらのフレームも「正しく使用すれば有効になる」としか言いようがないのだ。流儀の違いと言ったら良いだろうか。どちらかが正解で、どちらがが間違いということではないのだ。
 
どちらが有効かを知りたいのなら、それぞれを実際にやってテストしてみてるしかない。どちらが大きな効果が出るか試してみるのだ。無責任なようだが、フレームの違いというのはそういうもの。フレームの違いを争って議論しても、あまり生産性のある話し合いはできない。流儀の違いで議論が噛み合わないから、議論するだけ時間の無駄となることが多いのだ。つまり、財務的なアプローチを取るかマーケティング的なアプローチを取るかは、議論をしても仕方ないことになる。
 


生産性のない議論をするより「これも一局」


もちろん、実際のビジネスの現場では予算、人員などの都合で一つのフレームしか実行できないことも多い。このとき、財務とマーケティングのどちらを優先するかが議論となるが、これに時間を掛けても後手に回るだけだ。財務で得られる効果、マーケティングで得られる効果などを比較することはできても、あくまで机上の空論。そこまで厳密な議論はできないので、そこを煮詰めても効果は限られる。
 
会議などで他人の議論を聞いていて、「どっちでもいいからとっとと決めて、内容を充実させた方がいい」と思うことがある。フレームを争う生産性のない議論より、内容を詰める生産性のある議論をした方が有効だからだ。しかし、これを言ってしまうといい加減な奴だと思われる。重要なのはどちらを取るかよりも、どちらか決めてから内容の議論を充実させることなのだが、これを理解してもらうことはなかなか難しい。
 
そこで「これも一局」の登場だ。ある程度議論を繰り返して結論が出ないなら、自分たちの主張を「これも一局」と認めてもらった上で、相手の主張を受け入れるといいだろう。相手の主張を「これも一局」とすれば角が立つので、折れることになるが仕方ない。その上で、相手の主張の内容について深い議論をすれば、フレームを争って時間をつぶすよりも大きな効果が期待できる。
 
生産性のない議論よりも生産性のある議論をした方が、最後は自分たちのためになる。
一つの割り切りとして、「これも一局」を実行してもらいたいものだ。

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