外国語表記でターゲッティング!?


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最近、「観光立国」の話題をよく目に耳にする。自分自身の関心が高まっているせいもあるが、多数の記事が掲載されているのは間違いない。2020年の東京オリンピックに向けて、観光産業は更なる注目を集めることだろう。
 
さて、そんな中、観光庁が「観光立国実現に向けた多言語対応の改善・強化のためのガイドライン」を策定した。観光地の案内板などで、外国人に対してどのような表記をすればよいかを示すガイドラインだ。大量の「対訳語一覧」を含む73ページの本編以外に、そのエッセンスを4ページにまとめた概要もあり、これがなかなかおもしろい。ぜひ、一見をオススメする。
 

国会議事堂前

Photo credit : JD Hancock / CC BY-SA


 


国会議事堂前は「Kokkai-Gijidomae(National Diet Bldg.)」


例えば、施設名などの表記のパターンとして次の3つが示されている。
 
1つ目は「固有名詞(ローマ字)+普通名詞(英語)」。翻訳できる部分のみ翻訳するパターンだ。成田空港はNarita Airport、日比谷公園はHibiya Parkということになる。

2つ目は「固有名詞(ローマ字)+普通名詞(ローマ字)+普通名詞(英語)」。固有名詞の部分だけ切り出したら意味がわからない場合に用いる。荒川をAra River、清水寺をKiyomizu Templeではわかり難いので、それぞれArakawa River、Kiyomizu-dera Templeとするのだ。kawaとRiver、deraとTempleで言葉が重複するのは気になるが、実用性を考えれば理に適った判断と言えるだろう。
 
そして、3つ目は「ローマ字で表記(必要に応じ英語で意味を補記)」となる。国会議事堂前を英訳すれば「National Diet Bldg.」だが、この表記だけでは今度は日本人がわからない。そこで、Kokkai-Gijidomae(National Diet Bldg.)にしようという案だ。苦肉の策のようではあるものの、これも実用性を考えれば仕方ないように思う。
 
普段あまり意識せずに使っている施設の名称でも、外国語に翻訳しようとすることで、それらにいろいろなタイプを発見できるのがおもしろい。このガイドラインは、企業名や商品名を翻訳するときの参考にもなるだろう。
 


ターゲッティングを認める!


興味を引かれたのが、表記の使いわけについてのいくつかの注記。「使用言語は、英語を基本とする」としながらも、「施設特性や地域特性」によっては「必要とされる言語」での表記を推奨していたり、「専ら地域住民の用に供されている施設等については、日本語表記のみ」とされていたりするのだ。
 
ここにはターゲッティングの発想がある。行政は一律横並びの対応をうながすイメージが強いが、今回のガイドラインではターゲット次第で表記を変えることを認めているのだ。不要な表記がどこかしこにあっても目障りなだけ。この融通は素晴らしい。
 


「うちはポルトガル語!」が差別化になる?


とは言え、実際にはどこの施設も日本語、英語、中国語(簡体字)、韓国語の4か国語表記になるだろう。資料本編にある「対訳語一覧」がこの構成だからだ。ターゲットを絞るのはひとつの決断。これができなければ、一番無難なところに落ち着かざるを得ない。そうしておけば苦情もこないし、苦情がきたとしても言い訳がしやすい。ターゲットを絞って表示言語を限定することのインセンティブが弱い限り、横並びになってしまうだろう。
 
見方を換えればここにチャンスがある。あまり有名でない観光地が、他と横並びで英語、中国語、韓国語に対応しても勝ち目はない。それなら、「うちはポルトガル語!」、「フランス語ならおまかせください」などとした方が観光客を呼び込める可能性があると思うのだ。観光地ごとに得意言語があれば差別化になるし、何より楽しい。全国一律で4か国語表示に邁進するよりも実りがあるように思うのだが、いかがだろうか。

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